本場・博多の豚骨ラーメンで1980年代から1990年代にかけて大ヒットし、現在のラーメンブームの先駆けとなった『なんでんかんでん』。2012年11月に閉店してからおよそ6年ぶりとなる2018年9月3日、東京・高円寺でついに復活を果たした。

店の前には連日行列ができ、衰えない人気の高さを証明。タレントとしても活躍する株式会社なんでんかんでんフーズの川原ひろし社長も、陣頭に立って接客にあたっている。再ブームに浮かれることなく、前回以上の成功を目指しているようだ。

『なんでんかんでん』復活に取材50~60本「予想以上の売上」

あたりが少し暗くなってきた午後5時30分、『なんでんかんでん高円寺店』の中で川原社長の「さあ、行こうか!」という声に、従業員から「はいよー」「行きましょう!」と威勢のいい声が上がり、入口の扉が開かれる。店の前に並んでいた客が店内へ。カウンターとテーブル席が次々と埋まっていく。川原社長は外で待つ客に話しかけ、空いている席へと誘導する。ラーメン店に最も必要な活気がある。

「予想通りというより、予想以上の売上、反響です。開店前に東京スポーツが記事にしてくれたのですが、それをきっかけにYahoo!などのニュースサイトのトップに3回出ました。テレビが7本、ラジオが1本、ネットニュース系が18本だったでしょうか。それにスポーツ新聞、雑誌などを含めると50~60本ぐらいの取材がありました。本当にびっくりです」と川原ひろし社長は言う。こうしたメディアへの露出が好調の原因と言えるかもしれないが、オープンからおよそ2週間たっても客足が途切れないのは、確かな味と店の雰囲気が評価されている面もあると思われる。

濃厚な豚骨スープ、名物のプリント入りのノリにチャーシュー、ネギなどの合間から浮かぶ脂に、食欲をそそられる。これに自分で潰したニンニクを入れると香りが一層増す。実際に食べてみると少し固めにした麺の歯ごたえがよく、これにスープが絡まり、絶妙の味わい。1980年代後半から10坪の店で日商100万円をたたき出した味は21世紀の今も健在である。

「32年前から店をやっていて、復活ということで懐かしい人がたくさん来てくれます。昔しょっちゅう来てくれていた人とか、子連れで来てくれていた人が今度は孫を連れて来てくれたりもしています。ありがたいことです」。
 

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味は健在!(画像=Foodist Media)

「スープを4倍に薄めた」騒動の顛末、台本を見てびっくり

川原社長は以前、テレビの深夜番組で『なんでんかんでん』を閉店させたことで、その失敗談を語ったことがある。その時にあまりに売れすぎてスープが不足し、4倍に薄めて出したのがしくじった原因という話をした。ネットを中心にかなり激しく攻撃された部分である。

この点を聞くと川原社長は苦笑まじりに語った。「スープが足りなくなった時に、それでもどうしても食べたいという人がいる時には店を閉めて『お金はいいから』と薄めて出して食べさせたことはあります、とは言いました。それが、あの番組は収録の前日深夜に台本が出来上がるのですが、その台本を見たら『4倍に薄めた』なんてなっているわけです。さすがに4倍ってことはなかったです(笑)」。

こうして世に出てしまった話は一人歩きを始める。復活店舗ではスープが終了したら、ラーメンの提供を行わないことを明記した。店舗が商店街の真ん中にあるため、強い匂いを出すスープ作りはできず、九州の工場で作って毎日直送されており、提供できるラーメンの数は予め決まっている。スープ終了で販売終了を明記することは、流れた悪い風評を打ち消すには効果的な戦略と言えるだろう。スープはすべて川原社長のレシピによって作られており、1980年代のものと同一である。ただし、当時は足りなくなるとラーメンを提供する横でスープを寸胴で作るという作業を繰り返していたために味の安定性を失う時もあったという。しかし今は外部でつくっていることから昔よりも安定して同じ味で提供できるという強みがある。
 

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スープがなくなると、その日の営業は終了(画像=Foodist Media)

川原社長自ら接客、BGMは昭和40年代のこだわり

復活店舗の特徴はまだある。川原社長が接客についてセミナーを行っていたということもあり、その点の重要性は従業員にも徹底している。流れ作業のように料理を出すのではなく、一人一人に話しかけて、心を通じ合わせることを意識。外で行列をつくっている人にも川原社長が時間を見て声をかけ、会話をする。タレント活動をしている社長から声をかけられることは、客にとっても悪い気はしないだろう。

店内の音楽はオールディーズ、それも社長の好みに合わせて昭和40年代(1965年-1974年)が中心。取材に訪れた時にかかっていた音楽は「Daydream Believer」(The Monkees:1967年)、「帰って来たヨッパライ」(ザ・フォーク・クルセダーズ:1967年)、「恋する夏の日」(天地真理:1973年)、「恋のダイヤル6700」(フィンガー5:1973年)といった具合である。「この頃の曲はいい曲が多く、同世代にはたまりません。こういういい曲があることを若い人にも伝えたいから、そのこだわりです」。
 

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心を通じ合わせることを意識した接客も健在だ!(画像=Foodist Media)

復活店舗はフランチャイズ1号店、人づくりに合わせて店舗展開

今回の復活店舗は、フランチャイズ1号店である。『タイ屋台居酒屋ダオタイ』などを運営する株式会社DAO(本社:東京都杉並区、代表取締役:川井将太郎)がフランチャイジーとなって運営。店舗も同社が運営していた居酒屋を改装したものである。川原社長の話によると、『なんでんかんでん』に興味を持っていたDAOサイドから「フランチャイザーとして」という話でアプローチがあったが、まずは株式会社なんでんかんでんフーズがフランチャイザー、DAOがフランチャイジーとしての開店が決まった。

「(DAOサイドは)若い人たちなので、僕が看板みたいになってということです。僕が本部で、展開していく会社としてDAOさんがいてもいいかなと思います。展開と管理会社という感じで」と川原社長は今後の展望を話す。店舗展開については「多いに越したことはありませんが、まずは自分と同じような人を育てて、そういう人に合わせて店舗を広げていければと思います。『この人なら店舗の立ち上がりは大丈夫』みたいな人をつくることでしょうね」と、いたずらな拡大路線ではなく、地道に増やしていく考えである。

1980年代後半から1990年代にかけて大人気を誇った『なんでんかんでん』は、幹線道路沿いに店舗を構えたのに駐車場がなかったのが致命傷になった。路上駐車が社会問題になり、取締りの強化で売上が激減。最終的に店舗を閉める結果となった。今回はJR高円寺駅から徒歩1分の場所にあり、駐車場の心配はない。

店舗を閉めてから6年はタレント活動を中心に活動していた川原社長にとって、今回は再び訪れたチャンス。「今まで失敗したことが、今に生かされています。人は失敗しないといけません。失敗して初めて『あの時こうすれば』という考えが出てきます。失敗して成功して人は良くなっていくものです。だから失敗して良かったと思っています。そして人生には波があります。いい時もあれば、悪い時もあります。マネーの虎(日本テレビ系の深夜番組、川原ひろし社長も出演)の虎(出資者)たちも、一旦悪くなっても、またベンツに乗っている人もいます。僕もまだまだ若い人には負けませんよ」。

21世紀にも通用した『なんでんかんでん』ブランドは、タレント業の片手間に行う事業ではない。川原社長の本気度が伝わるブランドは、さらに成長が期待される。
 

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「失敗したことが、今に生かされている」と語る川原社長。今後の展開も楽しみだ!(画像=Foodist Media)

川原ひろし
福岡市博多区出身。幼少時から音楽に親しみ、音大の声楽家を目指し上京、22歳で作曲家としてデビューする。しかし「東京には本物の豚骨ラーメン店がない」ことに不満を感じ1986年に『なんでんかんでん』を東京都世田谷区の環状7号線沿いに開店させる。これが大ヒットして、わずか13坪、住宅地、深夜だけの営業で年商3億円と言われるほどに成長させ、店舗も増やし実業家として活躍する。その実績と、ユニークなキャラクターを買われテレビ出演は1500回以上。特に日本テレビ系のバラエティー番組「マネーの虎」の出演によりお茶の間の顔となる。今年3月にはテレビ朝日系「しくじり先生 俺みたいになるな!!」に出演し、当時の裏話を披露した。現在はタレント、歌手、俳優、接客繁盛術講師、プロ催眠術師、ありがとう大学理事長としても活躍している。

『なんでんかんでん高円寺店』
住所/東京都杉並区高円寺南4-25-9
電話番号/03-5913-9485
営業時間/11:00~15:00、17:30~翌1:00(スープがなくなり次第閉店)
定休日/不定休

文・松田 隆/提供元・Foodist Media

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