イトーヨーカドー中国は4月上旬、新しく「伊藤電商APP」を正式に公開した。

中国の伝統的な実体店舗小売業の中にあって、自前のネット通販を構築しようとする例は、決して少数ではないが、成功している業者は少ない。これはイトーヨーカドー中国にもあてはまる。

これまでの通販サイト「伊藤洋華堂網絡超市」は、その典型だったと言えるかもしれない。今月公開した「伊藤電商APP」は再挑戦ということになる。

しかしサービスは四川省・成都市周辺にしか及ばない。これでアリババ(総合ネット通販首位)や京東(同2位)の多様なサービスにどう対抗できるのだろうか。ニュースサイト「新浪」がイトーヨーカドー中国の“内憂外患”と題して伝えている(1元=17.03日本円)。

イトーヨーカドー中国の歴史

イトーヨーカドー(現セブン&アイ・ホールディングス <3382> )は1996年に成都、翌年は北京に合弁子会社を設立した。そして98年には北京に十里堡店を、2003年成都に春熙店と双楠店を開店し、この2地区におけるチェーン化を目指した。

成功したのは成都のほうだった。2010年ごろ、イトーヨーカドー全店における売上1位~4位の店舗は、成都の4店舗である、といわれていた。現在7店舗を運営し、2017年の売上は約850憶円(50億元)に達している。双楠店は、今でも全イトーヨーカドーのナンバーワン店舗だ。

これに対して北京では、標準化せずに多店舗化したため、業績は伸びずじまいだった。競合も厳しかった。閉店が続き、亜運村店1店舗だけが残っている。2017年4月“離京”の噂を否定して以降、ニュースは聞こえない。

ネット通販への取組み

このようにイトーヨーカドー中国の実質は、成都市に密着した地域小売業である。2008年の四川大地震を共に乗り切った経験から、市民の信頼は厚く、好感度も高い。その成都伊藤洋華堂は、2009年にサイトを開設し、オンライン業務を始めた。

2017年11月、その「伊藤洋華堂網絡超市」の運用を停止し、新しいサイトに移行すると発表した。うまくいかなかった、と率直に表明したわけである。この間、ネット通販首位のアリババは、どうしていたか。

アリババは、2009年に初めて11月11日の独身の日セール(双11)を仕掛けた。この年の売上は5000万元だった。それが2017年の11月11日には、1682億元を売り上げた。3364倍に成長したのである。ネット通販には大きな成長空間がひそんでいた。本気で取り組んだ者と、片手間でやっただけの者との差が如実に表れている。

新しい「伊藤電商APP」はどのような内容なのだろうか。商品量を豊富にして、かつ実体店の商品に限定していない、ということである。単なる成都伊藤洋華堂のネットスーパーではない。しかしこれで何を目指しているのだろうか。店舗外の商品で、総合ネット通販に太刀打ちできるのだろうか。

自前主義の罠

なぜ自前のサイトにこだわるのか。これに対し関係者は、成都伊藤洋華堂の品質に対する信認を得るため、ネット通販に慣れた新時代の消費者を取り込むため、などの点を挙げている。しかし取材した中国人記者によれば、新サイトのデジタル化は、限られたものに過ぎず、とくに目新しさはないという。

一方、「盒馬鮮生」「毎日優鮮」「ウォルマート+京東到家」などの新勢力は、生鮮を中心に、3キロ以内30分~2時間のクイックデリバリーを競っている。さらに中国全土の24時間配達も目標だ。これらが今のO2O小売り融合の焦点である。

他社の先進的な取組みからすれば、「伊藤電商APP」はグレードアップとはいっても、ただアイテムが増えただけのように見える。デリバリーの足腰はどうなっているのか。

これに対し、北京・天津、山東省、広東省を中心に出店するイオン<8267>は、京東のデリバリーシステム「京東到家」と提携することにした。成果は上がり、2018年には中国最大のSNS「微信」とも提携を深めるという。自前主義のデリバリーにこだわらないことにしたのである。

自前主義デリバリーの限界は最初から明らかなように見える。それでも社内が納得しているのだからそれでいい、という日本企業にありがちな罠に陥っているようにも見えるのだが、これはすこしうがちすぎだろうか。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

文・ZUU online編集部

 

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