意外な思考・行動の習慣が調査で明らかに

国税庁の「平成29年分民間給与実態統計調査」によると、2017年の給与所得者の平均給与は年間約432万円。男女別では、男性が約532万円で、女性が約287万円だ。そんな中、1,000万円以上を稼いでいる会社員もいる。彼らは、いったいどんな人たちなのか? ハイクラス人材の転職サービスなどを提供している「iX」統括編集長・清水宏昭氏に聞いた。

1,000万円プレーヤーは、どんな仕事をしているのか?

清水氏によると、会社員のうち給与が1,000万円以上なのは、わずか4%。外資の金融系などでは5,000万円の人もいて、ひと口に1,000万円以上といっても、かなり幅があるそうだ。

「平均年収層の方と比べると、1,000万円以上の方の特徴は、専門性が高いことですね。経営企画やマーケティング企画、商品企画などの『企画職』として専門性が高い方と、金融や法務の専門家、あるいはエンジニアなど、いわゆる『専門職』の中でも専門性が高い方との、2つのタイプがいらっしゃいます。

営業職でも1,000万円以上の給与を得ている方がいますが、そうした方はフルコミッション契約をされている方も多く、人脈を武器にどんな商品でも売れる方ですから、専門職と言っていいでしょう。

専門性は仕事を通して磨かれるので、平均年収層の方も年収1,000万円以上の方も、初任給の時点では、あまり違いはありません。私たちが、平均年収層(年収400万~500万円未満)の方と1,000万円プレーヤー(年収1,000万~1,100万円未満)の方、それぞれ400名、計800名に調査した結果では、平均年収層の初任給(額面)の平均は19万5,936円、1,000万円プレーヤーは20万2,393円でした」

1,000万円プレーヤーは、大企業に勤める役職の高い人ばかりなのかと思いきや、必ずしもそういうわけではないようだ。

「確かに、大企業に勤めている方が4~5割程度を占めていますが、中小企業に勤めている方も2~3割程度います。他は外資系です。

役職についても、係長以上が8割以上を占めるものの、『係長』『課長』『部長』『それ以上』に分けると、ほぼ均等に分布しています」

では、初任給は平均年収層と同程度だった人が、どうやって1,000万円プレーヤーになるのか。やはり転職なのだろうか?

「私たちが1,466名を対象に行なった調査では、年収800万円以上の方のうち転職経験者は36.6%、年収200万~600万円の方では55.8%でした。200万~600万円の方のほうが、転職をしている割合が高かったのです。

ただ、年収が800万円以上の方と200万~600万円の方では、転職の理由に違いがあるのだと思います。

年収200万~600万円の転職経験者には、給与が業務や職場の人間関係などによるストレスに見合わないため、より良い職場環境を求めて、若いうちに転職された方が多い。一方、年収800万円以上の方の場合は、40代くらいになってから、自分の専門性をより活かせる職場、より高く評価してくれる職場へと転職することが多い。極端な例では、マーケティングの専門家が、外資系企業のマーケティング責任者のポジションが空くたびに、その企業に移るということを、何度も繰り返したりします。

転職をせずに年収800万円以上になるのは、ほとんどが大企業に勤めている方ですね。大企業だと、転職をすると年収が下がってしまうケースもあります」

やはり、1,000万円プレーヤーになるポイントは専門性を高めることのようだ。しかし、専門性の高さは、どうすれば測れるのだろうか?

「専門性には、『見える化』しやすいものと、しにくいものがあります。例えばエンジニアなら、これまでに作った具体的なプロダクトを示すことで、専門性を見える化できます。しかし、企画職などでは難しい。これまでに関わったプロジェクトについて説明するしかありません。そのプロジェクトが社外でも広く知られているものであるほど、他社から評価されやすく、転職もしやすくなります」

専門性の高さを示すためには、MBAや資格を取得することも役立つのだろうか?

「MBAは、学歴の一種です。良い大学を卒業して、その学歴を活用してキャリアアップできる方もいれば、できない方もいるように、MBAを活用できる方もいれば、できない方もいます。

ただ、10年程度、実際に仕事をしてからMBA取得のための勉強をすることには、意義があると思います。それまで経験として蓄積してきた知識を棚卸し、理論立てて学び直すことができるからです。また、一緒に学んだ人たちとの人脈を、その後のキャリアに活かす方もいます。

資格についても同様で、資格自体が年収を上げることに役立つかどうかよりも、資格取得のための勉強を通じて、様々な知識を増やすことのほうが大切だと思います。1,000万円プレーヤーの方には、ソムリエの資格を持っていたり、歴史に詳しかったりと、仕事に直結しない知識の引き出しも豊富な方が多い。そうした好奇心旺盛な姿勢が重要なのではないでしょうか」

クレカではなく現金、ゴルフではなくジョギング

ここからは、1,000万円プレーヤーの行動や思考のパターンを見ていこう。まずは、「お金」について。お金持ちといえばクレジットカードでお買い物、というイメージがあるかもしれないが、平均年収層(年収400万~500万円未満)と1,000万円プレーヤー(年収1,000万~1,100万円未満)を対象にしたiXの調査では、そうではないという結果が出た。

「平均年収層の方389名と1,000万円プレーヤーの方394名に調査した結果、現金を持ち歩いていない人は、平均年収層で2.8%なのに対して、1,000万円プレーヤーでは、さらに低い1.4%でした。

1,000万円プレーヤーには、支出をきちんと管理する堅実な方が多いのだと思います。年齢的にお子さんのいる方も多いですし、所得が1,000万円を超えると納税額も上がって、可処分所得はそれほど増えないことを実感されている影響もあるでしょう。

カードを使うにしても、浪費をしてしまいがちなクレジットカードよりも、プリペイドカードを多く使われる印象があります」

次に、「時間」について。1,000万円プレーヤーの大きな特徴は、起床や出社が早いことだ。

「平均年収層400名と1,000万円プレーヤー400名に調査すると、平均年収層の起床時間として多かったのは『6時台 38.1%』『7時台 31.9%』『5時台 10.4%』という順だったのに対し、1,000万円プレーヤーは『6時台 41.0%』『5時台 21.9%』『7時台 20.7%』でした。1,000万円プレーヤーのほうが早いのですが、かといって、就寝時間が早いというわけではありません。1,000万円プレーヤーの約3割は睡眠時間が5時間以下で、ショートスリーパーの傾向があるようです。

出社時間についても、平均年収層が『9時台 32.2%』『8時台 31.9%』『7時台 16.8%』の順なのに対して、1,000万円プレーヤーは『8時台 37.4%』『9時台 31.7%』『7時台 22.2%』と、1,000万円プレーヤーのほうが早いという結果が出ました」

また、同様に「趣味」についても調査をした結果、平均年収層と1,000万円プレーヤーで顕著な差が出たのは「スポーツ・運動をする」という回答だった。

「平均年収層では8.5%でしたが、1,000万円プレーヤーでは20.3%にも上りました。『平日にリフレッシュしたい際に何をしていますか』という質問に対して『散歩・ランニングなど体を動かす』と回答した割合も、平均年収層は13.9%でしたが、1,000万円プレーヤーでは22.9%ありました。

1,000万円プレーヤーには、お金をかけずに長く続けられる運動で、仕事のストレスを解消する習慣を身につけている方が多いのでしょう。運動を続けることは、仕事に必要な体力を養うことにもなります」

お金持ちの運動というと、ゴルフというイメージもあるが……。

「ゴルフは、運動のためというよりも、人脈のためにされる方が多いですね。1日中、同じ相手と行動をともにするので、濃い時間を持つことができますから。同じ目的で、ヨットを楽しまれる方もいます。

1,000万円プレーヤーは、自分の仕事について高い専門性を持ち、業界についてもよく知っていますから、人脈を広げる目的は、他業界の人たちから色々なことを学んで、新しい発想を得ることです。一緒に仕事をした方の紹介で人脈が広がっていくケースが多いようです。

また、役職が高くなればなるほど、自分の仕事について意見をしてくれる人が減っていきますから、転職をするつもりがなくても、定期的にヘッドハンターに会って、仕事やキャリアについて客観的に評価してもらっている方もいます」

1,000万円プレーヤーには人づきあいを大切にする人が多いと、清水氏は実感も交えて話す。

「仕事は一人ではできません。チームに動いてもらわなければならない。冒頭で、1,000万円プレーヤーには『企画職』と『専門職』の2タイプがいるとお話ししましたが、特に企画職はそうです。ですから、リーダーシップやカリスマ性のある方が多い。

具体的には、他人に対する気づかいができる方が多いですね。記憶力もよくて、久しぶりにお会いしても、前にお会いしたときの話がすぐに出てきます。そうしたことが、人がついてくる魅力になっているのだと思います」

清水宏昭(しみず・ひろあき)
パーソルキャリア〔株〕iX統括編集長
1973年、千葉県生まれ。98年、立教大学社会学部観光学科を卒業し、〔株〕オリエンタルランドに入社。東京ディズニーランドのスーパーバイザーを経て、マーケティング部へ異動。東京ディズニーリゾートの事業戦略およびマーケティング戦略の責任者として、企画立案から実行までを統括。在任中に、東京ディズニーシー限定キャラクター「ダッフィー」のブランドマネージャーとして、関連売上げを2倍に引き上げる。2015年、〔株〕インテリジェンス(現・パーソルキャリア〔株〕)入社。転職サービス「DODA」(現・「doda」)のブランド力向上や戦略課題の解決を目的としたリブランディング計画の立案・実行・推進と同時に、広報部の立ち上げにも従事。広報部長として戦略的PRに取り組む。18年より新規事業開発責任者に就任。ハイクラス人材のキャリア戦略プラットフォーム「iX(アイエックス)」を立ち上げる。(『THE21オンライン』2019年08月21日 公開)

提供元・THE21オンライン

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