最も信用されているメディアは、まだ・やっぱり「テレビ」だった。MMD研究所が9月に実施した「2020年 ニュースに関する意識調査」によると、「最も信用できるメディア」はテレビで35.5%に上った。次いで、「新聞」が11.6%、「ニュースサイト」と「ニュース系アプリ」がそれぞれ8.2%で続いた。普段利用するメディアとして「動画」は59.6%と高かったものの、最も信用するメディアとして評価したのは4.4%にとどまった。

 評論家の大宅壮一が、かつて「一億総白痴化」のための装置と批判したテレビ。今や最も信用できるメディアとして評価されているのは、なんとも皮肉なものだ。映像と音で目と耳を奪い頭に直接情報を注入するかのような表現方法が使える、という点では、テレビも動画も同じ。フェイクニュースを流し続ければ、多くの人たちに誤った知識を植え付けることもできる。

 テレビ局がニュースを制作するにあたっては、大きな資金力を背景に真実の追求を目指し情報収集し検証し加工し、番組として放送する。程度の差こそあれ、テレビ局なりに責任を果たそうとはしている。

 動画では、しかるべきコストをかけてニュース番組を制作しているチャンネルは少ない。番組の見た目をもっともらしく装い、「テレビでは取り上げない情報をお届け」などと掲げながらも、単に海外のテレビや新聞をそのまま流用したり、さらには出所不明の情報を紹介するだけのチャンネルが散見される。

 大宅氏が存命なら、動画こそ「一億総白痴化」のためのコンテンツと評しているかもしれない。調査では、利用者が多かったにもかかわらず、動画は「最も信用する」には値しないという評価だった。視聴者は「今のところ・一応」分かっている。
 

BCN+R
ハードウェアとしてのテレビだけでは、一見放送なのか動画なのか区別はつきにくい(写真=BCN+Rより引用)

 電通が3月に発表した「2019年 日本の広告費」では、「テレビメディア広告費」が1兆861億円だったのに対し、「インターネット広告費」は2兆1048億円で、初めてテレビをネットが超えたと話題になった。有限の電波を有限の時間で割り振ったテレビ広告は、広告できるスペースはおのずと限られている。

 インターネット広告はそうした縛りはなく、自由にスペースを確保できることから、いずれは逆転するとみられていたが、意外にあっさりとネットがテレビを逆転してしまった。広告の主戦場はネットに移った。

 プレスの語源でもある出版には憲法で保障された大きな自由がある。その代わり、大きなリスクも伴う。何百万部も印刷して配布するにはそれ相応のコストがかかるからだ。結果的にコストが歯止めの役割を果たし、とんでもないフェイクニュースの蔓延はある程度抑制されていた。有限の電波を使う放送局は放送法の制限がかかっている。動画は、ネットで放送するだけならコストがほぼゼロでスタートできる。何百万人に届けることも、容易ではないが、可能だ。

 電気やガス、水道と同じようにインフラになったインターネット。もはや、物事の真贋を見極める能力がある人だけに使う資格があるという、特別の存在ではなくなった。日常生活の中でテレビ番組と動画コンテンツの境界線はどんどん薄くなっている。表現の自由を最大限に守りながら、どうやって悪質な動画を排除するのか。そもそも誰が悪質と判断するのか。運営会社任せでいいのか。AIに託すのか。社会全体として、そろそろ決めていく必要があるだろう。

文・BCN・道越一郎/提供元・BCN+R

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