アリババ、テンセントはアマゾンに勝てるのか

2019.8.10
BUSINESS
(画像=Getty Images)
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アリババとテンセントは中国経済を代表する企業であると同時に、アマゾンと並び世界3大フィンテックと称される最先端の技術を保持しています。

アリババの決済アプリであるアリペイには約8億7千万人の年間アクティブユーザー(2018年3月時点)がおり、現在40カ国以上で使用されています。

テンセントはコミュニケーションアプリのウィーチャットと決済機能を併せ持つウィーチャットペイを提供しています。

現在のアクティブユーザーは約10億5700万人(2018年6月時点)と言われています。

アリババとテンセントが提供するアプリを中心に、中国のキャッシュレス決済は8割以上と言われ、その影響力は拡大しています。

今回はアリババとテンセントのビジネスモデルから近未来を予想していきたいと思います。

アリババとは

1999年にジャック・マー会長によって創業したアリババの収益構造の核は金融です。

アリババを構想したとき、次のように考えたそうです。

「企業を金持ちと貧乏人に分けるなら、インターネットはまさに貧乏人の世界だ。なぜなら、大企業は自社独自の情報ルートを持っており、巨額の広告予算もある。小企業には何もない。小企業こそ最もインターネットを必要としているのだ。私は貧乏人を率いて革命を起こす」

こうしてアリババは成長していき、現在は「米国・中国・欧州・日本に次ぐ世界第5位のアリババ経済圏を構築する」という壮大なビジョンを掲げています。

本社は杭州市にあり、従業員は約6万6千人。

2014年にはニューヨーク証券取引所に上場、2019年3月期の時価総額は4676億ドルと世界トップ10に加わっています。

成長を続けるアリババグループは生活全般のサービスをカバーする勢いなのです。

事業ごとに見ていくと、コアコマース事業、ローカルサービス事業、デジタルメディア&エンターテイメント事業、クラウドコンピューティング事業、マーケティングサービス事業、ロジスティクス事業、および決済&フィナンシャルサービス事業、という7つの事業セグメントから構成されています。

こうした巨大なプラットフォームによって生活全般のサービスを担っています。

コアコマース事業はアリババの核となる、Tモール(天猫)、タオバオ、アリババドットコムなどのECサイトを運営しています。

ローカルサービス事業では、生鮮食品を売るスーパーのフーマ、飲食店の評価をするコウペイ、食品デリバリーのEle.me、地図アプリのamapなどを展開しています。

デジタルメディア&エンタテイメント事業では動画配信サービスのヨーク、トゥドゥ、などが含まれています。

クラウドコンピューティング事業では、アリババのすべてのサービスを支える事業をアリババクラウドが担っています。

マーケティングサービス事業では、ユニマーケティングやアリママによって、Tモールなどから得られるビッグデータの分析を行っています。

ロジスティクス事業では、ツァイニャオがアリババグループの経営戦略を担当しています。

決算事業ではアリペイ決済などを運営するアントフィナンシャルが支えています。

このように、実に多様な企業体になっていることもアリババの大きな特徴です。

収益構造を見ても全体の85%以上がコアコマース事業なので、そのことからもアリババは代表的なEC企業であるといえるでしょう。

アントフィナンシャルとアリペイ

アントフィナンシャルはアリババグループの子会社(非上場)として、アリババの5分の1程度の規模となっています。

自らの会社を「テックフィン」と名乗り、フィンテックではなくユーザーの金融ニーズに応える意思を明確にしています。

技術革新によって、従来の金融機関が提供できなかった個人や中小企業、零細企業へ安全で便利な金融サービズを提供する会社として、日々進化を続けています。

アリペイはアントフィナンシャルの売上高の55%を稼ぐと言われ、アリババのECサイトの他に、リアル店舗、公共料金、交通機関、ありとあらゆるサービスシーンで利用出来るとして、中国全土を席巻しました。

主な機能はスマホアプリのアリペイを通じたQRコード決済です。全てのサービスの入り口としてのポジションを取ることに成功しています。

ビッグデータを使ったマイバンク

マイバンクとは、中小企業や個人事業主など、その日の仕事に必要なお金を日当などで返済する顧客を対象とした金融サービスです。

蓄積されたビッグデータとAIの活用によって、「申し込みは3分、融資判断は1秒」といわれる、物凄いスピード感を持っており、まさに零細企業にはうってつけの事業なのです。

このようにアリババはありとあらゆるサービスをダイナミックに、そしてきめ細かに提供しており、利用したくなる仕掛けが沢山あることこそ、アリババの強さの秘訣なのです。

テンセントとは

テンセントは1998年に創業し、本社は深圳市にあります。

従業員は4万人を超え、2017年度末の時価総額は約4300億ドルの大企業ですが、アリババと同じように現在も成長著しい中国を代表する会社です。

そのミッションは「インターネットの付加価値サービスによって生活を向上させること」です。

ビジョンは「最も尊敬されるインターネット企業であること」を掲げています。

事業の核となる部分は通話メッセンジャーアプリ「ウィーチャット」とインスタントメッセンジャー「QQ」、SNSの「QZone」です。

月間のアクティブユーザーは2018年の第2四半期報告によると、ウィーチャットが約10億5700万人、QQが約8億300万人、Qzoneが約5億4800万人にもなる大きなサービスを展開しています。

そしてオンラインゲーム事業にも力を注いでいます。

なにより世界最大のオンラインゲーム・コミュニティーを運営しているのは大きな強みでしょう。

なかでも2015年に発売された「王者栄躍」は1億以上のダウロード数を実現し、ゲーム中毒という言葉を生み出すほどの社会現象となりました。

その他にも映画制作や音楽配信、クラウド事業やAI事業などを手がけ、その中でもテンセント・ミュージックは2018年12月にニューヨーク証券取引所に上場するまでに発展しています。

テンセントの収益構造

テンセントは大きく3つの事業の柱があります。

まず、全体の収入の65%を占めるオンラインゲームやデジタルコンテンツ事業、売上高の17%を占めるオンライン広告収入、その他がペイメント事業、クラウド事業などがあります。

特に「スマートリテール」には力を注いでおり、これはアリババのニューリテールのようにリアル店舗を展開して、アリババを追い抜こうとする試みを指しています。

またペイメント事業では「ウィーチャットペイ」を展開し、アリペイよりも後発ながら徐々にシェアを奪うことに成功し、中国ではアリペイと双璧を成す存在へと成長を遂げています。

そして、テンセントにはアリババやアマゾンにはない強みがあります。

それは、リピート率の高いより親密なユーザーの獲得に成功していることです。

これはテンセントが持つ無料通話やチャットの恩恵であり、今後もソーシャルプラットフォームを強化していく方針は変わりがないでしょう。

なぜなら5G時代が到来すれば、また新たなコミュニケーションやサービスが生まれていくのは間違いないからです。

次世代技術の先頭を走ることも、テンセントは戦略的に狙っているはずです。

アリババ、テンセント vs アマゾンは金融事業の覇権争いである

グーグルの元会長エリック・シュミット氏は「インターネットは米国主導と中国主導の2つの世界に分断される」と発言しました。

これは米国のトランプ政権がきっかけとなり勃発した米中貿易戦争と関係しています。

これは5G時代において、どちらの国が覇権を握るかの争いでもあるのです。

アリババ、テンセントを筆頭に中国経済が席巻するのか、それともアマゾンなのか。

なぜアマゾンが比較対象になるのかというと、アマゾンは次世代の金融産業においてもメインプレーヤーと成り得る可能性が高いからです。

現在、決済サービスや幅広い金融サービスをすでに展開しており、「アマゾン銀行」の誕生も噂されています。

今後はさらなるアマゾン経済圏が広がっていくのか、それとも中国経済がさらに成長していくのか、世界中が注目しています。

現在、ドローンなどのAI技術において中国が既に技術的にも世界一になっており、米国は中国へと簡単に技術が流出することを脅威と考え、あらゆる手段で阻止しようとしています。

2020年代はどちらが覇権を握るのか、米中双方の今後の舵取りに注目が注がれているのです。

PEST分析によって見えてくる中国の金融構造

巨大な金融ディスラプターが誕生した背景には、中国という国の金融事情について知る必要があります。

マクロな環境を知るにはPEST分析が有効です。

このPEST分析とは、政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の観点から、国や産業の構造を可視化する試みです。

まず政治ですが、中国は国力の拡大のために「一帯一路」という中国経済圏を拡大する政策を打ち出しています。

それと合わせるように「13次5カ年計画(2016年~2020年)」という、イノベーションによる経済成長を目標に掲げています。

そのなかでもAI戦略に特に力を注いでおり、アリババはAIによる「都市計画」、テンセントはAIによる「医療映像」の国策受託企業に選ばれているのです。

次に経済ですが、中国はGDPと国民所得を2020年までに2010年から2倍にする目標を掲げており、年平均の経済成長を6.5%に設定しています。

ここでは「中国製造2025」やシェアリングエコノミー実現のためにインターネットと各産業を融合させること、農村貧困人口の減少、産業のスマート化による経済成長を促しています。

では社会的な要因はどうかといえば、1980年以降に生まれた世代が国民の半数を占めるともいわれ、その世代はデジタルネイティヴなので、当たり前のようにモバイル決済をしています。

そういった背景があるため、次々に新たなスマホのトレンドが中国から生まれているのです。

最後に技術的要因です。

4Gから5Gへと変化していくなかで、フィンテック、AI、ビッグデータ、クラウド、IOT、ディープラーニング、ブロックチェーンや暗号通貨など様々な技術がありますが、いわば「国家統制型の資本主義」によって集中的に国家が後押しをすることで、先進国を一気に追い抜くリープフロッグ現象ともいえる技術革新が中国では起こっているのです。

以上がPEST分析によってみえてくる中国のマクロ経済の環境です。

こうした土壌からアリババ、テンセントがさらなる進化を続けているのです。

フィンテック大国の中国の現在地

日本にはない未来社会の姿を、中国で垣間見ることができます。

そのひとつが杭州にある「アリババパーク」です。

この一帯はアリババ本社、アリババによる最先端の商業施設、アリババによる快適すぎるAIホテル、その他アリババ社員の住居などがあり、すべてキャッシュレスを前提に作られたスマートシティを実現しています。

ここは「中国のシリコンバレー」とも呼ばれており、近未来の都市デザインの象徴の1つとなるはずです。

現在1000社以上のスタートアップ企業が集結しており、その中には次世代を引っ張る世界的企業も誕生することでしょう。

まさに前人未到の分野を開拓していくアリババの哲学を感じる場所であると同時に、スマホすら必要としない社会を実現しようとする気概を感じます。

すでに特定の分野では世界一の技術を持っており、だからこそ、中国の進化について学び、客観的に分析する姿勢が隣国の日本にとって大切になってくるのではないでしょうか。

中国のフィンテック大国としての現在地は、私たちが想像するずっと先を走っており、今後もしっかりと対峙していくことがとても重要なのです。

文・アートノミクス/提供元・The Motley Fool Japan

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