不採算店舗の閉店が相次ぐ持ち帰り弁当店大手の「ほっともっと」の運営企業がピンチだ。最新決算で9億円以上の赤字を計上し、生き残り戦略の実施が急務となっている。なぜ巨額の赤字を計上することになったのか。ほっともっとは、生き残ることができるのだろうか。

プレナス社の最新決算の概要 9億4,900万円の赤字

「ほっともっと」を運営するプレナス社が1月に発表した2020年2月期第3四半期の決算資料を見てみよう。

2019年3~11月の連結業績で、売上高は前年同期比2.4%減の1,127億8,600万円。営業利益は前年同期の1億4,700万円のマイナスから1億6,700万円のプラスに転じ、経常利益も前年同期比27.4%増の6億1,500万円と好調だ。しかし、純利益は前年同期の赤字額4億1,600万円がさらに拡大し、9億4,900万円まで膨らんだ。

ちなみに今回の決算発表における2020年2月期通期の業績予測は据え置いており、最終的に8億3,000万円の赤字となる見通しだ。2018年2月期までは黒字を計上してきたプレナス社だが、なぜこのような厳しい状況に陥ってしまったのだろうか。

多額の減損費用が赤字拡大の原因

純利益が赤字になった理由は、不採算店舗を閉店したことで多額の減損費用を計上したことだ。

2019年2月期の年度末における「ほっともっと」の店舗数は全国で2,748店舗だったが、2020年3月期第3四半期の末には2,532店舗まで減った。新規出店が7店舗、閉店は223店舗だった。

多額の減損費用を計上したことで純利益が大幅に赤字になったわけだが、視点を変えれば不採算店舗の閉鎖によってグループ全体の収益力を高まり、今がV字回復へのスタートラインという見方もできる。

V字回復を実現するためには、言うまでもなく看板事業であるほっともっと事業の収益性を高めなければならない。そのためには、何が必要なのだろうか。まずは、ほっともっとを取り巻く環境を見てみよう。  

ほっともっとを苦しめているもの――原材料価格の高騰と人手不足

現在弁当業界が苦しんでいるのが、原材料価格や物流費の高騰、慢性的な人手不足だ。この状況の中で収益性を高めるには、主力商品の魅力を高めて付加価値を上げることや、無駄なコストを削減していくことが欠かせない。

ほっともっと事業における付加価値向上の取り組みの1つが、ボリュームアップ施策だ。特に「海鮮えび天丼」は、海の幸と野菜の天ぷらを贅沢に使ったメニューで、ファン層を拡大するのに一役買った。

コスト削減としては、「商材の内製化」に取り組んでいる。一般的に内製化を進める際は、当初設備投資などがかさむが、軌道に乗ればコストを安定的に軽減することにつながる。これらの取り組みに加えて、フランチャイズ化も進めるという。

このような収益力アップに向けた取り組みのほか、多店舗展開から「少数精鋭路線」に舵を切ったことを考えると、1店舗当たりの売上拡大も求められるだろう。プロモーション戦略も極めて重要であり、費用対効果の高いPR施策を打てるかどうかも、V字回復実現のカギになる。

新業態「ほっともっとグリル」は復活を後押しする?

同社の新業態「ほっともっとグリル」にも注目したい。これまでの低価格志向を継承せず、高級志向・健康志向のメニューを展開しており、消費者の健康志向が高まる中で新たな顧客層の獲得につなげている。実際、「美味しい」と評判のメニューも多い。

相次ぐ店舗の閉鎖による減損費用の計上により、決算の数値としては今が一番苦しい時だろう。しかし、このピンチをチャンスととらえて経営改革を推し進められれば、高い知名度をテコにした復活は十分にあり得る。次回の四半期決算に注目したい。
 

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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