プレイヤーとして優秀だった人ほど要注意!

今、この瞬間に部下に伝えておきたい。忘れてしまいそうだし、明日には別の仕事があるので、夜のうちにメールを送っておこう──。営業リーダー研修を数多く手がける伊庭正康氏は、「多くの管理職がやりがちなことだが、これは完全にNG。部下の離職やメンタルダウンにもつながりかねない危険な行為だ」という。どういうことなのか──。

※本稿は、伊庭正康『できるリーダーは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

2000年代とは常識が変わった

かつては、夜や休日のうちに部下へメールをしても、何の問題もありませんでした。

でも、今は違います。人事部も容認できない、重大な問題行動になっています。

仕事を任せた部下のことが気になっても、夜や休日にメールをしてはダメなのです。

これも時代の常識が変わったことが大きく影響しています。

1つは時間外労働にあたる、といったコンプライアンスの観点から。

もう1つは、部下が必要以上にプレッシャーを感じてしまう、といったリスクマネジメントの観点から。部下がメンタルダウンしたり、そこまでいかずとも、離職をしてしまったりすると本末転倒です。

離職率がアップする原因にも

「なんて、ひ弱な!」と思われた方もいるかもしれません。

そうじゃないんです。

ビジネスのルールが「厳格」になった、それだけのこと。

ウチの会社はそこまでではない、と思われたとしたら、その考えは危険です。

会社がそうであったとしても、新人の離職率に影響が出る可能性は高いのです。

だって、転職エージェントに行けば、好条件の仕事をいくらでも紹介してもらえる時代です。

「ウチの会社は、大丈夫でしょ…」は、通用しません。

「相手の価値観」に配慮する

とはいえ、努力だけで常識を変えることは、なかなか簡単ではありません。

そこで、こう想像してみてください。

「異国・異文化で育った部下に仕事を任せるとしたら、どうするか」、と。

常識が異なるため、「自分と違って当然」と思うためのリセット術です。

私にも外国人の部下がいましたが、職場がいくら忙しくても、6時になるとピタッと帰りました。

また、大手メーカーに入社したスペイン人の知人(新人)は、有給休暇を取らない理由がまったく理解できないと言います。

友人の会社に勤めるアメリカ人の女性は、「飲み会が家族同伴でないのは困る」と言っていました。

「常識は1つではない」と思えてきませんか?

仕事をドンドン任せていくためにも、この感覚、つまり「自分とは違って当たり前」をスタンダードにしなければなりません。

どうしても夜に送る時は?

さて、話を戻しましょう。

夜のメールも同じ。それを非常識と捉える人もけっこういるのではないか、部下にプレッシャーを与えてしまわないか、といったように想像する力も必要です。

また、部下には夜、休日はゆっくりと過ごしてもらう配慮が不可欠でしょう。

どうしても、今この瞬間に送っておきたいなら、タイマー設定しておけば、翌朝に届きます。

えっ、成長したくないの?

「自分とは違う。そして相手を尊重する」

この感覚を持つことは、できるリーダーになる基本です。

しかし、プレイヤーとして活躍していた人ほど、リーダーになった時、この感覚を持てません。頑張ってきた人ほど、「当たり前」の基準が1つしかないからです。つい「頑張るのが当たり前」「成長するのが当たり前」と考えがちです。

かくいう私もその傾向があったので、苦労しました。

営業だけはなぜかできたものですから、「トップセールスになりたい」と考えるのが普通だと思っていたのです。

「コレができたら、どこでも通用する営業になれるよ」
「トップセールスになるためにも、ビジネス書を読んだほうがいいよ」
「トップになるのは、努力ではなく、〝正しいやり方〟が大事なんだよ」

といったような持論を力説していました。

ある部署にリーダーとして配属された時のことです。 

1人の部下からこう言われました。

「私は、成長とかは、いらないです。ただ、責任は果たします」と。

頭が真っ白になりました。

「えー、もったいないこと言うなよ」

その言葉をネガティブにとってしまった私がひねり出した言葉でした。

「つい、ダメ出しをする」。これが、基準が1つしかない上司がする反応です。

理解できなくても受けとめる

まず、持論を語る前に、相手の価値観に関心を持つ。

そんな当たり前のことを、できるプレイヤーほど見落としがちです。

まず、こう考えてみてください。

自分はこう思う。

でも、きっと、相手は違う。

まず、どんなことを考えているのか聞いてみよう。

理解できなくてもいい。

ただ、受けとめることはできる、と。

先ほどの「成長したくない部下」も、よくよく話を聞くとこういうことでした。

最初に入社した会社がいわゆる"ブラック企業"だったようで、お客様の事情を無視して商品を売りつける、そんな会社だったようなのです。

ほとんどの同期は退職したといいます。

でも、彼は、その会社でも辞めずに頑張ろうと、もがきました。

そして、たどりついたのが、「心を無にして、責任だけを果たす」という方法だったのです。これが、彼のベースとなってしまっていたのです。

私は、この考えに賛成はできませんし、歓迎もしません。

でも、受けとめる。いや、受けとめるしかないのです。

異なる価値観を理解する

その人の価値観は、そうそう変わりません。大事なことは、その背景を知ることです。

こんな時、私が上司としてできることは、2つ。

1つは、彼に、積極的に仕事を任せながら、彼らしく結果を出してもらうこと。

でも、こうも考えます。

彼が上司になった時、この考えでは、やっていけなくなるだろう、と。だから、もう1つは、会話を重ねながら、ほかの視点もあることを少しずつ伝えていくことです。

まず、否定はしない。いかなる価値観も、まずは受けとめる。これが基本。

プレイヤーとして活躍した人ほど、要注意です。

●できるリーダーは、「これ」しかやらない

THE21オンライン
(画像=webサイト/THE21オンライン)

伊庭正康(らしさラボ代表) 発売日: 2019年01月29日
本書では、そんな筆者が、部下のやる気と能力をフルに引き出す「リーダーの正しい頑張り方・任せ方」を、具体的にアドバイス。忙しすぎる管理職を救う1冊です!(『THE21オンライン』2019年02月05日 公開)

提供元・THE21オンライン

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