「“やるべきこと”の一丁目一番地は、飲料を供給し続けること」。品薄の売場に「サントリー天然水」を並べることを最優先した(20年3月撮影)(サントリー食品インターナショナル)(写真=食品新聞より引用)

清涼飲料市場は昨年、新型コロナウイルスによる外出自粛で自販機とコンビニでの販売が大きく落ち込んだことと長梅雨などの天候不順により、2年連続の前年割れが確定した。こうした中、サントリー食品インターナショナルは市場平均を上回って推移し、昨年リニューアルした「伊右衛門」をヒットに導いた。その原動力は、1973年に激動の時代変化に対応すべく改定されたサントリーの社是にあるという。

取材に応じた木村穣介取締役専務執行役員ジャパン事業本部長は「春先、この先どうなるか分からなかったときに、社是を読み返してみたところ、今でも1ミリもあせていないことに改めて気づかされた」と振り返る。

以下、サントリーの社是。

  • 人間の生命の輝きをめざし 若者の勇気に満ちて 価値のフロンティアに挑戦しよう
  • 日日あらたな心
  • グローバルな探索
  • 積極果敢な行動

木村専務が指針にしたのは、日日あらたな心・グローバルな探索・積極果敢な行動の三つの視点で、日日あらたな心は「コロナで先行きが分からない中で虚心坦懐に今起こっていることを真摯に見つめ直していく」と解釈する。

しかし、簡単に打開策やアイデアが思いつかないときには、グローバルな探索の視点で広く探っていけば必ず何かが見つかるという姿勢で考えていく。最後に肝心なのは、積極果敢な行動で「まさに『言うは易く行うは難し』で、いろいろプランを練ったところで行動に移さないとダメ」と述べる。

コロナ感染拡大の早い段階で、この社是をテーマに掲げて3月にまず行ったのが「飲料メーカーとして“やるべきこと”と“やってはいけないこと”の識別」。

木村穣介専務(サントリー食品インターナショナル)(写真=食品新聞より引用)

その頃はトイレットペーパーや一部の加工食品が店頭から消えてやや混乱状態にあったことから「“やるべきこと”の一丁目一番地は、飲料を供給し続けること。ある日突然、店頭からなくなりパニックを引き起こすことだけは避けなくてはいけないと考えた」。

昨年の最注力ブランドは4月14日にリニューアル発売した「伊右衛門」だったが、発売時に予定していた大規模店頭活動を取りやめて2日間だけの活動に留め、その頃引き合いが強まっていた「サントリー天然水」を店頭に並べてもらうことを最優先に「伊右衛門」を押し出していった。一方、“やってはいけないこと”は「コロナに罹患し命を危険にさらすことと、コロナを周りに広めてしまうこと」とした。

年初に予定の山のようなマーケティングプランも識別。多くのブランドで温めていたプランを白紙にし「伊右衛門」「サントリー天然水」「ボス」の3ブランドと「伊右衛門 特茶」に絞り込むことを決断した。

「白紙にしろと言ってもすぐにはやめられないので、生産部門やサプライチェーン、関係各所に配慮しながら撤収戦略を練り、ブランド担当者にも理解してもらい、理屈を言うだけでなく実行に移せたのが良かった」と語る。

提供元・食品新聞

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