「複業採用」という言葉をご存知でしょうか?社内の働き方改革に積極的なサイボウズが、同社の仕事を複業(副業)とする人材の募集を開始したことで話題になりました。

企業の「副業解禁」の波が加速する中、本業以外にも活躍の場を求め、複業(副業)としての仕事を探す人の数が増えていくと予想されます。そんな時代のニーズを汲み取り、いち早く複業先としての応募を認める企業の事例が増え始めています。

そこで今回は、様々な可能性を秘めた「複業採用」を取り上げ、募集を開始した企業の狙いと導入する企業が増えることで起こりうる変化について考えていきます。

※本記事は、2017年5月12日に配信された記事を編集し再投稿しています。

副業ではなく“複業”と表記する理由

これまで「フクギョウ」と言えば、本業での収入を補助するために行う「サブ」の意味合いである「副業」を連想することが一般的でした。

しかし、現在では必ずしも収入を補うことを最優先に考えるのではなく、本業では得られない経験や人脈の獲得を重要視する人が増えてきています。

また、それぞれの仕事の位置づけを並列にとらえることからも「複数の仕事」という意味での「複業」の表記が積極的に使われるようになっています。

参考:替えのきかない人材に!副業ではなく“複業”を選ぶ人が増えている…?

複業採用を始めた企業事例

冒頭でもお伝えしたとおり、最近では実際に複業先としての応募を認めている企業が増えてきています。

サイボウズ:「複業採用」

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(画像=Fledge)

「100人いたら100通りの働き方」というキャッチフレーズを掲げるように、多様性を重視する同社では、ワークスタイルや契約形態に関係なく、ビジョンに共感した仲間を増やすことを目的に同社での仕事が複業(副業)となる人材を集める「複業採用」を開始しています。

なお「複業採用」で求める人物像としては、自立して業務を進めることができるスキル経験を持っていることを前提に、「なぜ同社での複業を希望するのか?」という点を重視しているそうです。

また、採用にあたって実際に勤務する曜日や雇用形態に関しては、個別に応募者の希望やスキルに合わせて相談となっています。

LiB:「メンバーシップオプション」

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LiBでは「会社経営やフリーランスとしての活動を続けながら、LiBの事業にも携わりたい」「現職を続けたまま、スタートアップにも挑戦したい」といった声に応える『メンバーシップオプション』制度を導入しています。

この制度では、他の仕事を続けながらも、LiBの「正社員」としてジョインすることが可能な点が特徴で、ストックオプションの配布対象など、他の社員と同じ待遇を受けることができます。

同社では、このように自由な働き方を認めることで、従来の「フルタイム+長時間残業+副業禁止」では採用できない優秀な人材を迎え入れることができるとのことです。

Fledgeでは、以前に同社の『メンバーシップオプション』を実際に利用して働かれている井村圭介さんを取材していますので、そちらも併せてご覧ください!

参考:大事なのは「自分のやりたいことができる環境づくり」週4会社員+週2社長という型破りな働き方

サイバーバズ:「助っ人採用(副業採用)」

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サイバーエージェントの子会社でもあるサイバー・バズでは、『助っ人採用(副業採用)』という名前で個人事業主を含めた他社に在籍中の人を対象とした採用を行っています。

その大きな特徴は「全職種での募集」「就業形態が選択可能」という点。なんとビジネス職やエンジニア職だけでなく、経理や人事といったバックオフィスを含む全職種が対象というから驚きです。自宅からのリモート勤務もOKということで、より多くの人が対象に含まれることになります。

■「副業採用」の背景

近年、政府は少子高齢化による労働力不足を補うために、「働き方改革」として正社員の副業や兼業を後押ししています。そういった流れから、現在副業を容認する企業も増えつつあり、当社においても本年度より社員の副業を事前申請制で許可しております。こういった背景からも今後は副業を検討・選択する労働者が増えることを予想し、「副業採用」をスタートさせました。就業者のキャリア形成の支援だけでなく、当社としても高い経験値をもった人材に「助っ人」として参画いただくことで、 ノウハウ構築や生産性向上に繋げることができると考えております。また、多様な人材が社内で働くことで、新たなカルチャーの醸成やイノベーションといったところも期待しております。サイバー・バズ、「副業採用」開始のお知らせ~全職種を対象に、多様な雇用形態で募集~ より)

ランサーズ株式会社:「タレント社員制度」

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ランサーズは2017年6月1日に、同社で働くことを副業とする「タレント社員制度」を開始しています。「タレント社員制度」は、個人がこれまで培ってきた経験や専門スキル、人脈を可視化し、ランサーズの社員として採用する仕組みとなっています。

なお雇用保険等については、週3日以上勤務するかどうかでランサーズ側が負担するのか、自分の所属する企業(もしくは個人)が負担するのかが決まるとのこと。

また「タレント社員制度」の第一号には、複業研究家として活躍する株式会社HARES代表・西村創一朗さんの名前が挙がっています。

参考:複業を広げるコツは?複業家の西村創一朗さん・正能茉優さんに直撃!

LIFE STYLE:「シンクロキャリア(複業)採用」

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(画像=Fledge)

VR事業を展開するLIFE STYLEでは、「本業を複数持つ」という新しい採用制度『シンクロキャリア(複業)採用』を2017年7月12日(水)より開始しています。

他社あるいは個人事業主など既に仕事を持っている人、そしてLIFE STYLEのビジョン・ミッションに共感する人を対象としています。
 

【追記】コーポレートコミュニケーション部・谷畑様より『シンクロキャリア(複業)採用』に関するコメントを頂戴いたしました!

LIFE STYLEが、みなさんの積み重ねた経験を活かす場所となり、あなたらしいライフスタイルをデザインしてほしい。

より強い影響力を、組織に、社会に、何よりもあなた自身に与えることを願って、私たちは、シンクロキャリア採用を始めました。

新しい 「生き方」や「働き方」のきっかけや手段となりますように。

複業採用の登場によって「個人」に起こる変化

1.「複業OK」の会社に勤める人は選択肢の幅が広がる

もっとも大きな変化がこの点です!すでに複業が認められている会社に勤務している、あるいは将来的に会社で複業が解禁になるという状況を踏まえると、今度は実際に「複業で何をするのか?」がポイントになります。

これまでの場合、空いた時間で記事の執筆やプログラミング、デザイン業務を行うといった、比較的個人で完結するような業務が中心だったのに対し、今後は複業として「他の企業に勤める」ということが現実的な選択肢として視野に入るようになります。

2.転職しなくても「他社」を経験できるチャンスが増える

これまでに転職を経験したことがない人からよく耳にするのが「一度は他の会社で働いてみたい!」という声。これも複業採用を始める企業の数が増えることで、在籍中の会社を離れることなく同時に「他社」にも属するという選択をすることが可能になります。

3.在籍中の企業で働く意義に向き合う機会が増える

複業採用を開始する企業が増えることで、現在の勤務先以外の会社で働く可能性が増えます。それによって、個人・企業の双方に新たな出会いの機会が増える一方で、結果的に他社との比較という観点が入ることにより、それまで以上に在籍中の企業で「働く意義」に向き合う機会も増えることになるはずです。

その結果、より絆が深まるのか、また別の考えが浮かぶのかはケースバイケースですが、一つの側面として認識しておく必要があるでしょう。

複業採用の登場によって「企業」に起こる変化

1.優秀な人を採用するチャンスが増える

複業採用を自社で導入することで、これまで採用の対象外だった現在勤務中の会社を離れる予定のない人材に関しても、例えば「週に何日だけ自社で働いてもらう」というような形で自社に関わってもらうことが可能になります。また、自ら複業を希望しているということは、その人がそれだけ高い意欲を持った人材であるという可能性も高いはずです。

2.社員の多様化が進むことによって既存社員への刺激につながる

革新的なアイディアやサービスを生み出すためには、多様性が不可欠です。その点に関しても、会社として複業が前提の人材を受け入れることができれば、(それ相応の気概や環境面での準備は必要となりますが)新しい価値観、働き方を社内に持ち込むことで、既存社員にとっても大きな刺激となること間違いありません。

3.評価や報酬がより「成果基準」に変わる可能性がある

複業採用の枠で新たに採用となった場合、重要な検討事項の一つとして挙げられるのが「評価」についてです。事実、今回紹介した企業の事例でもすべて評価や報酬の基準が「個別に相談」となっていました。従来の週5フルタイムでの正社員以上に複業採用の人材への評価方法については十分な検討が必要になります。

企業視点で考えると「週○日会社に来てくれるのなら、週5フルタイム正社員の何%分」という考え方ではなく、もたらした「成果」に対して一定の報酬を払うという考え方に近づくのではないかと思われます。そういう意味では、評価の基準に関しては「対フリーランス的な感覚」により近づくことになるのかも知れません。

まとめ

今後、複業採用を導入する企業が増えることで、さらに人材の流動化が進むことが予想されます。また、正社員で働く人向けの「複業求人」を専門に紹介するサービスも登場するでしょう。

そして何よりも「企業」とそこで働く「個人」の関係がどうあるべきなのか?という議論が活発化することが期待されます。それによって、これまでには考えられなかった選択肢や、また新たな可能性が広がっていくことを期待したいですね!

文・たくみこうたろう/提供元・Fledge

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