新型コロナウイルスが世界で猛威を振るっており、その影響を受けて世界のビジネスモデルは大きく変化しつつあります。

中でも、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった中国では特に経済への打撃が大きいものの、新たな販路で売上を回復しようとデジタル化やECの拡大が進んでおり、新たなビジネスが生まれ始めています。

本記事では中国の現状とウィズコロナ時代のニーズを組み込んだ各企業の取り組みに焦点をあて、日本企業にも活用可能な販路開拓への取り組みについて解説します。

目次
中国の新型コロナウイルスの影響

 ▶︎中国のGDP、44年ぶりにマイナスになるも、第二四半期はプラスに
 ▶︎デジタル化への取り組みが強まった
コロナの影響で新たな需要
 ▶︎巣ごもり消費増加によるECの拡大
 ▶︎配車による買い物代行サービス
コロナ禍を商機に変えたビジネス
 ▶︎ライブコマースの活用
 ▶︎従業員のシェア
コロナ禍を生き抜く中国ビジネス

中国の新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの感染拡大が始まった中国では、1992年以降はじめてGDPがマイナスにまで落ち、社会経済に大きな打撃を与えています。

一方で、この自粛ムードをビジネスチャンスに変えようと、デジタル化を推進する動きも見られています。

中国のGDP、44年ぶりにマイナスになるも、第二四半期はプラスに

2020年4月の中国国家統計局の発表によると、第1四半期である1~3月のGDPは前年同期比で6.8%減に落ち込みました。

四半期ごとの統計が公表されている1992年以降、初めてマイナスに陥りました。

しかし、第2四半期(2020年4~6月)のGDPの実質成長率は、前年同期比で3.2%とプラスに転じています。

中国経済は今までもさまざまな危機を乗り越えており、2003年第2四半期にSARSが流行した際にも成長率が落ち込みましたが、9.1%増でおさえています。

同じく、2001年第1四半期に経済を揺るがしたリーマンショックの際も6.4%増におさえ、2010年頃にはV字回復を果たしています。

しかしながら、新型コロナウイルスの影響は計り知れず、厳しい状況下でもプラス成長を遂げてきた中国経済が初めて危機に直面する異例の事態となっています。

デジタル化への取り組みが強まった

新型コロナウイルスの影響によって、中国政府共同予防・管理機構は2月下旬、商務省を中心に生活サービス産業のデジタル化をさらに推進していくという方針を発表しました。

この発表を受けて、ネット通販大手のアリババ・グループ・ホールディングの金融関連会社「アントフィナンシャル」はスマホ決済アプリ「アリペイ」をデジタルサービス全般で利用できるプラットホームにアップグレードすることを発表しました。

具体的な施策としては、3年間を期間として5万のプロバイダーと協力し、4,000万社をデジタルサービスと連携させる支援策を実施するとしています。

新型コロナウイルスの影響であらゆる産業が打撃を受けたものの、中国ではアリババのように顧客のニーズに柔軟に対応することにより、むしろ逆手にとりデジタル化推進に向けた取り組みを強めています。

コロナの影響で新たな需要

コロナウイルスの影響によって、外出自粛を余儀なくされています。

それに伴い自宅内の生活環境や趣味を充実させるため、外出せずに商品やサービスを購入する巣ごもり消費が注目されており、このコロナ禍で新たに生まれたニーズに着目しビジネス展開をする動きが見られています。

巣ごもり消費増加によるECの拡大

巣ごもり消費によって売り上げが拡大した好例としては、生鮮食品の電子商取引(EC)が挙げられます。

生鮮食品EC市場は、「実物を見た上で新鮮なのかを判断して購入したい」という中国人の消費者傾向から、低成長が続いていました。

しかし、コロナ禍の影響をうけて生鮮食品ECに頼らなければいけない状況となり、アリババが展開する生鮮スーパー「盒馬鮮生(フーマー)」や、アメリカ大手スーパー「ウォルマート」と関係を強めている「京東到家(ジンドンダオジャー)」、フードデリバリー事業で急拡大している「美団点評(メイチュアン・ディエンピン)」などの各企業において、生鮮食品プラットフォーマーの利用者数や売上高が急増する動きが見られています。

なお、生鮮食品ECはEC業界で最後のブルーオーシャンと呼ばれており、コロナ禍の中でどこまで成長するのか、アフターコロナでどこまで定着できるのか注目が集まっています。

配車による買い物代行サービス

生鮮食品EC同様に、配車アプリ大手である「滴滴出行(DiDi・ディディチューシン)」もECサイトの普及に目をつけました。外出制限による配車ニーズの減少、業績低迷、ドライバーの流出を食い止めるため、実施した施策が買い物代行サービスです。

買い物代行サービス市場は、フードデリバリーほど浸透はしていないものの、コロナによる需要拡大と伸び代に期待し、すでにインターネット企業や宅配サービスの大手が参入を開始するなど、競争が激化しています。

しかしながら、DiDiは配車サービス提供により構築したユーザー基盤、そして運営ノウハウを有しており、今後の動向に期待が集まっています。

コロナ禍を商機に変えたビジネス

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっており、ビジネスにも大きな影響を与えています。

そんな中でも、中国ではコロナ禍の影響を受けたビジネスモデルの変化があります。中国で実施されている各企業の対処について解説します。

ライブコマースの活用

外出自粛によって、実店舗での販売活動は厳しくなりました。

そこで消費者向けのビジネスでも法人向けのビジネスでも、巣ごもり消費に向けた新しい販売の形を取り入れています。

化粧品大手である林清軒は、中国国内に337店舗展開していましたが、全体の40%の157店舗を営業停止しました。

特に、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった武漢では全店舗が閉鎖となりました。

そんな中、同社は閉鎖店舗に所属していた従業員100人あまりに配置転換をして、オンライン上のインフルエンサーとして活動を開始しました。

具体的には、近年急成長を続けているライブコマースを軸とした販売チャネル「タオバオライブ」での配信や、中国のSNSであるWeChatを活用したメッセージのやり取りなどにより、オンライン上から顧客に働きかける施策により、売り上げ向上に努めました。

結果、2月15日時点で前年同月比45%増を記録し、武漢の店舗が全国売り上げ2位を達成しています。また、2月14日バレンタインデーの配信には、創業者である孫氏自らが出演したところ視聴者は6万人超え、主力製品であるツバキ油の販売数は40万個近くに上り、日本円にして600万円近い売り上げをおさめました。

従業員のシェア

コロナ禍の影響を大きく受けているのは飲食店です。業績が上がらないことで、社員を解雇せざるを得ない状況が続いています。

しかし、中国企業は解雇をせずに現状で人員が必要な事業に社員を貸し出す「従業員シェア」を開始しました。

中国国内では、売上の減少に見舞われた40社以上のレストランやホテル、映画館が人員配置の効率化にあたって社員の多くを通常業務から外し、アリババ傘下でeコマース大手であり、配達人員の不足に悩まされていた「フーマー」に貸し出すなどの施策が取られました

同様の形で、アリババ傘下でフードデリバリー を手がける「餓了麼(ウーラマ)」や、アリババ競合であるテンセント傘下の「美団(メイトゥアン)」、先述の京東(ジンドン)傘下のセブンフレッシュなどの中国企業もレストランから人員を借りています。

「従業員シェア」は個人と企業双方にメリットがあり、うまくマッチングが進めば効率的な働き方として発展していくでしょう。

コロナ禍を生き抜く中国ビジネス

中国では1992年以降はじめてGDPがマイナスとなり、経済に大きな打撃を受けました。一方で、この機会にデジタル化を進めている業界もあり、アリペイはデジタルサービス全般で使用できるようにアップグレードを予定しています。

外出自粛の影響によって、巣ごもり消費が増加しました。それに伴ったECの拡大やフードデリバリーの需要も増えています。また、コロナ禍による従業員の解雇を防ぐために、「インフルエンサーとしての起用」「従業員のシェア」 など、人員の再配置を実施して、企業存続に望みをつなげています。

このように、見方によってはデジタル化を推進し、新たな販路を開拓し増収を図ることは不可能ではありません。日本企業も中国企業の事例に習い、柔軟な発想で顧客のニーズに応えていくことが、今後一層求められていくでしょう。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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