抖音とは、中国発のショートムービーと呼ばれるタイプの動画投稿アプリ「TikTok」の中国名です。中国語ではDouyin(ドウイン)と読みます。

TikTokは、2020年4月に世界中でダウンロード数が累計20億回を超えるなど、若者を中心に広く人気を博しています。2020年6月末からはインドで使用禁止となり、アメリカやオーストラリアでもこれに続く動きが見られています。また、香港では7月にTikTokのサービス提供が終了していることが現地メディアにより伝えられています。

8月現在、アメリカではMicrosoftがTikTokの買収を検討していることが伝えられています。9月15日までにはこの協議を完了させる方針で、これによりアメリカにおけるTikTokのサービスは継続されるものとみられています。

今回は中国でTikTokが人気となった背景と、中国での抖音を用いた観光客誘致の事例を紹介します。

目次
抖音はTikTokの中国名

 ▶︎動画投稿アプリ「抖音 (TikTok)」
 ▶︎中国語の読み方は「ドウイン」
 ▶︎日本でも若者を中心に人気
 ▶︎インドでTikTokを含む中国産アプリが使用禁止に
なぜ中国で人気を集めたか
 ▶︎投稿のしやすさ
 ▶︎多くの人に見てもらえる
 ▶︎誰にでも通じる面白さ
抖音(TikTok) をインバウンドに活用するには?
 ▶︎日本のTikTokと中国の抖音は別のアプリ
 ▶︎中国での事例1.西安・重慶・南京の旅行客誘致
 ▶︎中国での事例2.KOLを起用したプロモーション
抖音(Tiktok)でのPRが中国人の心を掴むかも

抖音はTikTokの中国名

2020年4月に累計ダウンロード数が20億回を突破したTikTokは、中国をはじめ世界中で注目されている動画投稿アプリです。

ここではTikTokの概要をふまえ、中国名「抖音」の読み方と日本での評判について解説していきます。

動画投稿アプリ「抖音 (TikTok)」

TikTokは中国のByteDance社が提供する、モバイル向けのショートムービーを共有できるアプリです。15秒のショートムービーと音楽を簡単に組み合わせて作成・投稿できる仕組みが支持され、特に10代を中心とした若年層から絶大な人気を誇ります。

オフィスは、東京・ソウル・ロサンゼルス・ニューヨーク・ロンドン・パリ・ベルリン・ドバイ・ムンバイ・シンガポール・ジャカルタなど、グローバルに展開しているのが特徴的です。

モバイルアプリの動向を調査するSensor Towerの発表によると、TikTokは2020年第一期に世界での累計ダウンロード数20億回を突破しました。

2019年第四期に15億ダウンロードを突破した約5か月後にダウンロード20億回を突破したことからも、TikTokの大きな人気がうかがえます。
 

訪日ラボ
▲[TikTokのダウンロード数の推移]:Sensor Tower(画像=訪日ラボより引用)

中国語の読み方は「ドウイン」

中国発祥の人気アプリ・TikTokは、若者を中心に大きな反響を呼んでいます。中国で、TikTokは「抖音(ドウイン)」と呼ばれています。

正式名称は「抖音短視頻(ドウインドゥアンシーピン)」で、「抖音」はビブラート、「短視頻」はショートビデオを意味します。正式名称を日本語に直訳すると「音の短い動画に震える」となります。

また、TikTokの音符状のロゴは「抖音(Douyin)」の頭文字である「D」から作られました。

日本でも若者を中心に人気

中国で爆発的な人気を集めるようになったTikTokですが、日本でも2018年にGoogle Playの「BEST OF 2018」でエンターテインメント部門の大賞を受賞するなど一気に大ブレイクしました。

TikTokは日本でもスマートフォンを積極的に利用する若年層を惹きつけ、2018年第四四半期の月あたりのアクティブユーザー数は950万人にのぼっています。最近ではYouTuberに次ぐTikTokerが登場するなど、人気のTikTok動画投稿者も多く見受けられるようになりました。

音楽との親和性が高いことを1つの強みとするTikTokは、2018年10月に音楽ストリーミングサービスのAWAと提携するなど、音楽レーベルや配信事業者などとの提携を進めています。

インドでTikTokを含む中国産アプリが使用禁止に

世界中で人気となっているTikTokですが、2020年6月にインド政府がTikTokを含む59の中国産アプリの国内での使用を禁止することを発表しました。

この理由として、インド電子・情報技術省は「インドの主権、防衛、国家の安全と社会秩序に悪影響を与えるため」と説明しており、アプリから個人情報が不正利用されているという声が国内で上がっていることや、中印関係の緊張などが背景と考えられます。

インドにおけるTikTokのダウンロード数は、2020年5月の時点で世界総ダウンロード回数の20%を占めており、TikTokにとって最大の海外市場となっていました。

この禁止により、これまで順調に伸びていたTikTokのダウンロード数に大きな影響が現れる可能性もあります。

なぜ中国で人気を集めたか

ショートムービーの共有サービスは、これまでもTwitterのVineやDonutsのMixChannelなどが若年層を中心に大きな人気を獲得してきましたが、TikTokはそれらが持っていない魅力を新たに兼ね備えたアプリといえます。

TikTokが誕生した中国で人気を集めるようになった背景として、TikTokの3つの特徴を紹介します。

投稿のしやすさ

YouTubeなどに動画を投稿する際は、投稿ネタを考えるところから撮影・加工・編集するまで、一定のスキルやセンスが必要になります。一方でTikTokは、豊富なバリエーションから音楽とエフェクトを選び、15秒という短い秒数の動画と組み合わせることで、クオリティの高い動画が簡単に作成できます。

これまでは音楽に合わせた動画を作成する際に複数のアプリを使う必要がありましたが、TikTokは1つのアプリで完結するため投稿のしやすさが特徴的です。簡単に誰でも動画が撮影・投稿できる手軽さが、多くのユーザーを惹きつけたといえるでしょう。

多くの人に見てもらえる

TikTokでは、プラットフォーム側がビックデータに基づき動画をおすすめする仕組みが特徴といえます。大人気のTikTokerだけでなく、誰にでもおすすめ動画として自身の動画を流してもらうチャンスがあります。おすすめに載ることで他のユーザーからの反応が大きくなり、フォロワーを獲得しやすくなる点が人気の秘密の1つです。

また、動画の視聴者数や「いいね」の可視化により、自身の動画に対する評価を受け取れます。ユーザーの承認欲求を満たすことで動画投稿へのモチベーションを向上させ、継続的な投稿を後押しします。

誰にでも通じる面白さ

TikTokは、言語や文化背景にとらわれない性質を持っています。TikTokならではの誰にでも通じる面白さは、のちに中国から世界中へサービス展開が進んだ要因の1つとしても考えられます。

ショートムービーに音楽を合わせたシンプルな動画が投稿されることから、知識や共通の文化がなくても直感的に笑えたり楽しめたりするコンテンツが多いのが特徴的です。

抖音(TikTok) をインバウンドに活用するには?

TikTokは一般消費者だけでなく、企業がビジネスで活用することも可能です。

実際に、中国では、抖音の主なユーザーである10~20代をターゲットとした広告を打ち出した企業や自治体もあります。

ここでは、中国での抖音を活用したPR事例を紹介します。

日本のTikTokと中国の抖音は別のアプリ

TikTokをインバウンド対策に活用する際に注意しなければならないのが、日本版のTikTokと中国版の抖音は異なるアプリであるということです。

中国では多くの人が中国国内仕様の抖音を利用しているため、中国市場へのインバウンド対策をするには、中国版の抖音を利用したほうが効果的であると考えられます。

日本で中国版の抖音をダウンロードする方法は、AndroidとiOSで異なります。Androidでは抖音のホームページからダウンロードできますが、iOSの場合はApple IDの国設定を中国に変更しなければ中国版の抖音をダウンロードできないため、注意が必要です。

中国での事例1.西安・重慶・南京の旅行客誘致

抖音は、2018年に中国の西安市、重慶市、南京市と提携して旅行客誘致のプロモーションを実施しました。

各都市の風景やグルメなどをショートムービーで紹介し、多くのユーザーの「自分も投稿したい」という気持ちや、いいねを押したいという気持ちを駆り立て、都市の認知度向上や観光客数増加に貢献しました。

こうしたプロモーションの結果、2018年の「五一」三連休には、西安市の旅行収入は139%増加し、45億元を記録しました。また、南京市でも、同市に関連したショートムービーコンテンツが多数投稿され、その数は262万本、総再生回数は196億回以上となっています。

中国での事例2.KOLを起用したプロモーション

中国ではSNSでKOLを起用したプロモーションが盛んで、抖音も例外ではありません。

KOLとはKey Opinion Readerの頭文字をとった略称で、中国市場において販促に大きな影響力を持つ人物を指します。KOLは、特定分野での専門性が高く、大きな発言力をもつインフルエンサーです。口コミを重視する文化がある中国では、KOLによる商品やサービスの紹介への信頼性が高く、購入のきっかけとなることも多いようです。

例えば、抖音 には20万人以上のフォロワーを抱える「杏仁眼Miu」というKOLがいます。彼女はメイクやスキンケアなどのコスメを中心とした動画を多く投稿しており、美容に関心をもつユーザーの間で大きな影響力を持っています。

このようなKOLに自社の商品を使用し抖音上でコンテンツを作成してもらうことで、ターゲットを絞ったプロモーションができると考えられます。

抖音(Tiktok)でのPRが中国人の心を掴むかも

中国発の動画投稿アプリ「抖音(ドウイン)」は、現在日本を含めた世界中で、特に若い世代を中心に大きな人気を博しています。

その人気の理由には、クオリティの高い動画を簡単に作成し気軽に投稿できることや、それを多くの人に見てもらえる拡散性の高さなどがあります。

中国では、抖音を活用して国内の観光客の誘致や商品のPRに成功した事例もあり、中国市場に対してアプローチする際に効果的なSNSのひとつとして考えられます。

その際には、中国版の抖音と日本版のTikTokは異なることや、中国で受け入れられるKOLプロモーションなどについても理解しておく必要があります。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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