給与が伸び悩む中、消費意欲は力強さを欠いたまま小売業界は厳しい状況に置かれている。少子高齢化も進む日本において、先行きにも不透明感が漂うが、小売業で勝ち組とされるコンビニ業界。自宅、職場からの距離に加え、買い物に応じて加算されるポイントを目的に、特定のコンビニを選択している利用者も多いだろう。

競争が激化する業界内で、「セブン‐イレブン」「ローソン」「ファミリーマート」が御三家として君臨するが、その勢力図の実態はどのようになっているのか。

営業収益、店舗網はセブンが絶対王者

セブンイレブンを運営するセブン&アイ・ホールディングス <3382> 、ローソン <2651> 、ファミリーマートを運営するユニー・ファミリーマートホールディングス <8028> 各社の2017年2月期の連結決算から、セブン‐イレブンとファミリーマートはセグメント別のコンビニ事業の営業収益をピックアップすると、御三家の中では、セブン‐イレブンがライバル2社とは桁違いの実績を上げている。圧倒的な営業収益の差は、店舗数の差がそのまま表れた格好となった。

2万店に迫る店舗網を誇るセブン‐イレブンだが、47都道府県のうち、沖縄県にはまだ店舗を構えておらず、2019年度にも初出店が予定されており、さらなる成長の期待がかかる。一方、追いかけるライバル社も、2016年9月1日は、ファミリーマートが「サークルK・サンクス」と経営統合を果たし、グループとしての店舗数には一部サークルK・サンクスの店舗も含み、セブン‐イレブンと同様に2万店のネットワークを視野に入れる。店舗数では水をあけられたローソンだが、地方のコンビニとの連携を強化し、他の2社同様に店舗網拡大の戦略を描く。

●3社の営業収益(2017年2月期)/店舗数

  • セブン‐イレブン(コンビニエンスストア事業)……2兆5506億4000万円/1万9979店(17年12月末)

    ・ローソン……6312億8800万円/1万3111店(17年2月末)
    ・ファミリーマート……4844億6100万円/1万7656店(※17年11月末)
     ※ファミリーマート、サークルK・サンクスの合計

人材難のコンビニの待遇は?

政府の働き方改革推進やライフワークバランスの見直しの流れから、24時間営業のコンビニにとって、人材確保は喫緊の課題でもある。待遇条件がキーともなる業界で、各社の有価証券報告書によると平均年間給与は以下の通りだ。セブンとファミリーマートは持ち株会社の形態をとっているため、このデータは実際にコンビニで働く従業員だけの平均給与とは乖離がある。

●「平均年齢(歳)」「平均勤続年数(年)」「平均年間給与」の3社比較

  • セブン&アイ・ホールディングス……44.1/18.5/713万8751円

    ・ローソン ……39.7/12.3/669万4000円
    ・ユニー・ファミリーマートホールディングス……49.6/18.0/666万2679円

コンビニの24時間のオペレーションに欠かせないアルバイトやパートの存在。しかし、時給を引き上げても、なかなか人手が集まらないという悩みが、コンビニのオーナーの間で広がる。ローソンは、こうした人手不足の状況を打破すべく、18年春にも、来店者がスマートフォンで支払いができる無人レジの店舗を、首都圏の店舗で実験としてスタートする。

技術革新がコンビニのオペレーションにも影響を及ぼし始めているが、まだまだアルバイトやパートが支えている部分が多いのが実態だ。気になる各社のバイトの時給だが、渋谷区の笹塚周辺の店舗を比較対象にすると、特に人手不足が深刻な深夜早朝の各社の時給は次の通り。ここでもセブン‐イレブンの時給が頭1つ抜け出した格好となった。

●「時間」「時給」比較

  • セブン‐イレブン……22:00~翌日5:00/1325円

    ・ローソン……22:00~翌日6:00/1198円
    ・ファミリーマート……22:00~翌日6:00/1198円~

利用客囲い込みのポイントプログラムも競争激化

コンビニ各社にとって、ライバルとの競争を勝ち抜くのに必要なのは、魅力ある商品の展開だけにとどまらず、ポイントプログラムでいかにして利用客を取り囲みことができるかどうかにもかかっている。セブン‐イレブンは「nanacoカード」、ローソンは「Ponta」、ファミリーマートは「Tポイント」とそれぞれのポイントプログラムとリンクしている。セブン‐イレブンとローソンは100円(税抜)の買い物でそれぞれのプログラムに1ポイント、ファミリーマートは200円(税込)でTポイントを1つ獲得できる。

それぞれのポイントプログラムの会員数をみると、nanacoが5350万人(2017年2月末)、Pontaは8465万人(17年11月末)、Tポイントカードを過去1年間に利用した(重複を除く)年間利用会員数は6408万人(17年8月末)に上り、各社が利用客の囲い込みをめぐっても激しい攻防を繰り広げている様子が浮かび上がる。

少子高齢化、人口減少に直面する日本で、小売業で生き残れるのはeコマースとコンビニだけともささやかれる声が聞こえる。その両雄の一角ともなるコンビニは、セブン‐イレブンが御三家の中で一歩抜け出している現状だが、激しい切磋琢磨が業界内での覇権争いだけにとどまらず、将来に渡ってビジネスを持続可能なものとする活力源になっているのかもしれない。

文・ZUU online編集部

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