仕事が速い人は「段取り」を重視する

1日の時間ボックスの中に、それぞれの仕事の時間を分けて当て込んでいく。このとき、一つの仕事に対して、30~50%程度のバッファを設けておく。バッファの時間が余るようであれば、次の日の仕事をやっておくと、次の日以降に余裕が生まれる。時間があるときにこの時間ボックスを1週間分、1カ月分と作っておく。実際の作業時間とボックスに差が出たり、急な仕事が入ったりした場合はその都度、修正を。面倒に感じるかもしれないが、これを作成したほうが仕事のスピードは速くなる。(水野氏)

取材・構成 長谷川 敦

複数の仕事を淡々とストレスなく進めるコツ

私はデザインの世界で、クリエイティブディレクターとして、同時に何十件ものプロジェクトを並行させながら日々仕事を進めています。しかし、仕事でストレスを感じることはまったくありません。それは、きちんと段取りをしたうえで仕事に取り組んでいるから。

では段取りとは何か。それは仕事をできる限り「ルーティン化」することです。

私たちはルーティン化できている物事については、効率良く進めていくことができます。例えば、お風呂で身体を洗うときがそうです。

まず頭を洗って次に顔を洗い、さらに上半身、下半身を洗っていくというように、誰もが無意識のうちに自分なりの順番を決めていて、毎回それを守っていると思います。

また私は毎日着るシャツは、白色のシャツと決めています。これも私にとってはルーティンの一つです。

もしこれがルーティン化できていなければ、「今日はどこから洗おうか」「今日は何を着ようか」と悩むことになり、ムダに時間がかかってしまいます。

仕事も同じです。自分の仕事をルーティン化して、それに沿ってやるべきことを淡々とこなしていけば、仕事はどんどん進んでいきます。

こんな話をすると、「自分の仕事は案件ごとにやるべきことが違うから、ルーティン化なんてとてもできない」と思う人もいるかもしれません。でもそんなことはありません。「デザイン」という最もルーティン化するのが難しそうな世界で働いている私がそう断言するのですから、間違いありません。

自分の仕事の工程を流れにしてとらえてみる

私の事務所でいえば、いつも以下のような工程で仕事をルーティン化しています。

①調べる→②手描きのラフを描く→③「叩き台」となるラフをパソコンで描く→④見本を出す→⑤最終見本(修正版)を出す。

私は文房具のデザインをすることもあれば、鉄道会社のブランディングやロゴ作りに関わることもあります。仕事の内容は変わっても、取り組む工程はまったく同じです。

皆さんの仕事も同じはず。例えば提案書を作る場合であれば、それが社内向けの業務改善の提案書であったとしても、顧客向けの商品やサービスの提案書であっても、だいたい以下のような流れになると思います。

①調べる→②方向性を決める→③企画書の流れを決める→④文字にする→⑤図を加える→⑤完成。

この流れを無視して、いきなり「文字にする」ことから始めてしまったら、書いている途中に方向性が違うことに気づき、また最初から書き直すというように、ムダな作業時間が発生する可能性大です。

ですから皆さんも、まずは自分がいつもどんな工程で仕事をしているか、またはどんな工程で仕事をすれば最も効率的かを考え、ルーティン化することから始めてみてください。

もちろん転職したばかりとか、新しい部署に異動してきたばかりという場合、いきなりその仕事の工程を把握するのは難しいでしょう。

でも早ければ1カ月、遅くても3カ月も働いていれば、ルーティン化は十分に可能だと思います。

一つひとつの仕事に締め切りを決めよう

ルーティン化ができたら、次は「プロジェクトAの調べもの・180分」「プロジェクトBの手描きのラフ作り・60分」というように、それぞれの作業にかける時間を見積もっていきます。 

そしてその作業をどの日にいつやるのか、学校の時間割のように、時間ボックスの中にはめ込むのです。

これを行なうときに大前提となるのは、そのプロジェクトの締め切りを意識することです。「プロジェクトAの仕事は、全部で20時間ぐらいかけたいが、それでは締め切りに間に合わない」という場合は、それぞれの作業時間を短縮する必要があります。そして締め切りから逆算して、それぞれの作業をいつまでに仕上げなくてはいけないかを考えながら、時間ボックスの中に当てはめていきます。

また万が一、それぞれの作業が見積もった時間内に終わらなかった場合に備えて、バッファも必ず設けておきます。だいたい60分の作業であれば15分~30分程度、つまり時間に対して30~50%程度のバッファを取っておけば十分でしょう。

ただしバッファはあくまでも、緊急事態に備えて取っておくもの。段取り力が低い人ほど、バッファの時間もフルに使い切って仕事をしようとします。

でもこれでは本当に緊急事態が起きたときに、対応できなくなります。作業時間を60分と見積もったら、60分で終わらせるべく全力で努力します。余ったバッファの時間は、休憩をしてコーヒーを飲む時間に充てるぐらいの気持ちのほうが良いでしょう。

私は多くの人がだらだらと仕事を続けてしまいがちなのは、そもそも時間を意識して仕事をしていないからだと思います。 

例えば、クライアントとの会議が2時間しか持てなくて、その時間内にある重大な決断を下さないとプロジェクトが破綻するという場合、何がなんでも決断しますよね。これは「2時間で決めないとヤバい」と、時間を意識しているから。つまり時間を意識すれば、多くのことは時間内にできてしまうのです。

そのプロジェクト全体の締め切りだけではなく、一つひとつの作業に対しても、「これは30分で終わらせる」「60分で結論を出す」というように、締め切りの意識を持って臨むようにしてください。

スケジュールは3時間ごとに見直す

さて、「それぞれの作業を時間ボックスの中にはめ込み、バッファの時間も設けておけば、あとはその通りに実行していくだけ」かといえば、そんなことはありません。

仕事の状況は刻々と変わっていきます。クライアントから突然連絡があり、数日前に納品した制作物の修正を指示されたとしたら、予定を組み替えて対応しなくてはいけません。私は自分の事務所のスタッフには、「スケジュールは3時間ごとか、あるいは一つの作業が一段落したごとに見直すようにしたほうがいい」と話しています。

避けたいのは、突発的な作業が発生したときに、その作業をいつやるかを決めないまま、放って置いてしまうことです。他の作業のスケジュールにも影響を与えてしまいますし、その突発的な作業のことが頭にちらつき、今目の前にある作業に集中できなくなってしまいます。

一方で突発的な事態の発生を、できるだけ減らす工夫も大切。例えばスケジュールが狂う大きな要因の一つに、「上司から突然頼みごとをされる」というのがあります。でもこれはスケジューラーなどで、上司と部下がスケジュールを共有することで、回避することが十分に可能です。

部下のスケジュールを見て、「今日は忙しそうだな」と思ったら、さすがに上司は突然仕事を振ったりはしないでしょう。 

逆に部下も上司に相談したいことがあるときには、上司のスケジュールを見ることで、上司の余裕がありそうな時間を確認することができます。お互いのスケジュールを公開し合うことは、仕事を円滑に進めていくうえで、非常にお勧めです。

まとめ【仕事をルーティン化する】

調べる→②企画の方向性を決める→③企画書の流れを決める→④文字にする→⑤図を加える→⑥完成

各工程にかける時間はまちまちで良いが、飛ばすことなく必ずルーティンとして、すべての工程を経るようにする。時間がないからといって、いきなり、④文字にする、から始めたりすると、②での方向性の決定があいまいであったため、完成の精度が悪く、やり直しが発生する可能性がある。

『THE21』2019年12月号より

水野学(みずの・まなぶ)
good design company 代表取締役
11972年、東京生まれ。98年、多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、98年にgood design company設立。ゼロからのブランド作りをはじめ、ロゴ制作、商品企画、パッケージデザイン、インテリアデザイン、コンサルティングまでをトータルに手がける。主な仕事に、NTTドコモ「iD」、相鉄「ブランドアッププロジェクト」、熊本県キャラクター「くまモン」、「中川政七商店」がある。著書に『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』(ダイヤモンド社)など。(『THE21オンライン』2020年01月02日 公開)

提供元・THE21オンライン

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