現業をしながら、週1回、ベンチャー企業へも

成長のため、企業が社員に他社での仕事を経験させるケースが増えている。出向という形を取る企業もあるが、それ以外に、現業を続けながら他社の仕事もするというものもある。塚原雄平氏は、セガサミーグループの〔株〕サミーネットワークスの仕事をしながら、社員数7人のベンチャーの仕事もした経験者だ。

気づきや学びを求めて畑違いの新たな場所へ

サミーネットワークスは、PCやスマホにパチンコ・パチスロゲームを配信する事業を行なっている。そのためには、タイアップしているアニメなどや音楽をはじめ、様々な権利の処理が必要だ。塚原雄平氏は、約40社もある遊技機メーカーとのライセンス契約を担当している。

「遊技機メーカー以外を担当したこともあるとはいえ、入社以来、ずっとライセンスの仕事をしてきたので、違う仕事をして気づきや学びを得たいという気持ちが強くなっていました」

そんなときに、女性向けの防犯メディアと防犯アプリを運営するベンチャー企業・Molyへ「他社留学」をする機会を得た。他社留学は、エッセンス〔株〕が提供する、人材育成を目的とした一種の研修サービスだ。

「まったく畑違いの会社なので、不安も大きかったですね。Molyでは、防犯メディアの読者コミュニティを活性化させるために、核となる人を3人以上発掘してほしいと言われました」

そこで塚原氏が最初に目をつけたのが、女子大生だった。

「サークルや部活、ゼミなどに所属している女子大生なら、発信力が強く、人を集められるだろうと考えました。

女子大生を対象にしたイベントを開くため、60以上の防犯サークルやボランティアサークルにSNSのDMを出したのですが、反応はほぼゼロ。直接コンタクトを取ればよいのではないかと思い、ハロウィン前日の10月30日に渋谷でビラを配ろうとしたところ、警察に注意されて中止に。今度は各大学の学園祭に足を運ぶと、その場では話が盛り上がるのですが、その後は音信不通になって……。

でも、直接話すことで、楽しいイベントだけでなく、真面目なセミナーに参加したいという女性が多いことに気づけました」

PDCAサイクルを回すスピードに驚愕

そこで塚原氏は、イベントとともにセミナーも開催することにした。すると、セミナーを紹介するサイトにも情報が掲載され、集客の窓口が広がった。また、ターゲットも、女子大生から女性全体に拡大した。

「講師を招いての防犯セミナーと、新しい防犯グッズを考えるグループワークのイベントをセットにしたことで、32名の方に集まっていただけました。その中から、講師に積極的に質問をしたり、グループワークで中心になったりしていた4名を、コミュニティの核になり得る方として選びました」

他社留学の期間は昨年9月から3カ月間。Molyに出社したのは週1回、計12回だった。

「Molyからイベント開催の予算をいただいていましたし、サミーネットワークスにも他社留学の成果を報告できるようにしないといけないので、プレッシャーは強く感じていました」

短い期間ながらベンチャー企業を経験したことで、仕事に対する意識に変化が生じたという。

「最も衝撃的だったのは、PDCAサイクルを回すスピード感です。仮説から実行、結果の洞察、そして次のサイクルへと、それまで経験したことがなかった速さで繰り返されていました。

Molyの仕事をするために、現業の効率化も、以前に増して意識しました。仕事を抱え込まず、チームメンバーに開示し、協力し合うようにしました。

想像以上に大変な経験でしたが、新しいことをする面白さを知ることもできたので、会社にどんどん新しい企画を提案していきたいと思っています」

《写真撮影:まるやゆういち》
(『THE21オンライン』2019年4月号より)

文・塚原雄平(サミーネットワークス)/提供元・THE21オンライン

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