目の前の議題について、とにかく議論すればいいわけではない

ロジカルシンキングや情報活用術、仮説思考などについて指導や執筆活動を行なっている生方正也氏は、仕事の生産性を高めるためには、行動に移す前に思考を整理することが重要だと指摘する。ここでは、会議や打ち合わせをする際に行なうべき思考整理について聞いた。

※本稿は、生方正也著『結果を出す人がやっている「思考整理」の習慣』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

まずは「議論のゴール」を決める

お客様と商談するとき、どんな風に始めますか? また、会議である議題を取り上げたとき、どのように進めますか? ここでぜひやっておきたいのが、「議論のゴール」をすり合わせすることです。お客様と商談するときには、どこまでの合意をとるかをまずは話し合いましょう。会議でも同様です。一つひとつの議題について、どこまで話し合うのかを決めておきます。

議論をしていて困るのが、「今その話をされても……」となってしまうときです。

「上司の承認を得なければならないことなのに、今決めてくださいと言われても……」とか、「まだ細かい仕様が決まっていないのに、価格や支払い条件を決めましょうと言われても……」というようなシーンはよくあると思います。

このようなときに話を続けても、想像の域を超えない話し合いにしかなりません。下手をしたら、ろくに確認もせずに決めてしまって、後でもう一度やり直しになるなど、大変なことになってしまう場合すらあります。

こうならないためにも、最初に議論すべきポイントを決めておくことが大切なのです。商談も、一度に契約取り付けまで進もうとするのではなく、まずはお客様の課題に対してどのような対応策があるのかを明らかにすることまで進める、などと決めておくのです。

議論全体の流れを押さえる

そのために必要なのが、議論をする前の準備です。まず、議論全体の流れを押さえておきます。商談でも、大きな流れとして「お互いのことを知る」「課題を特定する」「課題解決の提案をまとめる」「正式に提案する」「調整する」などの段階があります。

商談でどこまで話を進めるか、大きな流れがわかっていれば、自ずとその日の進行は見えてきます。こう考えると、初回の商談でいきなり「御社の課題への対応について提案させてください」と発言するのは、議論すべきポイントから大きくずれていることがわかります。

結論に至るまでの制約は何か?

もう一つ、議論を進めるために大切なのは、「結論を出すための制約は何か」を調べておくことです。先ほどの例でも挙げたように、結論を出そうとしても別の人の意思決定が必要な場合があったりします。こうしたことはあらかじめ調べておいたうえで、会議や商談に臨みましょう。

面倒かもしれませんが、こうした一手間をかけるだけで、実のある議論になるかどうかが決まってきます。以前にも触れたように、会議や議論は参加者分の時間が費やされるものです。それを無駄にしないような準備はお忘れなく。

生方正也(うぶかた・まさや)
HRデザインスタジオ代表
1968年、埼玉県生まれ。東京大学文学部卒業。日産自動車〔株〕にて、取引先部品メーカーの経営分析・指導を担当。〔株〕ウィリアム・エム・マーサー(現・マーサージャパン〔株〕)にて、人事制度改革、組織変革などのコンサルティングに従事したのち、グロービスを経て独立。現在は、人材開発、組織変革に関するコンサルティングに携わると同時に、ロジカルシンキング、情報活用術、仮説思考などの分野の指導、著作活動を行なっている。著書に『アウトプットの精度を爆発的に高める「思考の整理」全技術』(かんき出版)、『アウトプットの質を高める 仮説検証力』(すばる舎)、『ビジネススクールで身につける仮説思考と分析力』(日本経済新聞出版社)、『シナリオ構想力 実践講座』(ファーストプレス)、『結果を出す人がやっている「思考整理」の習慣』(日本実業出版社)など多数。(『THE21オンライン』2019年12月12日 公開)

提供元・THE21オンライン

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