新型コロナウイルスが終息の兆しを見せている。忘年会と新年会シーズンに入ると居酒屋を展開する上場企業の売上高は一気に回復しそうだが、各社の足元の業績はどのような状況になっているのだろうか。今年の上半期決算を比較し、業界の今後を考察する。

2021年度上半期の各社の決算状況は?

4月から翌年3月を会計年度とする上場企業のうち、居酒屋を展開する企業の2021年度の上半期(2021年4〜9月)の売上高と損益を比較してみよう。

<居酒屋・飲食店チェーンの業績の比較>
企業名 売上高 純利益
コロワイド 784億100万円 9億1,500万円
ワタミ 286億3,000万円 △30億300万円
JFLAホールディングス 333億3,600万円 △2億8,100万円
木曽路 148億4,500万円 △1億7,000万円
チムニー 29億2,500万円 18億1,500万円
エー・ピーホールディングス 27億1,800万円 2,500万円
※出典:各社の2022年3月期第2四半期の決算短信

売上高が大きい6社を比較すると、黒字と赤字がそれぞれ3社あり、明暗が分かれていることがわかる。

黒字はコロワイド、チムニー、エー・ピーホールディングスで、赤字はワタミ、JFLAホールディングス、木曽路。赤字額が最も大きいのはワタミで、上半期だけで30億300万円の赤字を計上している 。

ワタミは前年同期に71億5,500万円の赤字を計上しており、赤字額は縮小している。すでに酒類を提供する店舗に対する時短営業要請は終わっているため、下半期で業績をどれだけ挽回できるかに注目したい 。

コロナの終息で各店舗の売上高は回復に向かうが……

コロナが終息に向かうにつれ、居酒屋の売上高は間違いなく回復していくだろう。

ただし、居酒屋チェーンを展開する企業の中にはコロナ禍でかなりの数の店舗を閉店した企業も少なくないため、既存店の売上が回復しても全体的な売上をビフォーコロナの水準に戻すのは 難しいかもしれない 。

居酒屋チェーンを展開する上場企業の店舗数は大幅減

大手居酒屋の店舗数の減少は、民間調査会社の東京商工リサーチの調査結果を見ても明らかだ 。

東京商工リサーチが2021年11月に発表した調査結果によれば、居酒屋チェーンを展開する主要上場企業14社の店舗数は、2019年12月末は7,200店舗あったが、2021年9月末は5,958店舗まで減った。

上記の店舗数は居酒屋だけでなく、酒類を提供しないレストランも含むが、コロナ禍では酒類を提供しないレストランよりも居酒屋の閉店が目立ったため、居酒屋の数が大きく減少したと考えてよいだろう。

先ほど業績を紹介したJFLAホールディングスでは、店舗数が843店舗から473店舗に減少した(43.8%減)。低価格帯居酒屋「金の蔵」を展開するSANKO MARKETING FOODSは、 108店舗から55店舗まで減らしている(49.0%減)。

東京商工リサーチは「14社中、5社がコロナ前から2割以上店舗が減少している」と発表している。

売上増のために店舗数を増やす2つのリスク

売上高をビフォーコロナの水準に戻すためには、各店舗の売上高を回復させるだけで なく、店舗数を増やす必要もある。しかし、すぐに店舗を増やすのはリスクが大きい。再びパンデミックが起きるかもしれないし、消費者の飲食スタイルも変わりつつあるからだ。

パンデミックの再来が懸念点に

新型コロナウイルスの感染者数はかなり減ったが、感染力が強く毒性の高い変異株が流行すれば、緊急事態宣言が再び発令される可能性がある。そうなれば、店舗を増やしたことが裏目に出ることになるだろう 。

消費者の飲食スタイルに変化が

コロナ禍によって、消費者の飲食スタイルは大きく変わった。

お酒のオンラインストアを運営するリカー・イノベーションの調査によれば、飲食店における酒類提供の時短要請が解除された後、飲食店で午後8時以降に飲酒をした人は約29%にとどまり、「これからも家飲みを楽しみたい」と回答した人は8割近くに上ったという。

「まだ様子見」が正しい選択?

コロナの終息を見込んで早期に店舗数を増やせば、他社に先駆けて業績を回復することができるかもしれない。しかし再びパンデミックが起きれば、逆に増やした店舗が足を引っ張ることになるだろう。居酒屋を展開する企業の経営陣は、難しい選択を迫られているのだ。

最近は新たな変異株であるオミクロン株の流行の兆しもあり、先行きが不透明な状況が続いている。売上の面では厳しくても、今はまだ様子を見るのが居酒屋チェーンにとっては正解なのかもしれない。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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