テンセントが搜狗に買収を打診

ここ最近、中国IT大手テンセントが検索エンジン市場シェア2位の「搜狗(sougou)」の全株式取得を打診した。この発表を受け、搜狗の株価が高騰した。
テンセントは現在、搜狗の38%の株を所持する筆頭株主である。搜狗もテンセントの買収打診に対して「入念に検討する」と積極的な態度を示した。

搜狗は2004年にポータルサイト「搜狐(souhu)」の子会社として創立され、検索エンジンやブラウザ、入力ツールなど様々な事業を展開してきた。2010年に搜狐から独立し、2013年にはテンセントの投資を受け、テンセントと事業提携を開始した。
搜狗は検索サービス市場において中国最大手の「百度(バイドゥ/baidu)」超えを目標にしていたが、スマホの普及によりモバイルインターネット時代に突入した中国で、搜狗は対応に遅れ、百度に大きな差をつけられてしまった。さらにアリババがスマホ向けの検索エンジン「神馬」を打ち出し、市場に参入したことにより搜狗は更なるプレッシャーをかけられた。
2020年Q1の決算で搜狗は3160億ドルの赤字を出し、上場以来最大となる赤字額を記録した。こんな背景がある中、テンセントに売却されるのは搜狗にとって得策とも言えるだろう。

中国検索エンジン市場の現状

Googleが世界検索エンジン市場シェアの9割以上を占め、世界的な絶対王者の地位を確立するなか、中国市場では政府のネット検閲を理由に2010年に撤退を発表した。その後国内企業の百度が検索エンジン市場最大手に成長した。
 

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▲2019年中国検索エンジン市場シェア(出典:statcounter)(画像=チャイトピ!より引用)

米国のアクセス分析サイトstatcounterのデータによると、2019年の中国検索エンジン市場は、百度が67%の市場シェアを占めトップに立っていた。搜狗は19%のシェアを占め第2位である。神馬は7%の市場シェアで第3位の検索エンジンである。

デバイス別で見ると、百度はPCとスマホ、両方の検索エンジンのトップの座に立つ。PC市場では搜狗が40%を占め、百度と僅かな差で2位に並ぶ。スマホ市場では百度が81%の市場シェアを持ち絶対的な優位性を有している。神馬と搜狗は11%、6%のシェアでそれぞで2位、3位に並ぶ。
搜狗のCEO・王小川氏は2017年に、今後3年間でスマホ端末の検索サービスにおいて百度との差を0に下げると宣言したが、以上のデータを見ても搜狗は百度に到底敵っていない。
 

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▲百度、搜狗、神馬のスマホ画面(チャイトピ!よりキャプチャー)(画像=チャイトピ!より引用)

テンセントの狙い

中国インターネット情報センター(CNNIC)によると、2020年3月までの中国モバイルインターネット利用者数は8億9700万人にのぼる。モバイルインターネット時代では、各スマホアプリが独立しており、コンテンツの分散化が検索企業にとって大きな壁だ。豊富なコンテンツを保有するテンセントはWeChatを通して検索を強化している。

テンセントは2006年に検索エンジン「搜搜」をリリースしたが大きな成果を挙げられず、2013年に搜狗に出資すると同時に「搜搜」を売却し、搜狗の検索事業と統合させた。その後2017年にテンセントはWeChatにコンテンツ検索機能を追加し、検索市場へ再進出した。テンセントが提供する音楽やニュース、WeChat公式アカウントの文章などのコンテンツを検索できるようになり、WeChatの検索範囲はますます広がった。12億人ものユーザーを持つスーパーアプリWeChatがテンセントの検索事業に新たなのチャンスをもたらしている。搜狗を子会社にするにあたって搜狗が持つ技術でWeChatの検索機能を改善していく狙いがあると見られる。

提供元・チャイトピ!

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