商店街から人を奪ったGAFAに対抗するには?

商店街の個人商店も、GAFAをはじめとした世界的一流企業も、ビジネスモデルの骨組みという面からみると構造は同じ。こう主張するのは、『失敗をゼロにする 起業のバイブル』著者の中山匡氏だ。

そうしたビジネスモデルの「型」を知れば、商店街が果たしてきた価値をIT企業がどのように進化させたかが理解しやすくなり、さらには、商店街に再び客足を戻すようなイノベーションまでもが可能になるという。いったい、どういうことなのか。

ビジネスモデルには7種類22分類の「型」がある

年々増え続けているシャッター通り…。もはや、商店街の役割は終わった、商店街から学べるものはないとお感じの方も多いかもしれませんね。

ところが実際は、GAFAをはじめとした一流IT企業であっても、商店街によくあるお店を、ネット空間で進化させただけであることが多いものです。

例えば、facebookは郵便局の発展形です。また、Googleと八百屋は骨格が似ています。

一体どういうことなのか、少しずつ理解を深めていきましょう。

著者が経営するビジネススクールでは、10年かけて1,061個のビジネスモデルをリサーチしてきました。その結果、分かったことは「ビジネスモデルには型がある」ということです。そして、それは無限にあるのではなく、7モデル22分類に整理されるということでした。

今回は、全体像を理解頂くために、細かい分類はおいておき、この7モデルをもとにお話していきたいと思います。

facebookは、郵便局と同じ?

郵便局が提供している価値の1つが、手紙を届けたい相手に届けてくれること。まさに、大切な人とあなたの間をつないでくれるのが郵便局の役割。こうしたモデルのことを「マッチングモデル」と呼んでいます。

一方で、facebookは、「友人・家族・グループをつなぐサービス」です。最近では、E-mail以上に、同社のfacebookメッセンジャーを使っているという人も多いかもしれませんね。

まさに、これは手紙の代わりそのもの! 手紙の場合には、相手の住所が分からないと届きません。ところが、facebookメッセンジャーでは、名前で検索して相手を見付けることができれば、相手の連絡先が分からなくても、メッセージを届けることができます。

まさにfacebookは、郵便局の手紙のサービスを進化させたものと言えますが、ビジネスモデルの構造は同じだと言えるのです。

Googleは八百屋さんと同じ?

今度は、Googleを見てみることにしましょう。同社のミッションは、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」です。

こうした事業のことを、「情報整理モデル」と呼んでいます。本来であれば、情報を必要とする人が自分で集める必要があります。それを、代わりに行ってあげるモデルです。

では、八百屋はどうかというと、集めているのは情報ではありませんし、野菜を世界中から集めているようなケースも希でしょう。とはいえやはり、八百屋の意義は品揃えにあります。

また、売れる野菜ほど、お客さんの手にとりやすい場所に置くことで、便利なお店になっていきます。Googleが、ユーザーから求められる情報ほど検索結果の上位に表示させる努力をしているのに、とても似ていますね。

イノベーションを生み出すビジネスモデルの「型」とは?

以前は、商店街も十分な価値を持っていました。八百屋が、野菜や果物を揃えてくれるから、必要なものがすぐ手に入ります。郵便局の配達員が手紙を届けてくれるから、大切な人に思いを届けられます。

そんな中、最先端のIT企業が、それをもっと便利にしようと頑張った結果、人がネット空間に訪れるようになりました。

ただ、言えることは、上記の事例の通り、商店街が本来果たしていた価値が不要になったわけではないということです。ビジネスモデルに秘められた「型」は、商店街もIT企業も一緒なのですから!

ということは、商店街の1つ1つのお店をもっと便利にすることを考えれば、イノベーションのアイデアが生まれる可能性がありそうです。

例えば、小さな書店に置ける本の数は限界があります。が、その限界をとっぱらってしまうとAmazonが生まれる、というようにです。

こうした、アイデアを生み出すためには、ビジネスモデルの「型」を知っておくと便利です。

前述した「型」以外にも、代表的なものとして以下があります。

まず、自分の能力を活かしてサービスを行う「能力(自家発電)モデル」。そして、他社が開発した商品を代わりに売る「販売代行モデル」。商品価値をもった方の力を借り付加価値を付けてサービスを提供する「プロデュースモデル」。たくさんの面倒な手続を代わりにしてあげる「パッケージングモデル」。最後に、全く新しい付加価値をつけ、もとの商品とは完全な別商品としてしまう「価値転換モデル」。<参考>『失敗をゼロにする起業のバイブル』CHAPTER 5)

商店街にある家族経営の店舗等に、これらの型がどのように活用されているのかを表でまとめてみると、次の表のようになります。
 

ビジネスモデル,中山史貴
(画像=THE21オンラインより)

イノベーションとは、新しい「型」を付け加えること!

この表から分かるように、1つの事業に1つのみの「型」が使われていることもあれば、複数の「型」が活用されていることもあります。

イノベーションを起こすためには、前述のfacebook、Googleの例のように、もともと商店街の事業で活用されていた価値を理解した上で、もっと素晴らしい価値提供方法を考えることが重要になってきます。

それに加えて、比較的簡単なのが、商店街の各事業で現在使われている「型」に、全く別の「型」を付け加えられないかを考えること。

例えば、八百屋は、「情報整理モデル」「販売代行モデル」の組み合わせです。

これに、「パッケージングモデル」を付け加えるとどうなるでしょうか?

「パッケージングモデル」とは、面倒なことは、手間を代わりにしてあげるもの。顧客が野菜に関して面倒だと思っていることには、切ったり、ゆでたりする下ごしらえがあります。そこで、八百屋がそれを代わりにしてあげたとしたらどうでしょうか。

下ごしらえ代行サービスがついた八百屋という新しいビジネスモデルの誕生です!

ネットスーパーよりも便利、痒いところに手が届くということで、もしこのような八百屋があったら、商店街に人の流れが戻るかもしれませんね。

街の本屋さんがアマゾンに対抗できる!

もう1つ、今度は、本屋で考えてみましょう。本屋は、「販売代行モデル」と「情報整理モデル」の型が使われています。

こちらに「能力モデル」を付け加えたらいかがでしょうか?

「能力モデル」とは、その人の才能・能力・スキルを活かし、サービスをするモデルです。

例えば、「私、カラダが固いので、柔らかくしたいのですが?」という悩みを持った人がいるとします。通常は、顧客がそれを解決できる本を自分で選びます。

そんな中で、もし、その悩みを店員さんがしっかり、じっくり聞いてくれ、最適な本を選んでくれるとしたらいかがでしょうか? そして、店内にはない本は取り寄せてくれる。

そのような書店があったら、Amazonではなく、商店街に足を運びたくなるかもしれませんね。

このように、既存の事業に新しい「型」を付け加えると、イノベーションを起こしやすかったりするものです。あなた自身の現在のご活動に対して、新しい「型」を付け加えると、どんなアイデアが生まれるでしょうか? ぜひ、時間をとりチャレンジして頂けたら嬉しい限りです。

文・中山史貴(なかやま・ふみき)
一般社団法人シェア・ブレイン・ビジネス・スクール代表理
本名 中山匡
栃木県生まれ。東京大学大学院工学系研究科システム量子工学専攻修士課程修了。経営コンサルティング会社に入社後、31歳で独立。「広がる事業には、美しい方程式が秘められている」という理念のもと、ビジネスモデルのロードマップを描けるコンサルタント養成にも力を入れ「ビジネスモデル・デザイナー認定講座」をスタート。また、2009年より、一般社団法人一般社団法人シェア・ブレイン・ビジネスを設立。結婚・出産をきっかけに、フルタイム勤務を断念した女性を在宅勤務スタイルで起業家とつなぐ「在宅秘書サービス」や「シェア秘書サービス」を立ち上げる。現在、150社以上に導入。1,500名以上の秘書が登録。(『THE21オンライン』2019年06月06日 公開)

提供元・THE21オンライン

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