中国でもシェアサイクル、シェア充電器(スマホ用)、シェアベッド(現在は停止命令)シェア雨傘など、やたらと「共享」(シェア)の二字を冠するシェアリングエコノミーブームは、当分収まりそうもない。

近日、北京、山東省・済南、陝西省・西安などで、「金牌護士」「医護到家」「護士到家」などの医療アプリが登場している。これらはすなわち、シェア看護師サービスである。

中国のシェアエコノミーはどこまで生活をカバーするのだろうか。「捜狐」「新芽」などのメディア記事から、シェア看護師の成否を探ってみよう。

好評のシェア看護師

今回登場したシェア看護師とは、基本的にO2Oモデルである。アプリをインストール後、患者は、基本的な病状を書き込み、希望するサービスを選択する。予約時間、薬品と処方などである。具体的なサービスは十数項目に及ぶ。点滴、静脈採血、外科の傷口消毒やガーゼ交換などもある。

ただし価格は極めて高い。例えば静脈注射は169元である。これは三甲医院(病床数501以上の高水準専門医療を提供する病院)の7倍以上である。

アプリに対する批評を見ると、大多数の顧客は「満足」の意思表示をしている。しかしこのモデルは、論争を引き起こしている。すでに看護師の業務範囲を超えていると考えられるからだ。関連規定の解釈があいまいな部分を突いているともいえる。専門性と安全性は保たれているのだろうか。

在宅サービス市場の巨大な可能性

在宅サービスは、O2Oの細分化されたサービスの一つだ。それは巨大市場として、眼前に現れている。

国家衛生計画委員会の統計によれば、中国の高齢者2億2200万人のうち、1億5000万人は慢性疾患を抱えているとみられる。そして独居高齢者は、2020年に1億1800万人になる。そして同年の養老産業市場の全体規模は、7兆7000億元と見積もられている。

政府は施設に頼らない自宅での“養老”を想定している。自宅90%、地域7%、施設3%の割合である。独居高齢者のケア市場は巨大だ。

資本市場は評価せず

北京に本社を置く「金牌護士」のCEOは、「我々は大切な需給を結合するプラットフォームである。独居高齢者の大きな手助けをしている。さらに多くの人たちに、このサービスを利用してもらえると信じている。」と述べている。

しかし現実はそうでもないようだ。資本市場がこの業態に対して冷淡なのである。1915年以降、融資団がまとまったのは、金牌護士を含む比較的規模の大きな6社だけである。

市場は巨大なはずなのに、資本市場の動きは鈍い。この原因はどこにあるのだろうか。

限られた成長空間

記事は3つの難点を指摘している。

1  中国では95%の都市で、ホームドクター制度を推進しつつある。しかし看護師が100万人も不足していて、政府の掛け声通りにには、進捗していない。肝心の看護師がいないのである。

2  在宅医療サービスは、病院や地域社会、養老機構、地方政府などとの連携が不可欠だ。つまりそれぞれの地域の条件に、強い制約を受ける。同一モデルによる迅速な規模拡大は望めない。

3  サービス対象は大部分が高齢者である。高齢者のケアは公益の性格が強く、地方政府の価格統制や規制を受けやすい。利益空間が広がっているとはいえない。

顧客からの高い評価とはうらはらに、低い成長余地しかないとみられているようである。しかし、金牌護士のサイトをみると、そのサービス範囲はまるで医療機関である。看護師という社会資源のシェアという発想と行動力は、なかなかのもののようにに思える。その成否はともかく、中国はシェアエコノミーを極めようとしているように見える。新しい動きには注意を払っておきたい。

文・高野悠介(中国貿易コンサルタント)/ZUU online

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