7月1日、LINEは11年続いたキュレーションサイト「NAVERまとめ」を、9月末に終了することを発表しました。

これまで、NAVERまとめ内のコンテンツに対し、著作権の侵害が指摘されてきました。今回のサービス終了には、6月5日に成立した改正著作権法が影響しているのではないかともいわれています。

今後もインターネット上の著作権を保護するための対策は強化されていくものとみられますが、一方でアジア地域を中心に、日本のコンテンツの海賊版が今も多く流通しています。

目次
NAVERまとめがサービス終了
改正著作権法とは?

海外向けのコンテンツを保護するには

7月1日、LINEはキュレーションサイト「NAVERまとめ」について、9月30日に終了すると発表しました。7月31日に新規会員登録が停止され、9月30日には全記事の閲覧ができなくなります。

2009年にサービスが開始されたNAVERまとめは、まとめサイトの草分けとして知られており、様々な分野の情報が記事にまとめられています。会員登録すれば誰でも記事を作成することができ、作成者はアクセス数に応じて報酬を得られる仕組みです。

NAVERまとめは、手軽に時事ニュースや流行りものを知ることができる一方で、他のサイトからの写真や画像の無断転用が発覚するなど、著作権を侵害しているのではないかと指摘されてきました。

今回のサービス終了についても、明言はされていないものの、6月5日に成立した改正著作権法の影響もあったのではないかといわれています。

LINEグループはNAVERまとめの終了について、全体の事業の選択と集中を踏まえた上での判断で、今後はメッセージアプリ・LINE内の検索サービスに注力していくとしています。

改正著作権法とは?

改正著作権法は、2020年6月5日に可決・成立した法律で、2021年1月1日に施行されます。

同法は、インターネット上に無断でアップロードされた著作物を違法と知りながらダウンロードする行為を全面的に違法とするものです。

これまで違法としていた音楽や映像だけでなく、マンガや書籍、論文、ソフトウェアプログラムなど全ての著作物に適用範囲が拡大されます。

改正著作権法の成立には、インターネット上の海賊版サイト・コンテンツへの対策を強化する狙いがあります。

海外向けコンテンツの海賊版の現状

国際的な文化交流が盛んになる中で、特にアジア地域において映画や音楽、アニメ、ゲームソフトなど日本の著作物の海賊版が後を絶ちません。

正規品は関税や輸送費などがかかる分高価になるのに対し、正規品をコピーして作られる海賊版は、パソコン1台あれば作成でき、価格を抑えられるため、正規品より大幅に安値で取引されます。

例えば中国では、プレイステーション用のゲームソフトが正規品の1~2%程度の価格にあたる75~150円程度で、アニメDVDが正規品の1割程度にあたる75~375円程度で販売されるなどの事例がみられています。

さらにシンガーソングライターの宇多田ヒカルさんや歌手の浜崎あゆみさんなど、所属会社の異なるアーティストのヒット曲を集めたアルバムが、200円前後で販売されている事例もあります。

韓国でも、プレイステーション2のゲームソフトが、正規品の3割程度にあたる2,500円前後で販売されています。

また、ネット上でのデジタルデータの違法利用も多く報告されています。映画館で上映された「千と千尋の神隠し」など人気の日本映画をビデオカメラで収録し、ネット上でファイル交換するといった行為が東南アジア地域などで行われているようです。

最近では著作権への理解が広まりつつあり、海賊版を避ける傾向がみられる一方で、安ければ品質を問わない消費者も多く、海賊版の流通が止まらないのが現状です。

海外向けのコンテンツを保護するには

では、海賊版が流通する中で自社の海外向けコンテンツを保護するためには、どうすれば良いのでしょうか。

特に海外で人気のある漫画やアニメなどのコンテンツでは、海賊版の流通を完全に防ぐことは難しいといえます。まずは以下のような関連する法律を理解し、著作権が侵害された際の対応を事前に考えておくことが重要です。

海外では、例えば日本国内のみを対象としている特許権や商標権などは適用されないものの、国境を超えて利用される著作物は「ベルヌ条約」と「万国著作権条約」によって国際的に保護されています。

1886年に創設されたベルヌ条約は177か国、1952年に創設された万国著作権条約は100か国が加入しており、日本は両方の条約に加入しています。エチオピアやイランなど一部の国は加盟していないものの、加盟国との取引であれば、著作権は日本国内と同様に保護されるといえます。

ただし、国によって「著作権がある」と判断される基準は異なる場合もあります。また、先述の通り中国や韓国、東南アジアなどでは、条約に加盟しているにもかかわらず海賊版が横行しています。特にターゲットとなる国の著作権法や、海賊版の流通状況、そして考えられる対策については、よく調べておく必要があるでしょう。

過去には著作権をめぐる国際的な訴訟で、実際に日本が勝訴した事例もあります。

2012年には、人気マンガ「クレヨンしんちゃん」を発行する双葉社が、中国で「しんちゃん」の著作権をめぐって勝訴しました。また、2020年3月には、「ウルトラマン」シリーズの著作権をめぐるアメリカとの裁判で、円谷プロダクションの勝訴が確定しました。

こうした著作権の侵害への対応事例が積み重なることで、海賊版を公開するメリットを少なくさせ、海賊版の市場を徐々に縮小させていくものと考えられます。

海外の著作権侵害に関する動向や関連する法律に対して、高い感度でアンテナを張っておくことは、トラブルを感知するタイミングを早め、自社の海外コンテンツを保護することに役立つでしょう。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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