コミュニケーションのプロが「苦手な人の攻略法」を伝授

多くの合格者を輩出したマンツーマン指導のCA就職予備校「クルーアンドキャリアズ」の設立者であり、その教育方法を企業研修の場でも活用し大きな成果を出している「コミュニケーションのプロ」である美槻はるか氏。研修を受講した企業では離職率が50%減少したり、ランキングサイトで接客部門1位を受賞したりといった目に見える成果が出ている。

だが、筆者は、実はCA転職受験32回目でようやく合格、入社してからも「コミュ障」の性格から苦労続きだったという。そんな中で最も苦労し、そしてのちに最も役立ったのが、「苦手な人との付き合い方」だったという。同じ悩みを持つ人へ、狭いCAの世界をうまく潜り抜けてきたコツを語ってもらう。

自分と合わない人が多い時代特有の悩み

「この人、なんでこんな言い方するんだろう」「この人、ホント苦手」「この後輩、なんでこんな態度取るんだろう」。

皆さんも仕事の中で、上司や先輩、さらには後輩に対してもこのような気持ちになることが多くあると思います。

最近では、ダイバーシティの時代と言われ、上司が役職定年で自分の部下になったり、理解不能な若者がいたりと、今までの自分の価値観とは違う関係性で働かざるを得ない環境に置かれているのではないでしょうか。取引先の担当者も異動や退職によりコロコロ変わり、毎回イマイチかみ合わない。そんな気持ちになったこともあると思います。

コミュニケーション・アドバイザーを名乗る筆者も、実は過去には苦手な人が多く、そのような人を避けるタイプでした。自分の性格に合わない人はシャットアウトし、関わりたくないと何度も思っていました。

接客業を長く続けていても苦手だったたった一つのこと

現在、筆者は法人向けのコミュニケーションについての企業研修講師として登壇しています。過去には客室乗務員として様々な方とフライトする仕事をしていました。ブリーフィングと言われる朝のミーティングで、同じ便に乗務するメンバーの顔と名前を初めて知ることも珍しくない状況です。

接客のプロと言われるCA業務。コミュニケーションの力が問われるところ。学生時代から長く接客業に携わっていたこともあり、CAの仕事に就いても大丈夫だろうという自負がありました。

しかし入社後、筆者はCA業務にとって一番大切な点を軽視していたことに気付くのです。

コミュニケーションの相手はお客様だけではなかった

当時、超人見知りの筆者。接客業に就いたのも、「自信のない自分を変えたい、接客業をしていると明るい自分を演じられる」という理由があったのも事実。

CAの場合、初めて会うチームメンバーと力を合わせてフライトをするということは、コミュ障の筆者にとってはこれでもかというくらいにハードルの高い環境。つまりCA職においてコミュニケーションを取ることは「対お客様」だけの話だけではなく、「対CA仲間」のほうがむしろ大事だったのです。

積極的でも受け身でも通用しないリアル

実際に起きたフライトでの話です。

チーフパーサーのAさんは、CAの台所と言われるギャレーについて強いこだわりのある方。

基本的に、CAは機内に到着するとそれぞれ定位置に荷物を入れ、安全確認をし、各担当業務の準備にかかります。この日は、本来なら筆者がギャレーの準備担当。しかしながら、Aさんはギャレーのセッティングに自身のスタイルがあるため、触らないでよいと言うのです。

搭乗時刻も迫っている中、パイロットとの打ち合わせもある多忙なチーフパーサーに細かい作業をさせる時間はもったいない。「Aさん、私、やりますよ」 と伝えたところ、「いいの!余計なことしないで!」 とのこと。

それと対極だったのが、機内中央エリア担当の先輩CAのBさん。

筆者は指示を受ける業務担当でのフライトだったのですが、機内に入り搭乗準備に取り掛かるも、のんびりゆっくりとお茶を飲んでいるご様子。(あれ?準備作業は大丈夫なのかな……)と感じ、「Bさん、〇時にお客様の搭乗開始ですが機内販売の搭載在庫チェックって終わっていましたっけ?」 「あっ、そうだ! ごめん、一緒に見てもらっていい?」という回答。

仲間の動きを瞬時に見定めろ

CAは毎回違うメンバーでフライトすることは皆さんもご存知の通りです。言うならば、毎回新しいスタッフとチームを組むようなもので、かなりレアな環境。数千人いるメンバーとコミュニケーションを取り、お客様のためにカイテキなフライトを創るためにはどうしたらいいのかと、筆者は毎回乗務を重ねるごとに考えるようになりました。

機内のお客様はCA同士の関係性に敏感で、「今日のあのCAさんって怖いんでしょ?」 などと質問が挙がるくらいギスギスした雰囲気の時もあり、さらに冷静に分析するようになりました。

たった3点を意識するだけでコミュ障改善

そこでまず筆者は、確実な突破口を考えました。

1つ目に、あえて名前で呼ぶこと。

2つ目に、当然、笑顔で近寄ること。

3つ目に、質問すること、教えを乞うこと。

この3点を実践できるタイミングというと、ブリーフィングの前のショウアップと言われる出勤の際。顔写真付きの名簿から、相手の顔と名前を事前リサーチ。もちろん朝から笑顔の練習は万全に。

苦手な先輩CAが出社してきた時には、さりげなく明るく近寄りご挨拶しておきます。乗務便の情報やお天気の話をしながら、さらにステイ先の情報やお土産話などの質問をし、ある程度の関係性を作っておき、どんな価値観やタイプの人なのか予想しておく……そんな些細なことが、フライトの時のスムーズな業務に大きく直結することがわかってきたのです。

そこから、自分の本来の性格やキャラより、初めて会う人のタイプや仕事の価値観に合わせて演じ、行動していったほうが生産性が上がるのではないか、という結論に至りました。

自分はテキパキ仕事をすることがよかれと思っていたが、そう感じない人に対しては先回りせず、毎回確認し、必要な時だけ自分がフォローする。それぞれの動きやキャラ、発言を観察し行動できるようになったことで、どんなメンバーとのフライトもスムーズにこなせるようになったのです。

必要なキャラを演じると見えてくる選択肢

今、改めて考えてみると、筆者にとってコミュニケーションとはCAの日常業務そのものだったと思います。

自分のキャラを変え、動きを変え、生産性を上げていく。個の時代とは言うものの、結局はチームメンバーとのコミュニケーションなくしてはCAの仕事は成り立たず、お客様へのサービスにも反映される。どんな仕事でも大事なそのことを、一番理解できた環境だったと思います。

皆さんも、これから様々な背景や価値観の人との業務が増えてくる中で、自分が苦手だと思う人に出会った場合、本来の自分の性格を一旦切り離し、冷静に相手を分析した上で、今回の3つの方法をぜひ実践してみてください。

その後、今回の業務のゴールはどこであり、そこを目指すためには他人と上手く関係性を創りどんなキャラを演じる必要性があるのかと、先の目標にフォーカスしてみてください。そうすることで、最短であなたの苦手な人とも上手く付き合えるようになりますよ。

美槻はるか
クルーアンドキャリアズ代表取締役
大阪府出身。ホテルコンシェルジュを経て、日系航空会社の客室乗務員(CA)として国内線・国際線に乗務。これら接客の経験を活かし、現在はコミュニケ―ション、ホスピタリティを中心テーマとした研修・講演を数多くこなす。年間登壇数は500回以上、指導人数は1000名を超える。大阪人ならではの高いコミュニケーション力を活かしたアクティブラーニング形式での講義を実施。地方公共団体からエンタメ業界まで即現場で使える内容として、全国にて好評を得ている。(『THE21オンライン』2020年03月31日 公開)

提供元・THE21オンライン

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