(本記事は、岩下 智の著書『面白い!のつくり方』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)

そもそも「面白い」とはどういうことか

改めて、「面白い」とは本来どういう意味なのか、まずはその言葉の意味から調べてみましょう。「面白い」を辞書で引いてみると、そこには多くの意味が列挙されています。

[面白い]
〔「面(おも)白し」で、目の前がぱっと明るくなる感じを表すのが原義といわれる〕
(1) 楽しい。愉快だ。
(2) 興味をそそる。興味深い。
(3) こっけいだ。おかしい。
(4) (多く、打ち消しの語を伴う)心にかなう。好ましい。望ましい。
(5) 景色などが明るく広々とした感じで、気分がはればれとするようだ。明るく目が覚めるようだ。
(6) 心をひかれる。趣が深い。風流だ。
 〔類義の語に「おかしい」があるが、「おかしい」は格好・表情・しぐさ・話し方などが普通と違っていて、笑いたくなる意を表す。それに対して「おもしろい」は対象が普通の基準から見ると新鮮・奇抜で変化に富んでいて、興味をそそる意を表す〕
     *『大辞林 第三版』三省堂より

まず冒頭の〔「面白し」で、目の前がぱっと明るくなる感じを表すのが原義といわれる〕という部分が、そもそも面白い表現です。たしかに「目の前がぱっと明るくなる感じ」というのは、何となくわかるような気がします。「あ、面白い!」と思う感じは、基本的には頭で考えて理解するものではなく、やはり直感的な閃きのようなものなのでしょう。

また、本来の意味を改めて調べてみると「面白い」にはいろんな意味があることがわかります。以前、私が考えていたように「面白い=笑える」という風に端的に捉えられがちですが、「笑える」というのは、この中のごく一部でしかないのです。(1)「楽しい。愉快だ。」や(3)「こっけいだ。おかしい。」が意味としては近いものの、それ以外のものは、あまり「笑える」感じはしません。(1)や(3)は、英語で言うところの「funny」に近い面白さで、(2)の「興味深い」や(6)の「趣が深い」などは「interesting」に近い面白さであると言えます。

このように、「面白い」という言葉自体にいろんな意味が含まれているということが、奥ゆかしい日本語の良いところでもあります。しかし、逆に言葉としての誤解を招きやすいことが、「面白いことコンプレックス」の原因のひとつになってしまっているとも考えられるのです。

誰もが普段から、いろんなものに対して「面白い」という言葉をよく使っていると思いますが、お笑い番組を見たときに言う「面白い」と、美術館で芸術作品を見たときに言う「面白い」は、まったく違う意味なのです。それが英語では「funny」と「interesting」と明らかに別の単語で表現されているのに、日本語では同じひとつの単語でしか表現されていないのです。

こういったことは他の単語でもよくあります。例えば「おいしい」という単語も、「tasty」と「delicious」では、そのおいしさの度合いや感じ方のニュアンスが異なります。

日本語の場合、「面白い」も「おいしい」も、実に表現の幅が広い言葉ですが、それが「どう面白いのか」「どうおいしいのか」までは、一つの単語では表現されていないのです。

また、先ほどの辞書からの引用の最後の部分では、「おかしい」という言葉と対比して〔「おかしい」は格好・表情・しぐさ・話し方などが普通と違っていて、笑いたくなる意を表す。それに対して「おもしろい」は対象が普通の基準から見ると新鮮・奇抜で変化に富んでいて、興味をそそる意を表す〕とありました。

「面白いとは何か」の答えは、実はこの文章の中に書いてあります。つまり「面白い」の源泉には「興味をそそる」ことが必要である、ということです。また、ここでいう「興味をそそる」状態というのは、見方を変えると「人を惹きつける魅力がある」状態であるとも言えます。やや強引ですが、先ほどの(1)~(6)の意味を一つにまとめてみましょう。

「面白い」とは「楽しさ」や「興味」「こっけいさ」「趣」などの何らかの「魅力」が感じられる様であるということができると思います。そして、これをさらに嚙み砕くと、

「面白い」=「人を惹きつける何らかの魅力がある状態」

ということになります。

ちなみに、その逆は「何も魅力がない様子」となり、「面白い」の反対の「つまらない」「平凡である」と同義になることがわかります。例えば、何か自分の作ったものや表現したものが人にあまり興味を持ってもらえなかった場合、それは相手にとって「何も魅力が感じられなかった」ということなのです。

また、これを少し発展させると、

面白い表現をする
=人を惹きつける何らかの魅力を表現に付加する

ということが言えます。さらに言うなら、

面白い表現をするにはどうすればよいか
=人を惹きつけるためには、どんな魅力を付加すればよいか

ということになります。

言葉としての「面白い」の意味は、これでなんとなく整理できたような気がします。しかし、実際に自分で面白いことを考え出すためには「人を惹きつける何らかの魅力がある」の「何らかの」の部分をどう表現するか、が重要になります。ここが人によってそれぞれ感じ方が異なるところであり、世の中に無限に存在しているものなのです。

また、人によって感じ方が異なるということは、どんなものであっても、見る人によって「面白い」と感じる人と「つまらない」と感じる人が必ずいるということです。つまり、すべての人に「面白い」と思われるものなど、この世の中にほぼ存在しないと考えていいでしょう。

しかし、表現をする上では、少なくとも自分が本当に魅力を感じるものを信じる以外に方法はありません。まずは自分が魅力的に感じるものを客観的に理解して、それを表現にうまく乗せることが第一歩なのです。
 

面白い!のつくり方
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岩下 智(いわした・さとる)
1979年東京生まれ。筑波大学芸術専門学群視覚伝達デザイン専攻を卒業後、2002年電通に入社。以来、アートディレクターとしてグラフィック広告のみならず、TVCM、Webサイト、アプリ開発、プロダクトデザイン、サービスデザイン、ゲームデザインなど様々な仕事に携わりながら、自らイラストやマンガも描く。
主な仕事に「Honda FIT」「KIRIN のどごし夢のドリーム」「bayfm SAZAE RADIO」など。国内・海外の広告賞受賞多数。筑波大学非常勤講師。
著書に「EXPERIENCE DESIGN」「IDEATION FACTORY」(どちらも共著/中国伝媒大学出版社)。
https://s-iwashita.myportfolio.com

提供元・ZUU online library

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