新型コロナウイルスの影響によって、外出の自粛や航空便の減少、飲食店の休業が日々報道されています。

ここ数年、飲食や接客業を中心に外国人留学生のアルバイトの割合が増加しました。こうした外国人留学生は、コロナ禍の影響で全国的に外出自粛、営業自粛が求められているためにアルバイトを失い、生活に苦しんでいる方が多くいます。

この記事では、外国人留学生の現状と国や外国人留学生を受け入れている学校の支援を取り上げます。

外国人留学生の現状

日本に住んでいる外国人留学生は、日本人と同様に新型コロナウイルスの影響を大きく受けています。

外国人留学生が生活や仕事をするうえで困難に感じている点を3つを取り上げます。

渡日や帰国ができない

新型コロナウイルスの影響によって日本に在住している外国人留学生が母国に一時帰国が難しい状況が続いています。

外務省によると、2020年7月24日午前6時時点で、130の国と地域が日本からの渡航者や日本人に対して入国制限措置をとっており、85の国と地域が日本からの渡航者や日本人に対して入国後に行動制限措置をとっています。

4月は休校となっている大学もありました。こうした大学に通う留学生が、母国に一時帰国しても、学校が再開する時期での渡日が厳しく、帰国を断念したと考えられる外国人留学生も多くいます。

アルバイトができず収入減

最近は、居酒屋やコンビニ、スーパーを中心に飲食や接客業界を中心とした店舗でアルバイトをしている外国人留学生の姿をよく見るようになりました。

外国人留学生の中には、学費や家賃の面で母国にいる両親に負担をかけたくないという思いから、自分でこれらの費用をまかなうために、「資格外活動許可」という週最大40時間まで働ける在留資格を申請している人もいます。

新型コロナウイルスの影響が拡大してからは、飲食店は営業自粛や縮小を要請され、小売店も同じく休業要請応じたり、来客の減少が顕著になったりしています。こうした店舗では人員が削減されました。

働き先を失った外国人留学生は、食費や携帯電話代、家賃などの支払いが厳しいために日々苦しい生活を送っています。

就活への影響

新型コロナウイルスの影響によって就活イベントが中止や延期、WEB上での会社説明会や面接に切り替わるなど、就職活動にも大きな変化が起きています。

外国人に特化した人材紹介会社の調査では、外国人留学生に対して就活への変化を聞いてみたところ、88.6%の留学生が新型コロナウイルスの拡大によって「就活に影響ある」という回答を得ました。

さらに就職先が決まった卒業予定の外国人留学生は、ホテルや空港などインバウンドの観光客サービスや免税店などといった渡航制限の影響を受けやすい産業を中心に内定取り消しが発生するなどの事態も起きています。

外国人留学生に対する国の対応

文部科学省は、2020年4月から国費外国人留学生と独立行政法人日本学生支援機構「留学生受け入れ促進プログラム」を使って、日本に留学予定の外国人が奨学金を受給する際の条件を緩和しました。

総務省では、外国人向けに新型コロナウイルスに関しての多言語や、やさしい日本語で情報を提供しています。

ここでは、文部科学省と総務省が行っている外国人留学生への対応を解説します。

国費外国人留学生

文部科学省は、2020年4月から国費制度を使って留学する外国人留学生が、予定の日程に渡日ができなかったり、予定の交通機関を変更したり、秋入学を決めた場合に、渡航費の支給や奨学金の支給期間の変更、受給ができるようにすることを明らかにしました。

ただし、この対応を行う対象は2020年4月から留学する外国人を対象としているため、それ以前に日本に留学している外国人留学生は対象として含まれていません。

日本学生支援機構による支援

日本学生支援機構は、2020年4月から新たに私費で渡日予定の留学生を対象に「2020年度留学生受入れ促進プログラム」という奨学金制度を取り入れています。

今まで奨学金受給を希望する場合は、日本学生支援機構が定めた募集要項をすべて満たすことが必要とされていました。

しかし、今回の新型コロナウイルスの影響を受けてからは、奨学金を振り込むために必要な日本の銀行口座の開設や在留資格の登録とビザ(査証)の受け取りなど、日本にいないとできない要項は、満たせない場合も奨学金を申し込める措置を取っています。

法務省、やさしい日本語による情報提供

日本に住んでいる外国人留学生は、日本語を学習している方が多くいます。

日本語の学習を始めてまだ1年程度の外国人留学生は、日本国内の新型コロナウイルスに関する最新情報を知りたくても、ニュースやメディアの記事を完璧に理解するレベルに達していないことも少なくありません。

総務省は、外国人留学生に理解してもらえるよう、5か国語での翻訳対応とやさしい日本語といった簡単な単語を使った表現とフリガナをつけた新型コロナウイルスについての情報を公式サイト上で公開しています。

(参考:法務省ホームページ

外国人留学生に対する大学の対応

大学のなかには、アルバイト先をなくしたり、出勤日数が減ったことで生活に苦しんでいる外国人留学生が学校生活を送れるようにサポートをするところも出ています。

ここでは、現在日本に住んでいる外国人留学生とこれから日本の大学を受験したい海外の学生に向けて大学側が始めようとしている対応を2つ取り上げます。

支援金の給付

新型コロナウイルスの影響が拡大してから、学費が払えず困窮している学生も中にはいます。

いくつかの日本国内の大学では、国籍を問わず学生が安心して生活を送れるよう、支援金を給付すると発表しました。

ここでは、広島大学と早稲田大学の取り組みを取り上げます。

広島大学では、「応急学生支援金制度」という名称でアルバイトなどの収入が激減して生活に困っている学生や留学生に対し、月額30,000円を支給すると発表しました。

また、早稲田大学では、コロナショックによる家庭や外国人留学生を含めての経済困窮学生に対し、1人当たり10万円給付といった総額5億円を援助することも明らかになりました。

早稲田大学は、支援金の給付以外にもオンライン授業の受講に必要なPCやWiFi機器を貸し出すことも公式サイトで発表しています。

入学試験に対して

コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、TOEICやTOEFL、SATなどの英語外部試の中止が発表されました。

日本の大学に入学するにあたっては、英語のレベルを証明するために外部試験の結果の提出が求められることがあります。

こうした中で明治大学は、日本留学を希望する外国人を今後も受け入れるために、TOEICやTOEFLの結果が提出できなくても受験資格を得られるようにする予定だと発表しています。

コロナ禍の影響は外国人留学生にも

外国人留学生は、飲食・サービス業を中心にアルバイトをしていたことから新型コロナウイルスの影響によってアルバイトができず、生活に苦しんでいるのが現状でした。

外出自粛が求められている中で、在宅ワークが推奨されていることから、外国人留学生や労働者の割合が多い飲食・航空業界を中心としたサービス業での仕事が減っています。

就職活動においても今までとは異なる対応を行っていることから困惑や、内定取り消しのリスクとも戦っています。

外国人留学生にとって苦しい環境の中で、国や大学では奨学金や給付金により支援をしています

今いる外国人留学生が安心して日本で学び、生活ができるような支援が必要です。また、外国人留学生を雇用しているのであれば、日本で生活が困難になり帰国が余儀なくされる状況にならないよう、雇用の機会や生活の安全を作ることが必要になるでしょう。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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