新型コロナウイルスの影響により観光業の不振が続く中、政府の国内観光支援事業「Go To トラベル」キャンペーンが、7月22日から前倒しで開始されました。

キャンペーン開始当初は、申請や利用の方法をめぐって混乱が見られましたが、その後、事業者や旅行者がキャンペーンを利用しやすくなる便利なサイトが続々と登場しています。

さらに、Go Toトラベルに活路を見出す国内大手オンライン旅行会社(OTA)の動きや、キャンペーンから除外された東京でも、旅行消費の需要を喚起しようとする取り組みについてもご紹介します。

目次
混乱も見られたGo To トラベル、目的別に使いやすいサイトが登場
7月30日より、楽天トラベルとじゃらんnetではキャンペーン対象商品販売が開始

 ▶︎独自割引を上乗せする旅行会社も
除外された東京でも消費喚起の取り組み:プリンスホテル「東京都民応援キャンペーン」~I LOVE TOKYO~
 ▶︎除外地域の追加に対するYahoo!トラベルの方針
「東京で過ごす夏」の商品価値打ち出せるか

混乱も見られたGo To トラベル、目的別に使いやすいサイトが登場

GoToトラベルキャンペーンは、開始時には、申請や利用の方法をめぐって、キャンペーンに参加する事業者と、利用する利用者双方で混乱も見られましたが、その後、目的別に使いやすいサイトが続々と登場しています。

観光業界向けの各種サービス・システムを開発するピアトゥー社が開設した、直接予約型旅行検索サイト「STAYNAVI(ステイナビ)」では、全国の宿泊施設が、同サイトに登録するだけで、Go Toトラベルキャンペーンの参画から直販までを行うことができます。

ピアトゥー社は、宿泊施設の経営支援の観点から、同サイトを利用するためのシステム利用料は無料とし、第三者の委託管理料として販売額の1.5%のみを収受するとしています。

また、インバウンド向けウェブサイト制作やプロモーション代行を手がける「オーエイチ」が開設した、特設サイト「高速バスで行く!  GoToトラベル」は、Go Toトラベル対象のバス旅行商品を紹介しています。

どのバス旅行商品がGoToトラベルの対象になるのか分かりにくいという消費者の悩みにアプローチするもので、同社は全国の旅行会社とバス事業者から、無料掲載の申し込みを受け付けています。

7月30日より、楽天トラベルとじゃらんnetではキャンペーン対象商品販売が開始

国内大手オンライン旅行会社(OTA)である「楽天トラベル」と、リクルートスタイルが運営する「じゃらんnet」は、7月30日からGoToトラベルキャンペーン対象商品の販売を開始しました。

楽天トラベルは、最大35%割引のクーポンをサイト上で取得して対象商品を予約する仕組みで、居住地や近隣都道府県などの近場での旅行の場合にはポイントが追加されます。

一方、じゃらんnetは、支払情報入力画面で「GoToトラベルクーポン」の利用をチェックすることで割引が行われる仕組みで、クーポン取得は不要で、一部施設で使える割引クーポンと併用することもできます。

独自割引を上乗せする旅行会社も

GoToトラベルによる割引に加え、独自の施策で割引を上乗せする事業者も出てきており、付加サービスの差別化による顧客争奪戦が激化しています。

「エアトリ」が国内ホテル予約で最大52%還元を発表したほか、「Yahoo!トラベル」でもPayPayボーナスやTポイントでの還元が上乗せされます。

除外された東京でも消費喚起の取り組み:プリンスホテル「東京都民応援キャンペーン」~I LOVE TOKYO~

東京では新型コロナウイルスの感染が拡大していることから、東京の居住者と、東京を目的とした旅行は、GoToトラベルの対象から除外されています。

一方で、対象から除外された東京でも、旅行消費を喚起しようという取り組みが広がっています。

プリンスホテルは、7月22日から、都内の全てのプリンスホテルで、「東京都民応援キャンペーン」~I LOVE TOKYO~と名付け、都内在住の宿泊客に、5,000円分の館内施設利用券を提供する特典を用意しています。

宿泊者以外でも、都内在住者は、直営レストラン・バー・ラウンジを2割引きで利用することができ、プリンスホテルでは今後、東京都民応援宿泊プランも打ち出すことを計画しています。

除外地域の追加に対するYahoo!トラベルの方針

Yahoo!トラベルは、東京以外の地域が対象外になった場合の、「GoToトラベル」を利用した国内宿泊予約への対応について発表しました。

今後、政府の発表などによって、対象外と指定された地域での予約の場合には、すでに割引を受けた予約でも、補助を受けることはできないとしています。

オンラインカードですでに決済している場合は、自動キャンセルして通知が行われ、自動キャンセルになった時点で発生したキャンセル料は、旅行者が負担するものとしています。

現地決済の場合は、自動キャンセルではなく、現地支払い時に補助の対象外として料金が変更になるということです。

「東京で過ごす夏」の商品価値打ち出せるか

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを手がけるヴァリューズが実施した、2020年の夏の旅行予定に関する消費者アンケート調査によれば、旅行を検討していない人が62%と大半を占める中、国内旅行に行くという人も26.6%を占めました。

「海外旅行派」が前年比20.4%と大幅減となるなか、「国内旅行派」は前年比87.9%と持ちこたえており、国内旅行への根強いニーズがうかがえます。

国内旅行予定者のうち63.2%が、越境しての旅行を希望しているように、都道府県やエリアをまたいでの旅行需要が比較的大きくなっているようです。

同時に「関東から関東」の旅行希望は前年の26.7%から34.1%に増加しており、特に20代女性を中心に、身近な場所での旅行を希望する人が増えているようです。

政府はGo Toトラベルについて、事業者向けサイトで情報提供と登録申請などのオペレーションを展開しており、事業者はこちらのサイトで情報をチェックするとよいでしょう。
 

訪日ラボ
▲[Go Toトラベル事業者向け公式サイト、トップページ]:編集部キャプチャ(画像=訪日ラボより引用)

感染者数の増大が全国に広く認知され、Go Toトラベルでも対象から除外された東京では、都内に留まる消費者も少なくないと考えられます。観光業に携わる事業者も、今夏は在住者に向けて「東京で過ごす夏」の商品価値を打ち出す必要が高まっているといえるでしょう。新型コロナウイルスの流行という逆境を逆手に取り、ここでどのような新しい価値が出てくるのかが期待されます。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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