新型コロナウイルスの影響により、外食業界は大きな打撃を受けている。政府が2月16日に不要不急の外出を控えるよう呼びかけてから早一か月。いまだ収束の目途が立たない現状に、多くの飲食店が不安を抱えている。

今、外食業界で何が起きているのか? 飲食店は何を思い、いかに戦っているのか? 弊社では現状を知るべく飲食店経営者415名にアンケート調査を実施。飲食店の生の声を聞きながら、厳しい状況を乗り切るための方法を探っていきたい。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:415名
調査期間:2020年3月16日~3月18日
調査方法:インターネット調査
※詳しい調査結果はこちら

飲食店の6割が「前年同月より売上減」

まずは売上への影響について。今年2月と昨年2月の売上を比較してもらった。「前年同月より売上が減った」と回答したのは合計で60.0%。2月は新型コロナウイルスの影響が出始めた時期であり、学校の臨時休校や宴会自粛の動きが広まった3月はさらに状況が悪化していることが予想される。
 

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飲食店の6割が前年同月より売上が減っている(画像=Foodist Mediaより引用)

新型コロナウイルスによる影響のうち、飲食店にとって何より痛いのが売上への影響だろう。実際の飲食店の声をいくつか紹介したい。

「宴会需要が戻らないと、売上減少が止まらない」(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー)
「売上の大幅な減少により固定費及び消費税などの支払いが不能に。お店の継続可否に迫られている」(愛知県/カフェ)
「売上が減少する中、必ず掛かる固定費の支払いが痛い」(東京都/居酒屋・ダイニングバー)
「2月はまだ売上が良かったが、3月は50%下がった。今後も見通しが立たない」(東京都/イタリア料理)
「3月に入り売上が相当減少した。資金繰りに支障があるためセーフティネット貸付を実行予定だが、収束時期が不明なため不安である」(東京都/居酒屋・ダイニングバー)

飲食店は日々の売上金が経営を支えているため、実入りが減れば、その分キャッシュフローに狂いが生じる。運転資金に不安がある場合は、国や地方自治体が行っている融資制度の活用を検討してみるといいだろう。

現在、政府・与党は国民一人あたりに1万2000円以上の現金を支給する緊急経済対策を検討中だ。確実な消費をうながすために「現金ではなく商品券を」という声もあがっているようだが、いずれにしてもこうした経済対策が一刻も早く飲食店の景気に反映されることを願うばかりだ。
 

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA(画像=Foodist Mediaより引用)

先行きの見えない状況に不安「いつ収束するのか?」

続いて聞いたのは、新型コロナウイルスによる影響の中で「何に対して不安を感じているか」という点。最も回答が多かったのはやはり「売上の減少」で85.3%。次いで「先行きが見えないこと」が72.5%と続いた。実際の声を紹介しよう。

「政府の支援策についてわかれば今後の対策を計画できるのですが、何もわからず手探りなのが不安です」(東京都/カフェ)
「収束が見えないため、先行きの目標が立てられないのと、マスク不足などで感染防止や衛生管理にも支障が生じており、色んな問題が山積しております」(東京都/その他)
「宴会などの自粛ムードの先行きや、社会全体の経済動向と風評の先読みが難しい」(神奈川県/お弁当・惣菜・デリ)

3月11日に世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を宣言。世界の感染者数は3月16日の時点で16万人を超えた。感染が拡大しているフランスでは全飲食店が休業になるなど、外食産業に大きな影響を与えている。

日本では感染者数の爆発的な増加こそ見られないものの、収束の目途が立たない状況が続いている。フランスのような事態に陥ることはないものと信じたいが、その不安を拭うためにも一刻も早く収束の見通しがほしいところだ。
 

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先行きが見えないことに不安を感じている飲食店が多い(画像=Foodist Mediaより引用)

多くの飲食店に売上の減少などの影響が出ているが、そうなると重くのしかかるのが家賃などの固定費の支払いだ。今回の調査でも固定費の支払いについて47%が「不安である」と回答している。

「いつまで売上の低迷が続くのか……。固定費の支払いができなかったからどうしようという不安がある」(東京都/和食)
「オープンして2年弱で少しずつお客様が増えてきた矢先で、3月に入ってから急激に客足が遠のいている。売掛け、固定費の支払いが非常に厳しいので生活費が赤字になっています」(京都府/鉄板焼き・お好み焼)
「お客様の安全を考慮すると、客数をセーブしながら営業する必要がある。それでも固定費は変わらず毎月かかってくるし、家賃に対する消費税すら痛い」(東京都/フランス料理)

家賃については物件オーナーに減額の交渉をするなどの方法もあるが、上手くいくとは限らない。固定費ではないが、店舗の運営費として最も掛かるものといえば人件費と食材費だ。特に人件費の調整は多くの飲食店が実施しており一定の効果を得られているようだ。

「アルバイトのシフト調整を行っています。また、営業時間を短縮し、深夜帯の人件費抑制を試みています」(東京都/居酒屋・ダイニングバー)
「ディナータイムの営業時間を平日のみ30分短縮。アルバイトのシフトを減らすことで人件費の削減に成功しました。また、仕入れ業者と調整し、仕入れ価格も下げることができました」 (愛知県/和食)
「アルバイトスタッフに早く帰ってもらったり、社員でまかなえるところは社員がやるようにして、人件費を極力抑えています」(大阪府/カフェ)

お客様に「安心・安全」を提供するために

新型コロナウイルスの対策の中で特に大切だといえるのが衛生管理だ。実際にどのような対策を行っているのか聞いたところ、「従業員の手洗い・うがいの徹底」が最も多く83.1%。次いで「店内清掃・消毒の徹底」が68.9%、「調理器具や食器の消毒」が49.6%という結果になった。
 

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お客様を安全に迎えるためにも衛生管理はしっかりと行いたい(画像=Foodist Mediaより引用)

飲食店は普段から衛生管理に気を配っている業種であるとはいえ、お客様を安全に迎え入れるためにも、店内清掃や従業員の健康管理は徹底する必要がある。日本フードサービス協会のホームページに「新型コロナウイルス感染症対策」(PDF資料)が掲載されているので、店舗管理者はチェックしておくといいだろう。

売上確保には「テイクアウト・デリバリー」が有効

さて、ここからは飲食店が新型コロナウイルスにどのように立ち向かっているのか、各店の取り組みを詳しく取り上げていきたい。まずは「売上」と「利益」を確保するための対策について聞いた。

最も多かった回答は「ホームページ・SNSでの情報発信の強化」で37.6%。費用を掛けずに行える点、そして来店の見込みが高い常連客へ情報を届けられることが大きな魅力なのだろう。

「毎日何回もSNSで情報を流していたら、少しお客が増えた」(千葉県/お弁当・惣菜・デリ)
「SNSでマスク着用や消毒液の利用について発信。安心安全な運営を心掛けていることを伝えている」(大阪府/カフェ)
「SNSで常連さんとより強固な関係を築きつつ、新規顧客の開拓も行っています」(千葉県/ラーメン)
 

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利益を確保するに、「人件費」「食材費」の調整を行う飲食店が多い(画像=Foodist Mediaより引用)

そのほか気になる回答として、「テイクアウト販売の強化」が20%、「デリバリー販売の強化」が13.5%という結果が得られた。決して高い数字ではないものの、この2つの施策については実際に効果を得られたという声も多かった。「巣ごもり消費」の需要が高まっているのが理由だろう。

「SNSでの告知により、テイクアウトのご注文が増えました」(大阪府/カフェ)
「テイクアウトに対して割引キャンペーンを実施し、集客した。一定の成果は上がっている」(愛知県/寿司)
「テイクアウト販売を実施している地域へポスティングを実施。テイクアウトの売上が増えた」(東京都/和食)
「現状、大きく売上が落ちているわけではないのですが、ウォークインはやはり落ちています。ただ、以前より行っているデリバリーに力を注ぎ、その分を補っています」(東京都/アジア料理)

最近は、飲食店の苦しい状況を救うべく、様々な企業が支援に乗り出している。たとえばGigi株式会社が運営するスマートフォンアプリ「ごちめし」では、ユーザーが食事代を先払いし、コロナウイルスの収束後にお店へ訪れる「さきめし」という取り組みを実施。

また、福岡市ではスキマバイトアプリ「タイミー」と地元情報誌「ナッセ」、さらにシェアサイクルサービス「メルチャリ」の3社が協力して、飲食店のデリバリー・テイクアウトを支援。すでに多くの飲食店が参加し、売上の確保に取り組んでいる。集客対策を行ってもなかなか効果が得られない店舗は、こうした取り組みを積極的に活用するのもいいだろう。
 

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA(画像=Foodist Mediaより引用)

「いつも通りの営業」が安心感を生む

飲食店にとって「売上」を確保することが第一ではあるが、苦しい状況の中、いつもと変わらず前向きに営業することが大切だという店舗もある。

「特別なサービスはしていません。いつものように、楽しく飲んでもらえるようにしています」(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー)
「いつも通りにお客様をお迎えすることが何よりのサービス」(東京都/フランス料理)
「いつも通りの店でいること、いつも変わらないことが、ある意味非日常の演出になる」(大阪府/カフェ)
「新型コロナを気にしていることをあまり表には出さず、いつも通りの雰囲気を出すことに重要性を感じています。お客様の安心できる場所であるためには必要ではないかと思います」(東京都/和食)

ちなみに、新型コロナウイルスによる影響の中で大きな話題となったのが学校の臨時休校だ。『吉野家』や『餃子の王将』といった大手チェーンが子どもの食事をサポートする取り組みを行っているが、今回のアンケートでは個人店もそうした活動を行っていることがわかった。

「臨時休校中の子どもの暇つぶしになるようなことを提案。スポンジケーキを販売、また必要な道具を貸し出すことで、デコレーションケーキを作ってもらっている」(三重県/その他)
「キッズランチボックスを500円で販売しようと思っています」(大阪府/カフェ)
「子どもに唐揚げを1個サービスしたり、子どもが使いやすいような店内に工夫している」(千葉県/お弁当・惣菜・デリ)
「休校中の中高生向けのお弁当を受注販売。数字の読める売上(利幅は薄い)として助かっています」(東京都/カフェ)
 

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA(画像=Foodist Mediaより引用)

また、実際に客足は減ってしまってはいるが、その分、いつもよりサービスを充実させることで次に繋げようとしている店舗もいくつか見られた。

「一人ひとりに対して接する時間が長く持てるようになったので、接客の中で積極的に会話を増やし、お客様の満足度を上げている。リピーターに繋げられれば」(東京都/イタリア料理)

「せっかく来て頂いた方たちには、思いっきり楽しんでもらえるようなサービス、おもてなしをしている。このような状況でも来店していただけたのだから、お値段以上の満足度を与えられるようにしている。そうすることで、ちゃんとリピートして下さる」(東京都/居酒屋・ダイニングバー)
 

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA(画像=Foodist Mediaより引用)

厳しい状況を戦う同業者へ「明けない夜はない」

新型コロナウイルスが外食産業に与える影響は、リーマンショックや東日本大震災を超える可能性があるともいわれている。飲食店は先行きが見えない中で苦しい戦いを強いられているが、その戦いは決して孤独ではない。最後に今回のアンケート調査で各店に聞いた「同業者へのメッセージ」を紹介したい。

「今までと同じことをし続けるのではなく、これを機会に視野を広げて楽しむチャンスだととらえています。この2020年(昨年の台風などの災害の後)という1年を過ごす中で、多くの人が価値観や生き方を変えていると感じています。そうした変われる、変えられるチャンスにうまく乗っていける方法を考えていきたいと思っています」(東京都/カフェ)

「踏ん張りどころ! GWまで凌ぎましょう!」(大阪府/カフェ)

「立地などの問題でどうしようもないお店もあるとは思いますが、頭をひねって考えて、できることはすべてやって、少しでも多くのお客様にお越しいただけるように頑張っていきましょう!」(大阪府/カフェ)

「明けない夜はない。がんばりましょう」(東京都/その他)

「我慢の時期です。苦しいのはみんな一緒。政府の対策などもそのうち出てくると思います。頑張りましょう。明けない夜はないです」(東京都/その他)

「今を耐えることが大事です。みんな同じ環境です。決して悲観せずに乗り切りましょう」(千葉県/イタリア料理)

「こう言う時だからできることもあると思うので、悲観的にならずに時間ができたという風にとらえて、自店舗をもう一度客観的に見て、直す必要のある所は直していきましょう」(大阪府/居酒屋・ダイニングバー)
 

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA(画像=Foodist Mediaより引用)

「苦しい時期ですが、のちに『コロナがあったから今がある』といえるよう、今しかできないことに取り組み、頑張って乗り越えましょう」(愛知県/寿司)

「事態の収束後に反動となるような好景気が来ることを信じて日々地道に頑張りましょう」(東京都/イタリア料理)

「リーマンショック、震災と、乗り越えてこられたので大丈夫なはず。お客様を大切に、頑張りましょう」(東京都/フランス料理)

「守るより攻めろ」(神奈川県/居酒屋・ダイニングバー)

「我々の笑顔はいつの日か必ず戻って来ます。日本全国の飲食店、経営者の皆さん頑張ろうよ!」(東京都/アジア料理)

「私たちはお金をいただいて楽しみを提供しています。私たちが辛そうにしているとお客様はさらに辛くなるので、たくさん笑えるお店を作りましょう!」(東京都/居酒屋・ダイニングバー)

「まさに創意工夫の力が試される時期。こんなときこそ深呼吸して、面白い展開を作り出したいですね。お客様にも明るい気持ちになってもらえるよう、健康的で元気な接客を心がけて、お互い頑張りましょう」(京都府/居酒屋・ダイニングバー)

飲食店は人を笑顔にする力を持っている。日本全体に重い空気が漂う今こそ、その力を発揮すべきときだ。飲食店にとって厳しい状況には違いないが、少しでも街が明るくなるよう毎日の営業に力を注ぎたいものだ。

文・『Foodist Media』編集部/提供元・Foodist Media

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