NTTグループが人気漫画を無断で掲載している海賊版3サイトの遮断(ブロッキング)を実施した。プロバイダー業界や法学者から懸念の声も上がる中で、NTTが踏み切ったのには、それなりの事情がある。

安倍首相も懸念を表明

「放置すれば、日本のコンテンツ産業の未来を破壊しかねない」 4月中旬の「知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議」で安倍首相は、海賊版サイトの横行に対し強い危機感をあらわにした。首相の指示に基づき同会議は、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)に対し、運営者の特定が困難な3サイト(漫画村・Anitube・Miomio)の遮断を要請。

これに対しインターネットプロバイダー協会は「ブロッキングは憲法上の権利として保障されている通信の秘密の侵害に当たる行為だ」として批判声明を出したが、政府は、「海賊版サイトによる著作権の侵害度合い、運営者が特定できず検挙・削除など他の方法による対応が難しい点を考慮すると、緊急避難措置としてやむをえない」としている。

政府要請を受け、NTTは4月23日、上記3サイトのブロッキング実施を発表した。ちなみにこれらのサイトは同日に閉鎖されており、現在アクセスができない。一方KDDIは「検討中」、ソフトバンクは「慎重な議論が必要」と対応が分かれた。

日本のコンテンツビジネスを破壊する

雑誌・書籍離れが進み、出版市場は13年連続で前年割れ、ピーク時の半分1.37兆円にまで落ち込んでいるが、出版業界にとって唯一といってよい成長市場が漫画だ。特に漫画単行本は、過去に連載されていた作品がもとになるのでコストが安く済む上に、人気作品なら大きな売り上げが見込める。

その頼みの綱である漫画の売上げが2016年から下がり始めている。元凶は、海賊版サイトに読者が流れたためといわれている。実際にこうしたサイトでは、「ドラゴンボール」「ワンピース」「7つの大罪」など5千以上の作品が無料で閲覧可能になっている。海賊版サイトには様々な広告がリンクされており、これらがサイトの収益源ではないかとみられる。  

海賊版サイトの黒幕は北朝鮮?

こうした海賊版サイトの運営者特定は、サイトが海外サーバーを経由していることもあり、法的措置を取ることが困難だ。去年問題になった「フリーブックス」に関しては、ブルガリア・ウクライナ・オランダの3か国に設置されていたことを突き止めたが、そこまで3か月かかった。

「黒幕は北朝鮮ではないか」との説もある。「特定の海賊サイトにアクセスすると、知らないうちに自分の端末が仮想通貨モネロのマイニングに利用される」という衝撃の事実が情報セキュリティー会社「トレンドマイクロ社」の調査により判明した。モネロは、北朝鮮の資金源として使われている可能性が高いとされている。

仮想通貨は、ブロックチェーンと呼ばれる仕組みに取引を記録していくのだが、それには膨大な量の計算が必要になる。この計算作業を請け負うと、報酬として仮想通貨を受け取ることができる、これがマイニングだ。

今回問題となったケースでは、海賊サイトのTOPにアクセスすると「コインハイブ」と呼ばれるプログラムが走り、勝手にマイニングしていたのだ。コインハイブが走ると端末に過度の負担がかかり、動作スピードが極端に落ちたりする。

出版業界と海賊版サイト利用者はどうすべきか?

出版業界にも反省すべき点はある。今後は定額読み放題の普及や、各出版社の作品がまとめて閲覧できるポータルサイトの設置など、読者のニーズに合わせ使い勝手の向上に向けた努力が必要だ。

1か月に30万人といわれる、海賊版サイトの利用者にも問題がある。もっとコンプライアンス意識を高め、「海賊版サイトの閲覧と万引きは変わらない」と頭に叩き込まなければならない。海賊版サイト利用により、フィッシングや詐欺サイトに誘導されるリスクも肝に銘じるべきだ。

文・ZUU online 編集部

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