『ZUU online library』より

「年収200万円時代」に突入しつつある日本

2020.5.23
BUSINESS
(画像=ZUU online libraryより引用)
(画像=ZUU online libraryより引用)
(本記事は、前川孝雄氏の著書『50歳からの逆転キャリア戦略 「定年=リタイア」ではない時代の一番いい働き方、辞め方』PHP研究所の中から一部を抜粋・編集しています)

「年収200万円台では生きていけない」は本当か?

大手企業で働く40代の年収は下がる一方

大企業で働くミドルが、第二、第三の職業人生を考える場合、まずリセットしなければいけないのが収入に対する考え方です。今のような恵まれた収入を得るのが当たり前だと考えていると身動きが取れなくなってしまいます。

恐らく、今、大手で働いているミドルに言わせれば「恵まれているなんてとんでもない。入社した頃の課長、部長なんて相当もらっていたし、経費も使いたい放題だった。そんなおいしい思いをして逃げ切った彼らとは違う」「大手は恵まれているというけれど、私たちだって年々苦しくなっている。実際大変なんだ」といった声が返ってくるでしょう。確かに、かつてと比較すれば状況は厳しくなっています。

リーマンショック以降、大手企業に勤務する40代サラリーマンの平均年収は減少傾向。40代はかつてのように給与が右肩上がりで増えていくのが当たり前の年齢帯ではなくなっています。出世コースから外れてしまうと、40代で給料が頭打ちになる、あるいは30代より下がってくるケースも、今では非常に多くなりました。

厚生労働省の賃金統計表をもとにした日経新聞の分析によると、1000人以上の大企業で働く40~44歳の男性の2018年の平均年収は726万円と、2008年比で約70万円減っています。45~49歳も同期間で約50万円減少。

その一方で、25~29歳は17万円増加していますから、大企業ミドルにとって受難の時代が訪れているのは間違いありません。若い頃は低くても、年功序列で後払いで増えていくはずだった賃金カーブも少しずつフラットになりつつあります。

しかし、過去の同職位と比べて減ったといっても700万円台。現在の世の中全体を見渡せばまだまだ恵まれた環境にいると見なければなりません。

年収300万円以下が4割を占める時代に

2017年発表の国税庁「民間給与実態調査」によると、給与所得者のうち、年収400万円以下が57.1%と半数以上を占めており、年収300万円以下も39.6%に達しています。森永卓郎さんが『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)を刊行し、サラリーマンに衝撃を与えたのが2003年。しかし、それも今は昔。現代は「年収200万円時代」に突入しつつあるのです。

「このデータは、女性も派遣・アルバイトなどの非正規雇用も含めた数字じゃないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、男性・正社員が優遇されている大企業を飛び出してしまえば、あなたも同じ土俵に立つ可能性は十分あります。

大企業のミドルが今得ている年収は、必ずしもその人の現状の能力・パフォーマンスに応じたものではありません。改めて現在の市場価値に応じた評価をされたとき、700万円、800万円といった年収を保証してくれるものは何もないのです。

中間層は消滅し、低賃金層が劇的に増えていく

この流れは決して日本だけのものではありません。

2019年に刊行された『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』(ジェームズ・ブラッドワース著、光文社)は、実際にアマゾンの倉庫での労働や、ウーバーのタクシードライバーなどを経験したイギリス人ジャーナリストが、その労働環境や収入の厳しさをレポートした本です。

アマゾンにせよ、ウーバーにせよ、企業本体は世界規模の成長を続ける中で、現場のビジネスを支える労働者がいかに苛酷な状況に置かれているかが、この本を読むとよくわかります(もちろん一面だけを取り上げた多少の誇張はあるでしょうが)。

ウーバーのような、インターネットを活用して単発の仕事を単発で請け負うギグワーカーは、自由度が高い働き方ができる一方、新たな搾取の構造も生み出しています。

『アマゾンの~』の著者は、ウーバーのタクシードライバーとして、日本円にすると年間500~600万円は稼ぐとのことですが、これは個人の年収というより事業としての売上である年商に近いものです。

ウーバーに25%の手数料を取られる上、個人事業主なので、車の修理代や駐車違反の罰金などの経費はすべて自分持ち。かつイギリスは業務請負の税率も高いので、実質の手取りは日本円にして210万円程度にしかならないのです。

経営者なので乗客は自分で選べるかと思いきや、リクエストの80%を受け容れなければ「アカウント・ステータス」を保持することができません。また、乗客の口コミ評価もネット上にさらされるため、自腹で乗客にペットボトルの水を配るなどのサービス出費もあります。

一見、最先端のように思える仕組みが、新たなタイプのワーキングプアを生み出しているという皮肉な現象が起きているのです。

アメリカではこうしたギクワーカーを個人事業主とするにはさすがに無理があるということで、従業員扱いにして守ろうとする法整備が進んでいますが、まだ大勢にはなっていません。それどころか、欧米諸国では、これらの決して条件の良くない仕事ですら移民との奪い合いになっています。そして、トランプ政権の支持層と重なる低学歴の白人男性から貧困化が進んでいるのです。

一方の日本の現状では、副業やフリーランスを奨励しようとする傾向すらあります。何より人材不足のほうが大きな問題となっており、本来は国際協力が目的のはずのベトナムなどの途上国からの技能実習生の受け入れ期間が、介護など人材不足が深刻な分野で3年から5年に期間延長されるなど、人材開国に舵かじが切られつつあります。

外国人労働者が増加し、人口減少による経済の縮小で仕事の絶対数が減ってくれば、いずれ欧米と同じような状況になっていくことが十分考えられます。

かつてトマ・ピケティが予測した通り、一部の富を有する資本家だけがどんどん富んでいって、中間層は消滅し、低賃金のオペレーショナルな仕事に従事する層が劇的に増えていくという状況が現実のものとなっています。これは世界的な潮流です。
 
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前川孝雄(まえかわ・たかお)
㈱FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師。1966年、兵庫県明石市生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。㈱リクルートで『リクナビ』『就職ジャーナル』などの編集長を務めたのち、2008年に㈱FeelWorks設立。「上司力研修」「50代からの働き方研修」などで400社以上を支援。2017年に㈱働きがい創造研究所設立。一般社団法人企業研究会研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業審査員なども兼職。

提供元・ZUU online library

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