宇宙文明は銀河系の中心で広がりやすい

これまでの宇宙植民地化の数理モデルでは、文明が天の川銀河全体に広がるまでの時間を計算していました。

当然それは非常に時間がかかり、通常銀河の年齢を超えてしまいます。

しかし、今回のシミュレーションの特徴は、銀河系内の星の動きを考慮しています。

従来のモデルは静的な状態で計算されていましたが、星間を移動しやすい状況を考慮すると、一気に宇宙に文明が広がっていくことが予想されたのです。

今回のシミュレーションは、ジョナサン・キャロル・ネレンバッグ(Jonathan Carroll-Nellenback)らの過去の研究に基づいて作られています。

この研究では、私たちと同程度の技術を持つ仮想的な文明が拡散することを想定しています。

当然、ワープ航法とか光速以上で宇宙を移動する技術はなく、宇宙船の移動速は私たちの宇宙船と同程度の秒速約30kmという想定になっています。

シミュレーションでは、宇宙船の移動可能範囲は10光年で、最大移動可能時間は30万年と想定されています。

各星に根付いた文明(コロニー)は、消滅するまで1億年続くように設定されています。

文明は10万年ごとに、移動するための移民船を打ち上げます。

その結果はかなり劇的なものでした。

これは研究者が公開している今回のシミュレーション結果の動画です。

シミュレーションが表現しているのは、仮想的な文明が亜光速で銀河内を拡散していく様子です。

白い点は、まだ文明の存在しない星。赤い球は文明の定着した星を表します。白い立方体は、移動する移民船です。

この動画を再生してみると、赤い文明の星が最初は少しずつ増えていきますが、銀河中心に到達した途端、一気に広がり、劇的に植民地化された星が増加していくのがわかります。

銀河中心の密度が高い領域では、たとえ私たちの文明と同程度の速度しか出ないというかなり保守的な制限を設けた宇宙船でも、10億年以内に銀河系の大部分が植民地化される可能性があるのです。