躍進するマイクロソフトを分析する

2019.8.11
BUSINESS
(画像=Getty Images)
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マイクロソフトといえば、どのような企業イメージを持つでしょうか。

日本で働く30代以上のビジネスマンの多くは「Windows」や「Office」などを思い浮かべ、GAFAなどの最先端テクノロジー企業と比べて一昔前の企業という印象を持つ方も多いと思います。

しかし近年、マイクロソフトは大きく変わろうとしています。

テクノロジー産業という移ろいの激しい業界のなかで、創業40年を超えた世界最大のソフトウェア会社マイクロソフト。

今、再び注目を集めているこの企業が目指している驚くべきビジョンについて、今回は掘り下げて分析していきます。

マイクロソフトとは

マイクロソフトは1975年にビル・ゲイツ氏とポール・アレン氏によって創業した会社です。

ソフトウェア会社として、パソコンのOS開発によって成功を収めています。

そこからサーバーやWindowsやOfficeなどのソフトウェア、Xboxなどのハードウェア、クラウド事業ではMicrosoft Azureや日経225銘柄の8割が採用しているというOffice365、その他にもオンラインサービスのSkypeや世界最大級のビジネスSNSであるLinkedIn(リンクトイン)を約2兆円で買収したことも話題になりました。

このようにポートフォリオも実に多様であり、ビジネスの80%近くが法人向けにシフトしていることも特徴でしょう。

世界に約12万人もの従業員を抱えるマイクロソフトの本社はシアトル郊外レドモンドにあり、東京ドームの30個分とも言える広大な敷地に125の建物が並んでいます。

道路が整備されバスケやサッカーをする場所もあります。

この広大な敷地は「キャンパス」とも呼ばれ、移動するために「シャトル」と呼ぶ自動車で移動することが出来ます。

このシャトルは実に150台以上が走行しており、社員は建物前に並ぶか、専用アプリを使って呼び出すことができるのです。

キャンパスの中心には「The Commons」と呼ばれるレストランなどの複合ショップが軒を連ね、そこだけを見ても巨大な商業施設の規模を擁しています。

そして、時代の変化に伴い働き方が劇的に変化しているのも特徴でしょう。

リモートワークの拡大により社内にある個室スペースは減り、フリーアドレスで仕事をする社員が大半なのです。

そもそもマイクロソフトはOffice365を手がける企業だけあって、会議は会社でやるもの、会社だけで仕事をするものという発想がないのです。

例えば空港にいてフライト時間を待つ間にオンライン会議も出来るし、午後3時頃に会社を出て子どもを学校に迎えに行き、夕ご飯を一緒に食べた後に自宅で仕事をすることも可能です。

従来の固定化した働き方は昔の話なのです。

実にイノベーティブなマイクロソフトですが、確かに職場環境の充実も要因ではあるものの、大きな変革となったのは2014年にサティア・ナデラ氏が本社CEOに就任してからと言われています。

では一体サティアCEOとはどのような人物なのか、その人物像に迫っていきましょう。

サティア・ナデラCEO

創業者のビル・ゲイツ氏、2代目のCEO スティーブ・バルマー氏に続いてCEOに就任したサティア・ナデラ氏は、前任者から始まった変革を受け継ぎ前進させることに成功しました。

根っからのエンジニアであるサティア氏がまず取り組んだのが、マイクロソフトという会社が持つ企業体質と呼ぶべきカルチャーを変革させることでした。

会社を変えるにはカルチャーを変える必要があることを知っていたのです。

これはマネジメントで有名なピーター・ドラッガーも「企業文化は戦略に勝る(Culture eats strategy for breakfast)」という言葉を残しているように、新たなカルチャーを構築が実現すれば、それが無形資産になることを確信していたはずです。

そしてカルチャーに対するマイクロソフトの考え方やミッションのひとつとして、「Our culture」という以下の言葉を付け加えました。
  • Growth mindset (成長マインドセット)
  • Customer obsessed(お客さまを第一に考える)
  • Divercity&Inclusion(ダイバーシティ&インクルージョン)
  • One Microsoft (ワンマイクロソフト)
  • Maiking a difference (変化をもたらす)
このミッションに違わぬ行動をサディアCEOは実行に移します。

それはマイクロソフトのビジネスモデルであるソフトウェアのライセンスビジネスの変革を宣言し、その後はクラウドサービスをどれだけ多くのユーザーに使用してもらうかという方向へシフトチェンジしました。

クラウド事業が成功するためには、ユーザーに長期に渡って信頼してもらい続けることが必要です。

そこで、CEO自ら脱Windows化を実践するべく、それまではマイクロソフトのライバルであったシリコンバレーの競合他社の元へ自ら足を運び、次々とビジネスの連携を実現させていきます。

その代表例が「アップルと手を組んだ」ことでしょう。

これはIT業界にとっても、青天の霹靂ともいえる象徴的な出来事です。

マイクロソフトは長年に渡り対アップル戦略の方針でしたが、サディアCEOは、そもそもiPhoneは敵などではなく、マイクロソフトのアプリやサービスを使ってくれる特筆すべきデバイスである、という明確なビジョンを打ち出したのです。

そこでiPhone向けの素晴らしいアプリを作り、さらに多くのユーザーにマイクロソフトを使ってもらう戦略を打ち出したのです。

ではアップル側としてはどうでしょうか。

マイクロソフトとの互換性によってiPhoneをより柔軟に幅広く使ってもらえることで、さらに多くのユーザーから支持されることになります。

まさに両者にとってウィンウィンの関係となったのです。

先を見据えればWindowsにもAI化が進んだ近未来社会においては、もはやマイクロソフトやアップルという括りで物事を見ることはなくなることは間違いなく、クラウド社会において、どのような次世代ビジネスモデルを構築していくのかが鍵となるのです。

そしてマイクロソフトが競合他社と協力しながら競争することで、「ポスト・スマホ」時代のトップランナーを虎視眈々と狙っているのは間違いありません。

サティアCEOの功績として挙げられるのは「ミッション」だけでなく先を見据えた「ビジョン」にも優れた思考が下記のように見ることができます。
  • Mission(企業ミッション)
地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする。
  • Worldview(世界観)
モバイルファースト、クラウドファースト
  • Ambition(会社としての野望/大志を持って注力する領域)
生産性とビジネスモデルの再構築

知的なクラウドプラットフォームの構築

パーソナルなコンピューティングに革新を起こす
  • Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)
上記に挙げた3つの領域を発展的に統合させること。

その他にも6つのインダストリー(ヘルスケア、製造、政府・自治体、流通・リテール、金融、教育)やソリューション分野やそのソリューションによって、「社員にパワーを」、「お客様とつながる」、「業務を最適化」、「製品を変革」を実現する。

そして、それら全てを推進するために重要なことこそ「カルチャー」であると言っています。

サディアCEOの就任によって、確実に社内の雰囲気が変化したのは間違いないでしょう。

草の根プロジェクト「Garage」と「マイクロソフトリサーチ」

Garageはマイクロソフト社内におけるイノベーティブなプロジェクトです。

Garageという名前の由来は、アメリカのベンチャースピリットはGarageから始まるという言葉が由来となっています。

このプロジェクトは2009年から始まり、組織や国境を越えて社員が自由に研究・実験したい試みについて推し進める実験場のような場です。

サディアCEOはこのプロジェクトをさらに推し進め、マイクロソフトのカルチャーを常に進化させてくれる存在として、Garageのプライオリティを高めています。

何より社員の遊び心やモチベーションを上げてくれる刺激的な存在なのです。

一方、マイクロソフトリサーチもマイクロソフトを語る上で欠かせない研究機関です。

大きな特徴はR&D(研究開発)費が年間で1兆円を超えると言われる投資額でしょう。

さらに驚くのが研究した情報のほとんどをオープンにして、自社だけでなく他社でも利用できるようにしているのです。

これもテクノロジーによって、より良い社会の発展を築こうとしている確固たる姿勢であり、また、そうしないとマイクロソフトという会社に閉塞感が生まれるという哲学から導かれた発想といえるでしょう。

研究内容も多岐にわたり、その中でも早くからA分野Iへの研究を続けており、ここから次世代産業をリードする産業が生まれる可能性が極めて高いことも大きな強みでしょう。

モバイルファースト/クラウドファーストの次のビジョン

マイクロソフトが長年掲げていた「モバイルファースト/クラウドファースト構想」では、まずモバイルが世の中に広く浸透することでクラウドサービスを展開していくことを目指していました。

そうした社会が実現した後の2017年には、新たなビジョンを掲げることになります。

それが「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ」です。

簡単に説明をすると、これまでは検証データをクラウドで管理してAI技術によって分析していましたが、今後は持っているデバイス自体にAIが移植されクラウドに移す手間が省けるようになるのです。

このように従来のビジネスモデルから変化できなければ、瞬く間に時代から取り残されてしまうのです。

その時々で新たなビジョンをしっかりと提示できることが、今のマイクロソフトの強みであり、培ってきた企業文化そのものでしょう。

MR(Mixed Reality/複合現実)の凄さ

今、マイクロソフトが凄い、という見方がテック業界だけでなく広く一般社会へも広まろうとしている要因としてマイクロソフト発の技術が挙げられます。

それがMR(Mixed Reality/複合現実)と呼ばれるものです。

これはVR(VirtualReality/複合現実)やAR(AugmentedReality/拡張現実)など、ゲーム業界を中心に進化してきた技術とは全く異なる世界です。

MRとはあたかも本当にそこに実在しているような触覚を伴う世界を人工的に作り上げた、物理的世界と仮想世界が混じり合った世界です。

つまり、物理的なものがしっかりと伴う世界なのです。

例えば椅子に座る、コーヒーカップを握る、物理世界でモノを動かす行為をすると、MRの世界でもモノが動くのです。

このMRの世界を実現できるようにマイクロソフトは「HoloLens/ホロレンズ」というデバイスを発表しています。

このホロレンズには、空間や距離を認識するためのカメラや赤外線が搭載され、リアルタイムで空間を認識していきます。

このホロレンズの能力の例え話として、スターウォーズのレイア姫がホログラムを表示させるシーンが例えられることが多いです。

現代社会は20世紀に思い描いていた映画のような近未来が目の前に迫っているのです。

そしてMRで培われた技術力は、今後のビジネスにおいて無限の可能性を秘めていると言われています。

航空・建設業界や医療現場だけでなく、芸術分野などにも大きな可能性を秘めているのは間違いありません。

開発に携わったマイクロソフトの天才アレックス・キップマン氏が言うように、MRは時間も場所も越えたパワーを秘めており、国境を越えて様々な人々がMR上で集まり仕事をすることが可能となります。

つまりMRはビジネスだけにとどまらず、人々のライフスタイルや社会を劇的に変える存在となるのは間違いなく、22世紀前半はMRの時代に突入していくと考えるのが自然でしょう。

そして私たちが住む日本はホロレンズが出荷された9番目の地域にも関わらず、世界中のどこよりもオープンな土地でもあるのです。

日本はアニメなどのカルチャーで近未来に慣れているという指摘もあるように、実際、電車などの交通機関でホロレンズをつけている乗客が見られるのは日本だけです。

独自のサービスが生まれてくる可能性は極めて高い国ともいえるのではないでしょうか。

マイクロソフトの売上と利益推移について

2008年のリーマンショックの影響で1株あたりの株価は19.44ドルまで減少しました。

その後も2012年までは低成長が続いていましたが、2013年を境に成長していき、さらにサディア氏がCEOに就任した時期からマイクロソフトの次世代技術への評価が高まり、2019年6月現在では株価が130ドル台まで上昇しています。

株価はこの10年で4倍以上も成長しているのです。

そして売上、営業利益も年々上昇を続けており、2018年度は売上も営業利益も過去最高の成績でした。

そして1株辺りの配当金も2003年度の0.08ドルから始まり、1度も途切れることなく、2018年度には配当金が1.79ドルまで上昇を続けています。(記事執筆時点)

世界的な企業として、長年に渡りテック産業をリードし続けていることが数字からも分かるのです。

まとめ 躍進するマイクロソフト

スマートフォンの登場により、本当の意味でのインターネット社会がいかに便利であるかを実感した方も多いはずです。

ほんの10数年前にここまでスマートフォンが私たちの生活に浸透していると予想できた人は極僅かでしょう。

それと同じで次世代のデバイスはまるでSF映画の中の出来事が現実社会で起こるはずです。

世界を驚かせ席巻する技術の登場は目の前に迫っています。

そしてマイクロソフトが研究を進めている領域は「ポスト・スマホ」を席巻する技術である可能性が高く、テック業界だけでなく世界中のユーザーが期待しているのです。

その期待値こそ株価へと反映されている最大の要因でもあり、またマイクロソフトが次世代技術を制した時には、GAFAが過去の言葉になることもあり得るでしょう。

躍進するマイクロソフトの見通しは極めて明るく、今後も目が離せない企業として、かつてないほど注目が注がれているのです。

文・アートノミクス /提供元・The Motley Fool Japan

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