秋葉原にIT企業が運営するカフェが登場し、大きな話題を呼んでいる。完全キャッシュレスでレジレス、物販はウォークスルー決済が可能といった具合に、最新の技術を存分に取り込み、次世代の店づくりを行う。働き方改革や生産性向上といった外食業界に立ちはだかる課題解決のヒントになるのではないだろうか。その取り組みに寄せられる期待は大きい。

店の名前は『Developers.IO CAFE(デベロッパーズアイオーカフェ)』。運営を手掛けるクラスメソッド株式会社はビッグデータをはじめ、IoT、音声認識といった技術の活用を企業に対して支援するなど、その技術力に対する信頼は高い。同社のノウハウを結集させたカフェの成り立ちや狙いを同社マーケティングコミュニケーション部の𡈽肥淳子氏に伺った。

IT企業がカフェを立ち上げるまでの軌跡

すべては代表取締役の横田 聡氏が2018年5月に視察で訪れたシアトルで始まった。シアトルといえば、アマゾンやマイクロソフト、エクスペディアなど、多くの大手IT企業が本社を置く。そこで同氏は、ある衝撃的な光景を見た。その様子について、𡈽肥氏はこう話す。

「当時、出来たばかりのAmazon Goへ足を運んだそうです。Amazon Goではレジレスやウォークスルー決済などが実現されていて、世界中から大きな注目を集めていました。もともと横田もエンジニア出身です。最先端の技術を駆使した店舗に好奇心が刺激されたのでしょう。複数人で商品を取ったり、戻したりして、誤作動をしないか試しました。すると、どんな複雑な動作も正確に認識し、しっかりと決済まで行います。無人店舗にはこんな感動的な顧客体験を与えられる可能性があるのか。そう確信した横田は、帰国後、自社のノウハウを活用してレジレス、キャッシュレス、ストレスフリーの購買体験実現のプロジェクトをスタートさせました」

そもそもクラスメソッド株式会社はクラウドやマーケティング・システムの設計、開発、運用などの分野で高い技術力を持つ。そうした強みを駆使しながら、まずは社内の会議室で無人店舗の実験を繰り返した。天井や棚に取り付けるセンサーの位置を調整し、いつ誰がどの商品を手に取ったかを正確に把握できるようにするなど試行錯誤を重ね、2019年2月、本社を置く秋葉原に『Developers.IO CAFE』をオープンさせた。
 

最先端のIT企業が密集するシアトルの街並み
最先端のIT企業が密集するシアトルの街並み

2つの大きな特徴をもつカフェ

同店の決済方法には大きく2つの特徴がある。それが「モバイルオーダー」と「センサーを活用したウォークスルー決済」だ。

まず「モバイルオーダー」については、同店では注文や支払いをスマホアプリに限定しており、現金を扱っていない。そうすることで完全キャッシュレスとレジレスを実現。客側は注文を終えて来店するのですぐに商品を受け取ることできる。待ち時間を気にしないで済むためストレスもない。
 

『Developers.IO CAFE』での事前決済の方法
『Developers.IO CAFE』での事前決済の方法

一方の「センサーを活用したウォークスルー決済」は、カフェに併設されている物販エリアでその役割を果たす。同エリアにはスマホアプリをかざしてチェックインする。エリア内には天井や壁にいくつものセンサーが設置されており、それぞれが独立して動く。各センサーで収集した情報はクラウド上で総合的に推定され、顧客ごとの動線を確認。こうしてカゴ入れやカゴ落ち、購入などの判定をし、客が物販エリアの外に出ると、自動的に決済まで行う。

完全キャッシュレスやレジレス、ウォークスルー決済が店舗に与えるメリットについて、𡈽肥氏は次のように語る。

「昨今、クレジットカードをはじめ、電子マネーやQRコード決済など、さまざまな決済手段が生まれ、飲食店のスタッフの作業負担は増えています。また、現金を扱うなら、開店前の金種の用意や閉店後のレジ締め、売上金の回収など、やるべきことがたくさんあるでしょう。当店ではそうした作業をする必要がないので、お客様にはもちろん、スタッフにもストレスフリーの環境を提供できました。レジ周りの業務負担が減った分、スタッフは接客や商品企画などを楽しんで行えているようです」
 

多様な機能を活用することでウォークスルー決済は実現されている
多様な機能を活用することでウォークスルー決済は実現されている

次世代型の店舗が目指す次なるビジョン

同店はWi-Fiと電源を完備しているので、近隣のビジネスパーソンを中心に利用されている。商談や打ち合わせスペースとして活用する人も多い。

また、同社のエンジニアが作業スペースとして利用することもある。そもそもエンジニアが客の声を直接聞ける機会は少ない。しかし同店なら、客の反応を間近で観察でき、新たな開発のヒントも得られる。実際、そうした声を開発に生かし、今でも週に一回は何らかの改善が続く。

オープン以来、飲食業はもちろん、小売りやITといった企業の担当者の視察が相次ぐ。ノウハウの提供をお願いされるケースも珍しくないそうだ。今後のビジョンについて、𡈽肥氏はこのように話す。

「将来的にはビジネスの横展開やノウハウの提供なども検討しています。しかし、まずはその前にシステムがミスを起こさないようにすることが欠かせません。引き続き、お客様の声をフィードバックしながら改善を重ねて、さらに多くの方に新しい店舗体験をしてもらえるように取り組んでいきたいです」

『Developers.IO CAFE』
住所/東京都千代田区神田須田町2-25 Gyb秋葉原1F
営業時間/10:00~18:30
定休日/土曜、日曜、祝日
席数/30

文・三輪大輔/提供元・Foodist Media

【関連記事】
ミレニアル世代の6割が「仕事のストレスで眠れない」試してみたい7つの解消法
みんながやっている仕事のストレス解消方法1位は?2位は美食、3位は旅行……
職場で他人を一番イラつかせる行動トップ3
「ゴールドマン、Facebookなどから転身、成功した女性起業家6人
【初心者向け】ネット証券おすすめランキング(PR)