昨年9月に倒産し、世界の旅行業界に衝撃を与えた英トーマスクックがOTA(オンライン旅行会社)として再出発する。英国のツアー販売業者に義務付けられる民間航空局(CAA)の弁済制度「ATOL」に登録を済ませた。登録情報を見ると、第1弾として年内に360人程度の取り扱いを計画しているようだ。

 トーマスクックは傘下の航空会社だけで年間2000万人を扱う巨大グループとして確たる地位を築いていたが、オンライン化や消費者ニーズの多様化など時代の変化に対応できず、幾度の経営危機を経て強制清算を余儀なくされた。CAA が15万人もの顧客を海外からチャーターで帰国させた救出作戦は記憶に新しい。同社から多くの旅行者を受け入れていた欧州の主要観光地が大打撃を受けるなど、リーマンショック級の衝撃とされた。

 OTAでの復帰は、中国の投資会社、復星集団(フォースングループ)の戦略だ。筆頭株主だった復星はトーマスクック破綻後の昨年11月、ブランドを1100万ポンドで取得した。英旅行専門誌によると、今年初頭に15人のチームを編成してトーマスクックの再始動に当たってきたといい、初年度に5万人近い取り扱いを予定している模様。コロナ禍で抑圧された旅行需要が21年に急騰すると期待しているとみられる。

 ウェブサイトは情報や機能が日々追加されており、目的・客層別の商品項目や旅行先のガイド情報を掲載。商品はまだごく少数だが、シティブレイク(短期の都市滞在休暇)では欧州17都市、米ニューヨークとラスベガス、中東ドバイを用意しているようだ。また、サイト訪問者にメールアドレスの登録を促し、ニュースレターなどを通じてコミュニケーションを図っている。

提供元・トラベルジャーナル

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