本国内では東京の若年層を中心に4日連続で1日あたりの新規感染者数が100人を超え、予断を許さない状況が続いています。

海外でも、感染拡大に歯止めがかからず、失業者が増加するなど深刻な問題を抱える国や地域が少なくありません。

一方、一部地域では観光客の受け入れが再開されたり、ワクチン供給に向けた動きが進むといった、明るいニュースも出てきています。

この記事では、6月27日から7月3日ごろまでの世界各国の動きについてまとめてご紹介します。

目次
【アジア】韓国で国内旅行人気、インドでワクチン生産参入

【北・南米】アメリカで1日当たり感染者数が過去最多、ブラジルで失業者増

【オセアニア】オーストラリアのメルボルンでロックダウン

【ヨーロッパ】イギリス・ドイツの一部地域でロックダウン、EU域外からの入国制限緩和

その他:WHO、ウイルスの起源調査団を中国に派遣

【アジア】韓国で国内旅行人気、インドでワクチン生産参入

アジア圏の新型コロナウイルスに関する動向を紹介します。

韓国: ソウル以外でも感染が拡大、国内旅行の人気高まる

【感染拡大】

7月2日、韓国の新型コロナウイルス感染者数は前日から63人増の1万2,967人、死者は282人となりました。

それまでソウルを中心に感染者が増加していましたが、約2か月ぶりに他の都市がソウルを上回るペースで感染が拡大しています。

光州市では数日間で50人以上の感染者が確認され、博物館や図書館などの公共施設が閉鎖されました。

集団感染が発生している首都圏でもソウルや京畿道を中心に感染者が増加しており、海外からの入国者の感染確認も続いています。

ソウルの日本大使館前で長年行なわれてきた市民団体の集会も、新型コロナウイルス感染拡大の防止を理由に全面的に禁止されました。

中央防疫対策本部の鄭銀敬(チョン・ウンギョン)本部長は、秋に新型コロナウイルス感染症の流行が拡大する可能性があるという懸念を示し、人員や装備に対する支援を求めるほか、国民が防疫指針を徹底的に順守する努力が必要だと強調しました。

7月3日には、新型コロナウイルス対策の自主隔離を守らず無断外出を繰り返したとして、感染症予防法の違反に問われた日本人男性に、懲役6か月が求刑されました。

【国内旅行人気】

新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外渡航が困難な中、韓国では済州島などを中心に、国内旅行の人気が高まっています。

国際便を休止せざるを得なくなった韓国の航空各社は、ソウルや釜山と済州島を結ぶ路線を増便し、航空運賃が下落しています。

中には片道運賃が5,000ウォン(約450円)台まで下がる便もあるほどで、5月初旬の大型連休には、ソウル・済州島間の航空路線は搭乗率が80%を超えました。

観光目的は、グルメに続いて、自然景観鑑賞やトレッキングなどの人混みを避けるレジャーに人気が集まっています。

オンライン宿泊予約サイト「Booking.com(ブッキングドットコム)」が分析したコロナ後に訪問したいウィッシュリスト(お気に入り)の宿泊情報によれば、韓国人の旅行先の人気は、国内に続きインドネシア、タイ、日本と続いています。

中国:コロナと季節性インフルエンザの同時流行に警戒、検査体制の整備必要

6月29日、中国農業大学の研究チームは、豚インフルエンザのウイルスが人に感染した例に関する論文を米国科学アカデミー紀要(電子版)に発表しました。

ウイルスは2016年以前に発見されたもので、養豚場の従業員に感染者がいたということです。

豚や鳥など動物のインフルエンザが人に感染することは珍しくなく、人から人への感染が起きなければ広がらないため、専門家はすぐさま流行することはないと見ています。

一方で専門家は、毎年1,000万人規模の患者が出る季節性インフルエンザとの同時流行をより警戒しています。

インフルエンザと新型コロナウイルスの症状は似ているため、判別には検査が必要になります。

病院が診療を拒否する事態も懸念され、検査体制の整備が求められます。

台湾:陰性証明書の検査実施日条件緩和

7月2日、台湾の中央感染症指揮センターは、台湾に渡航する外国人に求める新型コロナウイルスの陰性証明書について、検査実施日の条件を「搭乗の3日前以内」から「搭乗の3営業日前以内」に変更したことを発表しました。

休日が搭乗日となる場合、証明書の取得が難しいという声に対応したものです。

台湾は6月29日から外国人に対する入境規制を緩和し、英語版の陰性証明書の提示や入境後の14日間の在宅隔離を条件としたうえで、観光や就学以外の目的での訪台を認めています。

指揮センターは、現段階では陰性証明書に関するさらなる緩和措置は検討していないとしています。

タイ:1日からバーなど営業再開、自国生産目指しワクチン開発進む

6月29日、タイ政府は、バーやパブ、カラオケ店、ゲームセンターなどの営業禁止を7月1日から解除することを決定しました。

営業再開後は、ソーシャルディスタンスや新型コロナウイルス追跡アプリ導入など、感染防止のための規則順守が義務付けられます。

また新型コロナウイルス感染症対策で、新学期の開始が5月16日から延期されていましたが、7月1日に新学期が始まります。

さらにタイ政府は、日本・中国・韓国・香港・シンガポールを対象に、7月1日から入国規制を段階的に緩和すると発表しました。

【ワクチン開発】

タイは新型コロナウイルスのワクチンの自国生産を目指しており、チュラロンコン大学のプロジェクトでは、10月にも人への試験を開始できる可能性があるということです。

臨床試験の段階に入ることができれば、先進国以外では初のケースとなります。

3段階の臨床試験が全て成功すれば、タイでワクチンを生産し、近隣諸国や他の低中所得国に提供するため供給を拡大する可能性があるということです。

インド: ワクチン生産で世界最大手のセラムが参入

ワクチン生産世界最大手である、インドのセラム・インスティチュート・オブ・インディアが、新型コロナウイルス向けのワクチン開発に参入することが分かりました。

セラムは、イギリスのオックスフォード大学と製薬大手アストラゼネカが、9月の実用化を目指して治験を進めているワクチンの生産を担当します。

アルトラゼネカは5月に発表した10億回分の生産を倍増する予定で、上乗せの10億回分の生産をセラムが担うことになっています。

セラムはインドのほか、アジアやアフリカなどの新興国向けに主に供給するものとみられます。

セラムは低価格でのワクチン生産に強みがあり、新型コロナウイルス向けワクチンについても、大幅に割安になる可能性があります。

ワクチンの価格は1回あたり1,000ルピー(約1,400円)程度を見込んでいるということです。

モルディブ:観光客の受け入れ再開

インド洋の島国であるモルディブは、新型コロナウイルス感染拡大を受けて3月から観光客の受け入れを停止していましたが、7月から受け入れを再開する予定です。

当初予定していた2020年末の再開から大幅に前倒しするもので、7月から国際空港への到着便を受け入れ、段階的に再開を進めていくこととしています。

再開後の安全を確保するため、モルディブ政府は、観光施設に担当医の登録や個人防護具の備蓄などを求めており、条件を満たした施設に免許を出す方針です。

観光客は免許のある施設への予約が義務付けられ、さらに入国から少なくとも14日前に受けた新型コロナウイルス検査の陰性証明書の提示が求められます。

【北・南米】アメリカで1日当たり感染者数が過去最多、ブラジルで失業者増

北米から南米の新型コロナウイルスに関する動向を紹介します。

アメリカ:1日当たりの感染者数が過去最多

7月1日、アメリカでは、新型コロナウイルスの感染者数が1日当たり5万655人となり、初めて5万人を超えて過去最多を記録しました。

感染者の増加は、南部テキサス州やフロリダ州、西部カリフォルニア州のほか、中西部の州にも拡大し、感染拡大が深刻になっています。

アメリカ全体の6割の州で、新たな感染者数が増加し、少なくとも17の州が、6月30日までに経済再開の休止や営業制限を決めたとされています。

7月4日のアメリカ独立記念日の週末は、多くの人が休暇を取り、各地が混雑することが懸念され、カリフォルニア州は7月3日から6日にかけて、ロサンゼルスなどのビーチを閉鎖することを決めました。

【ニューヨーク州】

6月30日、全米最大の感染地となったニューヨーク州のクオモ知事は、新たに8つの州からの訪問者に14日間の自主隔離を義務付けると発表しました。

前の週に対象となっていたアラバマ、アーカンソー、アリゾナ、フロリダ、ノースカロライナ、サウスカロライナ、テキサス、ユタの8州に加え、カリフォルニア、ジョージア、アイオワ、アイダホ、ルイジアナ、ミシシッピ、ネバダ、テネシーの8州が新たに自主隔離の対象となった形です。

これらの16の州から帰宅するニューヨーク州民も対象で、違反すると罰金が科せられます。

さらに7月1日には、ニューヨーク市で7月6日に予定していた店内飲食の再開が延期されることが決定しました。

テキサスやフロリダ州などの他州で、店内飲食による感染拡大が発生していることが理由で、飲食店の雇用や経営を守るため、6月22日に再開した屋外営業の拡大に向け、路上利用などを促進する方針です。

【マスク着用】

アメリカのゴールドマン・サックス・グループは、アメリカ全体でマスク着用を義務付けることで、再度のロックダウン回避に寄与する可能性があると指摘しました。

再びロックダウンが行われれば、アメリカの国内総生産(GDP)は5%近く落ち込むとしています。

米疾病対策センター(CDC)は、4月24日に示したガイドライン上で、外出時のマスク着用を推奨しています。

ゴールドマンは全国でマスク着用が義務付けられれば、着用率は現在より15ポイントアップし、1日の感染増加率を今より1ポイント押し下げた0.6%にできるとしています。

グアム:日本・韓国・台湾からの観光客受け入れを延期

グアム政府は、7月1日から再開を予定していた、日本・韓国・台湾からの観光客受け入れについて、延期することを発表しました。

6月26日時点で、グアム島内での新型コロナウイルス感染者数は248名で、死者は5名となっています。

観光客受け入れ延期の判断は、直近のグアム島内での感染者数増加により、島民と来島者の安全を最優先する方針によるもので、外国人渡航者に対する14日間の強制隔離と検査が継続されます。

ハワイ:8月から14日間の自己隔離免除

アメリカのハワイ州は、8月1日から、新型コロナウイルスの陰性証明提示を条件として、州外からの旅行者に対して到着後14日間の自己隔離を免除する「事前検査プログラム」を実施します。

リスクを最小限に抑え、ハワイへの旅行を安全に再開するために、14日間の隔離に代わる新たな措置を取るものだとしています。

免除には、到着する72時間以内の検査が必要で、到着後も検温や健康フォームへの記入を求められます。

州外からの全旅行者が対象とされており、プログラムの詳細は追って発表される予定ですが、空港到着時にPCR検査と提供することはないということです。

カナダ:最悪期脱し、第2波にも備え

6月29日、カナダのトルドー首相は、国内の新型コロナウイルス感染状況について、最悪期を脱したとの見方を示しました。

一方でアメリカなどで再び感染が拡大していることから、経済再開にあたって引き続き警戒する必要があるとしています。

カナダ政府はこれまで、国内総生産(GDP)の約7%にあたる1,600億カナダドル(1,170億米ドル)規模の対策を打ち出してきましたが、年内に国内で感染の第2波が起きた場合には、対策を講じる財政的な余裕があると述べました。

アメリカとカナダは、7月21日まで両者間の不要不急の渡航を禁じており、トルドー首相は7月21日以降に取るべき対策について検討中だと説明しました。

ブラジル:感染拡大で失業者増加

6月30日、ブラジル政府は、3~5月期の失業率について、2~4月期に比べて0.3ポイント増の12.9%だったと発表しました。

新型コロナウイルスの感染拡大により失業者が増加し、雇用者数の減少幅は過去最大を更新しました。

感染拡大の影響による解雇が相次いだことに加えて、倒産による失業も増えたとみられ、就労者は労働人口の49.5%と半数を下回っています。

失業率は約2年ぶりの高水準となり、ブラジル政府は3か月にわたり月600レアル(12,000円)を失業者などに支給する緊急支援策を、さらに2か月延長すると発表しました。

【オセアニア】オーストラリアのメルボルンでロックダウン

オセアニアの新型コロナウイルスに関する動向を紹介します。

オーストラリア:メルボルンでロックダウン、景気後退も課題に

オーストラリアのビクトリア州は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、メルボルン周辺を対象として、4週間のロックダウンを実施すると決定しました。

オーストラリアでは死者を100人強に抑え込み、新型コロナウイルスの封じ込めに一定の成功をおさめました。

一方で、感染防止のため海外との往来を停止したことで、成長を支えてきた「観光」「教育」「移民」の3本柱が打撃を受け、深刻な景気後退(リセッション)が課題となっています。

過去最長を記録していた景気拡大局面から一転し、失業率は19年ぶりの高水準となる7.1%に跳ね上がりました。

ロックダウンの解除は当初の想定より前倒しとなったものの、第1四半期の成長率はマイナス0.3%に落ち込み、景気回復までは長い道のりになるとみられます。

【ヨーロッパ】イギリス・ドイツの一部地域でロックダウン、EU域外からの入国制限緩和

ヨーロッパの新型コロナウイルスに関する動向を紹介します。

イギリス:レスターで再ロックダウン、経済再建のためインフラ投資計画を発表

【レスターで再ロックダウン】

6月29日、イギリス政府は、中部の都市レスターで再びロックダウンを行うと発表しました。

レスターでの新型コロナウイルスの感染率が、他の都市を大幅に上回っているためで、地域限定のロックダウンによる感染拡大の抑え込みはイギリスでは初となる取り組みです。

イギリスでは全国的にロックダウンを段階的に緩和しており、必需品以外の小売店の営業再開を認め、7月4日からさらなる緩和を予定していました。

しかし過去1週間の全国の感染者のうち10%を占めるレスターでは、緩和は適用できないとして、必需品以外の小売店や学校の再度のロックダウンが命じられました。

市内での移動や、他地域との間の移動も控えるよう求められています。

【経済再建目指しインフラ投資計画打ち出す】

6月30日、イギリスのジョンソン首相は、新型コロナウイルスによって打撃を受けたイギリス経済を立て直すため、インフラ投資計画を打ち出すことを発表しました。

特に貧困地域に長期的な投資を行う意向で、道路や学校、病院への投資を加速するとしています。

投資規模は50億ポンド(約6,680億円)で、経済再建のための具体的な政策は、スナク財務相によって7月8日に打ち出される予定です。

イタリア:旅客機内の頭上の棚への収納を禁止

国内で初の新型コロナウイルス感染者が確認され、感染が拡大したイタリア北部の町ヴォーで行われた大規模な検査の結果、感染者の40%が無症状だったことが分かりました。

人口約3,200人の町ヴォーは、最初の感染者を確認後、2月21日から町全体を14日間封鎖し、その間ほぼ全ての住民に2回の検査を実施しました。

いずれの検査においても、陽性者の約40%が無症状でしたが、症状の有無によらず感染者は隔離され、ヴォーでの感染は数週間以内に収束しました。

ヴォーの事例は、無症状患者を特定したり隔離することが、大規模な感染拡大を阻止するために重要である可能性を示唆しています。

またイタリアの民間航空局(ENAC)は、イタリアを発着する旅客機の乗客は、機内に持ち込む手荷物を頭上の棚に収納できないという新しい規則を決定しました。

乗客が頭上の棚の上に手荷物をしまう時に生じる混乱によって、遅延や行列が発生し、新型コロナウイルスの感染リスクが高まることを防止する効果が期待されています。

前の座席下に収納できる程度の大きさの手荷物のみ、機内への持ち込みが認められ、貨物室にスーツケースを預け入れる場合に追加料金を支払う必要はないということです。

ドイツ:食肉工場の集団感染を受けたロックダウンを1週間延長

6月29日、ドイツ西部ノルトライン・ヴェストファーレン州のラシェット首相は、食肉工場で新型コロナウイルスの集団感染が確認されたギュータースロー郡で、ロックダウンを1週間延長すると発表しました。

感染拡大は抑制されましたが、予防措置として映画館やジム、プール、バーなどの閉鎖を継続するということです。

ギュータースロー郡に隣接するヴァーレンドルフ郡では、感染者数が少ないことから6月30日にロックダウンを解除するとしました。

両郡では、食肉工場で1,500人以上の従業員が感染し、従業員の家族や工場と無関係な人も感染が確認されたことから6月23日からロックダウンが再導入されていました。

また、同州では、100人以上の従業員がいる食肉加工会社に対して、7月1日から全従業員に週2回のウイルス検査を実施することを義務付ける方針も示しました。

EU:日本含む14か国からの入国制限緩和

7月1日、EUは域外14か国から観光目的の渡航の受け入れを開始しました。

「安全国リスト」にリストアップされている国が対象で、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染率がEUと同程度またはEUよりも低い国となっています。

オーストラリアやニュージーランド、カナダ、韓国などと並んで、日本も対象に含まれています。

その他:WHO、ウイルスの起源調査団を中国に派遣

6月29日、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、新型コロナウイルスの起源を突き止めるための調査団を、翌週に中国に派遣すると発表しました。

ウイルスはコウモリから、ヘビやアナグマ、タケネズミなどの食用動物を媒介して感染した可能性が指摘されている一方、アメリカのトランプ大統領は、ウイルスが武漢市の研究所から流出したという説を主張し、中国やWHOの対応を批判しています。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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