『The Motley Fool Japan』より

アマゾンキラーになりうるか、Shopifyってどんな企業?

2020.8.1
ビジネス・キャリア
(画像=Getty Images、The Motley Fool Japanより引用)
(画像=Getty Images、The Motley Fool Japanより引用)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、eコマースサイトを利用する方が急増しています。

いわゆる巣ごもり銘柄なわけですが、その1つ「Shopify(NYSE:SHOP)」をご存知でしょうか?

米国株でeコマースというとAmazon.co.jpの存在感に圧倒されますが、Shopifyは「アマゾンキラー」、「脱アマゾン」という言葉を生み出すほど注目されている存在です。

本記事ではShopifyの概要や収益源、業績について詳しく解説していきます。

基本情報

まずは、Shopifyの基本情報をご紹介します。
  • 本社…カナダ オタワ
  • 創業者…トバイアス・トビ・ルーク、ダニエル・ウェイナンド、スコット・レイク
  • 創業年…2004年
  • 現在のCEO…トバイアス・トビ・ルーク
  • 上場市場… ニューヨーク証券取引所(シンボル:SHOP)
  • 時価総額…1,073億8,900万ドル(2020年6月25日現在。Yahoo!ファイナンスより)
  • 決算日…12月31日
  • 発行済株式数…1億748万株(2020年6月25日現在。Bloombergより)
Shopifyは、Webベースやモバイルベースのソフトウェアを構築して、eコマースサイトを簡単に作成・設定することができるサービスを提供している企業です。

その他、製品在庫の管理や支払いの処理、発送、分析とレポート機能など、さまざまな機能が付帯しています。

2017年には日本にも参入しており、徐々に企業や個人単位での導入事例が増加しています。

2019年12月31日時点では、約175ヵ国の100万人以上の顧客がShopifyのサービスを利用していることがわかっています。

Shopifyのサービスは3つのサブスクリプションモデルが採用されており、最低月29ドルでeコマースサイトを作成することができます。

かなり低コストなので、ビジネスを始めたばかりのタイミングでも利用しやすいだけではなく、機能も十分なので費用対効果を上げやすくなっているのです。

顧客がeコマースサイトを通じて売上を伸ばしてビジネスを成功させていくと、さらに成長を求めて利用するサブスクリプションプランをアップデートしたり、追加機能としてアプリを購入したりすることがあるため、顧客ビジネスの成功はShopify自身の成功にも直結しているといえます。

Shopifyの収益源2つ

Shopifyの収益源は、大きく分けて以下の2つがあります。
  • サブスクリプションソリューション
  • マーチャントソリューション

サブスクリプションソリューション

1つめは、サブスクリプションソリューションです。

Shopifyが提供するサブスクリプションサービスの月額料金が主な収益となっています。

プランは、月29ドルの「ベーシック」、月79ドルの「スタンダード」、月299ドルの「プレミアム」の3つがあり、顧客の多様なニーズを満たすべく設計されています。

各プランの違いは、クレジットカード決済や取引時の手数料やアカウント数、レポート機能などです。

さらに、上記3プランとは違い年間サブスクリプションで契約する「Shopify Plus」という最上位プランもあります。

取引量が多く規模が大きい企業を対象としており、月額で見ると月2,000ドルと、かなり高めのプランです。

上記3プランでは利用することのできない追加機能やサポートがたくさん付帯しており、allbirdsやNestle、Staplesなどさまざまな企業が「Shopify Plus」を導入しています。

このように複数のプランを用意することで、顧客のニーズが変わってもShopify内でプランを変更してもらい顧客離れを防ぐという効果があります。

顧客のビジネスが成長すればするほどアップグレードしたプランを利用してもらえるため、その分収益も増加するのでShopifyにもメリットがあるのです。

マーチャントソリューション

2つめは、マーチャントソリューションです。

1つめのサブスクリプションソリューションのサービスを補完するもので、各機能の手数料などから収益を得ています。

以下では、マーチャントソリューションにおけるいくつかの機能をご紹介していきます。
  • Shopify Payment:マーチャントソリューションの主な収益源。クレジットカード決済サービス。15ヵ国の顧客のうち約3分の2が導入している
  • Shopify Shipping:米国・カナダ・オーストラリアから発送された注文に利用できる。配送料金の割引や配送ラベルの印刷、配当物の追跡が可能
  • Shopify Capital:顧客の運転資金確保のための、融資をおこなう
  • Shopify POS:Shopifyのeコマースストアと連携したPOSシステム。商品を売り上げると売り上げた分の在庫がストアから差し引かれて、売上金額が自動的に加算される
これらのマーチャントソリューションの機能は、ほかのeコマース企業との大きな差別化を果たしています。

業績

では、Shopifyの業績を見ていきましょう。出典は「財務報告」ページです。

The Motley Fool Japan
(画像=The Motley Fool Japanより引用)

(図1)

図1は、売上高と当期純損失のグラフです。売上高が、年々大きく増加していることがわかります。

成長率が著しく高く、2018年から2019年にかけては47%も売上高が増加しました。

しかし、当期純損失の額はどんどん大きくなっています。

今は、収益基盤の改善や拡大のために継続投資に力を入れているため、利益に転じさせるというフェーズはまだまだ先になる可能性があるようです。

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(図2)

図2は、売上高内訳のグラフです。2019年は、サブスクリプションソリューションが40.7%、マーチャントソリューションが59.3%を占める結果となりました。

2016年以前まではほとんど半々だった比率が、2017年以降はマーチャントソリューションの売上高が逆転する形となってきています。

マーチャントソリューションは他社との差別化には欠かせない存在であるだけではなく、サブスクリプションソリューションを補完する役割を果たしているからこそ、利用者の増加に貢献すると考えられます。

なので、今後も比率は大きくなるでしょう。

ちなみに2019年について、サブスクリプションソリューションでは顧客が増えたことで毎月の定期収入が増加し、マーチャントソリューションでは主にShopify Paymentの支払処理手数料が53.3%も増加しました。

Shopify Paymentは利用地域を拡大したこともあり、なんと普及率は42.1%を誇っています。
 
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(図3)

図3は、売上高と売上原価、粗利益のグラフです。

2017年以降、粗利益率が少しずつ低下している点が気になります。

この2017年というのは、図2で見たマーチャントソリューションの売上高がサブスクリプションソリューションの売上高を逆転した年です。

実は、売上原価がよりかかるのは、近年成長しているマーチャントソリューションの方なのです。

つまり、マーチャントソリューションの成長は、粗利益率の低下要因となります。

マーチャントソリューションのなかでも、Shopify Capitalなど利益率が高めの機能もあるのですが、2019年に関してはShopify Paymentにおける支払い処理コストが増加したため、粗利益率の低下に寄与したと考えられます。

また、現在Shopify Fulfillment Networkという新しい機能を開発中で、フルフィルメントの経験知識を生かすため2019年10月17日にはフルフィルメントソリューション事業をおこなう6 River Systemsを買収しました。

なので、開発コストなどを鑑みても、今後はマーチャントソリューションの粗利益率は低下することが予想されます。

ちなみにサブスクリプションソリューションの粗利益率は高めで、プラットフォーム強化コストやドメイン名登録のためのサードパーティーへの支払い、クレジットカード手数料などが売上原価として含まれます。

ならば「マーチャントソリューションの比率を下げてサブスクリプションソリューションの比率を上げれば良いのでは?」と思ってしまいますが、マーチャントソリューションの存在は粗利益率が低いからといってなかなか切り離せるものではないようです。
 
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(図4)

図4は、営業費用(販売費・研究開発費・一般管理費)のグラフです。

どの費用も、売上高の増加とともに年々増加していることがわかります。

なかでも販売費の多さが目立つかと思いますが、それはShopifyがマーケティングに非常に力を入れているからです。

Shopifyのマーケティングはベンチャー企業から老舗企業までを幅広くターゲットとして、とくにオンラインマーケティングにて認知度を高めています。

オフラインでもショーやイベントなどをおこなっています。

コンテンツマーケティングにも積極的で、ShopifyブログやPodcast(ラジオ)、Shopify Studios、eBooksなどにおいて、潜在顧客を惹きつけるコンテンツ制作もおこなっています。

また、研究開発費においては、とくにマーチャントソリューションにおける機能向上や新機能の追加、プラットフォームの使いやすさの改善などでコストが発生します。

他社との差別化をおこなうためには欠かせないコストなので、黒字化しようとしてすぐに削減できるものでもなさそうです。

Amazon.co.jpや楽天との差別化

eコマース企業というと思い浮かぶのは、Amazon.co.jpや楽天ではないでしょうか。

どちらかというとこれら2社の方が、Shopifyよりもネームバリューとしては大きいと思います。

しかし、このネームバリューの大きさが仇となり、Shopifyのように自社流でeコマースサイトを作成して製品を販売することができるプラットフォームに移行する企業がどんどん増えていています。

みなさんも、Amazon.co.jpや楽天でネットショッピングをすることがよくあるかと思いますが、その際自分が利用した店舗の名前やイメージを覚えている方は少ないのではないでしょうか?

それもそのはずで、Amazon.co.jpや楽天のeコマースサイトに各店舗が出店している状態のため、消費者は各店舗でショッピングをしているというよりもAmazon.co.jpや楽天でショッピングをしているという感覚が強くなってしまいがちです。

なので、各店舗のブランドイメージを消費者になかなか伝えにくく、リピーターが増えにくいというデメリットがありました。

しかし、Shopifyを利用して店舗のブランドイメージを最大限伝えられるようカスタムすれば、直販サイトで消費者がショッピングするという形をとることができるため、リピーターを確保しやすくなるのです。

しかも低コストなので、かなり小規模な企業であっても比較的一歩を踏み出しやすいサービスになっているかと思います。

このようにShopifyは、Amazon.co.jpや楽天のデメリットを改善した差別化サービスとして台頭し、ときには「アマゾンキラー」と呼ばれるほど。今後もさらに普及していくのではないかと考えられます。

新型コロナウイルス感染症の影響は追い風に

新型コロナウイルス感染症の影響で小売業や飲食業の実店舗の営業が制限されたことで、多くの企業がeコマースサイトを開設し拠点を移行するという大きな動きがありました。

とくに注目を集めたのがShopifyで、新型コロナウイルス感染症の影響は大きな追い風になったといえます。

出店する顧客が増加することはもちろん、消費者も外出自粛を余儀なくされているため購買行動がeコマースサイトを利用したショッピングに移行しているようです。

今回の新型コロナウイルス感染症をきっかけにeコマースサイトでの販売を経験したことで、経営者はこの形態をより意識するようになったと考えられます。

新型コロナウイルス感染症が収束し、顧客店舗の売上高が回復すればShopifyは継続的に恩恵を受けることができるのではないでしょうか?

まとめ

本記事ではShopifyについてご説明してきました。

eコマース市場は、時代とともに今後もどんどん成長していく見込みです。

なので、Shopifyの事業機会はまだまだ拡大する余地があるといえます。

赤字が継続している点が気になりますが、まだまだサービスを成長させて収益基盤を改善・拡大するフェーズにあるため、しばらくは利益率よりも売上高や利用者数の増加に焦点を当てていくと考えられます。

Shopifyへの投資を検討している場合は、長期的な視野でタイミングを探ってみるのが良いのではないでしょうか。

文・タナカチアキ/提供元・The Motley Fool Japan

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