コロナ禍の収入減などによって、住宅ローンの返済に困っている人がいるかもしれないが、条件に応じてさまざまな対処法がある。それを知っていれば、最悪の事態は回避できる。今は問題がない人でも、対策を知っていれば万一の備えになる。さて、その方法とは。

コロナ禍で収入が減る、失業する人が増加

コロナ禍で、収入が減ったり失業したりする人が増えている。

2020年6月の月間現金給与額は44万3,111円で、前年同月比で2.0%ダウンした。これで4月から3ヵ月連続のマイナスとなった(厚生労働省の『毎月勤労統計調査 令和2年6月分結果確報』より)。

総務省統計局の労働力調査によると、2020年7月の完全失業率は2.9%。失業者数は197万人と6月に比べて41万人増えており、6ヵ月連続で増加している。

住宅ローンの返済がある人にとっては厳しい状況だが、ローン返済を延滞してしまうと大変な事態になってしまうので、延滞が発生する前に対策をとっておくことが重要だ。

住宅ローン返済を延滞し続けるとマイホームを失うことに

住宅ローンの返済を延滞した場合、最初は金融機関からのハガキによる督促がくる程度だが、やがて電話で督促されるようになる。3~4ヵ月延滞すると、金融機関は保証会社に一括返済を求め、保証会社が代位弁済をする。代位弁済をすると債権者は金融機関ではなく、保証会社になるため、取り立てが厳しくなるのだ。

売却によってローン残高を一括返済する任意売却を求められ、任意売却ができないと競売にかけられてしまう。そうなると、マイホームを失ううえに、残ったローンの返済を求められるという最悪の事態に陥ってしまう。

住宅ローンの4つの見直し方法

最悪の事態になる前に対策を打てば、何とか返済を継続できるので、家を失うことはなくなる。延滞が発生してからでは遅いので、とにかく延滞が発生する前に住宅ローンの見直しを実行することが肝心だ。

1.超低金利を活かして今より低い金利のローンに借り換える

住宅ローンは、他の金融機関の住宅ローンに借り換えることができる。借り換えによって、現在よりも金利が低いローンを利用できれば、返済負担が軽くなる。

住宅金融支援機構の調査によると、全期間固定型または固定期間選択型から変動金利型への借り換えによって、適用金利が1.0%超低くなった人が25.3%いた。住宅ローンの月々の返済額が1万円超減ったとする人も20.8%存在する。

2.少しでも資金があるなら一部繰上返済で返済額を軽減

手元に少しでも眠っているお金があるなら、一部繰上返済で返済額を減らす方法もある。例えば借入額3,000万円、金利2.0%、35年返済で、3年経過後に200万円を返済額軽減型で繰上返済すると、毎月の返済額を9万9,378円から9万2,309円に減らすことができる。

3.条件変更で返済期間を最長にして毎月返済額を減らす

住宅ローンは、定められた最長返済期間より短い返済期間で借り入れている場合、条件変更の手続きよって返済期間を延ばすことができる。例えば借入額3,000万円、金利2.0%、返済期間20年の場合、毎月の返済額は13万7,968円、35年返済なら8万4,685円だ。返済期間を延ばせば、月々の返済額を大幅に軽減できる。

4.金融機関に相談して返済期間延長などの軽減策を適用

上記の3つの方法が難しい場合は、住宅ローンを借り入れている金融機関に相談してみよう。コロナ禍で返済が厳しくなっている人が多いため、金融庁は金融機関に対して、利用者からの相談に柔軟に対応するよう指導している。住宅ローンの返済期間の延長などによって、返済額の軽減を図ることに対応してもらえる可能性があるのだ。

住宅ローン延滞の前に対策をとれば難局を乗り切れる

いずれにしても、住宅ローンの返済が厳しくなったときは、必ず延滞する前に対処しよう。一度でも延滞すると、優遇金利が適用されなくなって金利が引き上げられ、返済額が増える可能性があるし、金融機関の担当者の心証も悪くなるだろう。事情を正直に話し、真摯な姿勢で相談することが、救済策適用への道を開くことになる。

 

山下和之
執筆・山下和之
住宅ジャーナリスト。1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)などの著書がある。
住宅ジャーナリスト。1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)などの著書がある。

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