地球はその長い歴史上で、何度も巨大隕石の衝突を経験しています。

幸い、人類が誕生して以降壊滅的な巨大隕石の落下はありませんが、その平和がいつまで続くかはわかりません。

そのため、世界の天文台は常に地球にとって脅威となりうる小惑星を見つけ出し、監視し続けています。

米国天文学会惑星科学部会の2020年バーチャル会議で発表された新しい研究では、ヤルコフスキー効果を考慮して計算した場合、小惑星アポフィスが2068年に地球へ衝突する可能性は0ではないと報告しています。

小惑星の衝突に関する警告は、もはやオオカミ少年のような状態ですが、果たして地球に隕石が落下する危険はあるのでしょうか?

目次

  1. 小惑星アポフィスの潜在的な脅威
  2. 2068年に小惑星アポフィスが地球に衝突する確率
  3. 現在判明している アポフィス衝突の最終的なリスク

小惑星アポフィスの潜在的な脅威

小惑星アポフィスは2068年に地球に衝突する可能性がある
(画像=2004年撮影された観測画像。動く光点が小惑星アポフィス。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

小惑星アポフィスは2004年に発見された小惑星です。そのサイズは直径300mほどで、当時は2029年に地球に衝突する可能性が2.4%とかなり高い値で警告され話題になりました。

幸い、その後の研究でそんな可能性は0であると判明していて、アポフィスは2029年に地球の衛星軌道まで接近するものの衝突する心配は現在ありません。

小惑星アポフィスは2068年に地球に衝突する可能性がある
(画像=2029年に地球に接近する小惑星アポフィスの軌道予想。 / Credit:NASA、『ナゾロジー』より引用)

しかし、この小惑星の脅威はこれで終わりではありませんでした。

アポフィスは地球の軌道から金星軌道にまたがる楕円軌道で太陽を公転していて、この後何度も地球へ再接近する機会があるのです。

小惑星アポフィスは2068年に地球に衝突する可能性がある
(画像=白のラインで示されているものが小惑星アポフィスの軌道。青のラインは地球軌道。 / Credit:NASA / JPL、『ナゾロジー』より引用)

そして2068年に、アポフィスが地球に衝突する可能性があるという計算が示されました。NASAのデータ上では、アポフィスは小惑星ベンヌや、29075(1950 DA)に次いで、3番目に大きな影響リスクを持つ小惑星であると考えられています。

2068年に小惑星アポフィスが地球に衝突する確率

気になるのは衝突の確率です。

アポフィスが2068年に地球へ衝突する確率は、なんと15万分の1。つまり、ほとんど当たらないということです。

なんだ安心、と思ってしまいますが、こうした小惑星にはヤルコフスキー効果と呼ばれる天体の移動を変化させる現象があり、この確率にはそれが考慮されていません。

小惑星は太陽光のエネルギーを吸収して加熱します。この熱は小惑星表面に不均一に分布するため、熱放射を行った際、特定の方向に小惑星を押し出すような効果が発生して、オブジェクトの軌道をずらしてしまいます。

これをヤルコフスキー効果と呼びます。

小惑星アポフィスは2068年に地球に衝突する可能性がある
(画像=ヤルコフスキー効果の概略図。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

つまり、このヤルコフスキー効果を考慮して計算した場合、アポフィスが地球へ衝突する可能性は現在の試算と異なる結果になるのです。

今回報告された研究は、ハワイ島にあるすばる望遠鏡の観測データから、ヤルコフスキー効果でアポフィスの地球衝突の確率がどの程度変化するか突き止めたというものなのです。

現在判明している アポフィス衝突の最終的なリスク

ヤルコフスキー効果を考慮に入れてアポフィスが2068年に地球へ衝突する確率を再計算した結果、研究はその真のリスクが53万分の1であると報告しています。

なんと、元の数値より確率は大幅に下がっていたのです。

というわけで、ほぼアポフィスが地球にぶつかる危険はないでしょう、というのが今回の報告です。

しかし、確率が0になったわけではありません。これは依然としてアポフィスには地球衝突のリスクがつきまとっていることを意味しています。

アポフィスは直径が約300m程度とさほど大きい小惑星ではなく、仮に地球に落下したとしても、大量絶滅を引き起こす危険はありません。

ですが、それは影響が小さいことを意味しているわけではありません。その落下衝撃はTNT1151メガトンに相当すると試算されています。

ちなみに、これまでで最大の核兵器の爆発は57メガトン、1883年のクラカタウ火山の噴火は200メガトンと記録されています。

小惑星アポフィスは2068年に地球に衝突する可能性がある
(画像=小惑星の落下。 / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

アポフィスが落下した場合、小さな国なら吹き飛ぶほどの被害がおき、巨大津波や広範囲に渡る山火事を起こす可能性があり、人類にとっては最悪の日になるのは確実でしょう。

そうならないために、天文学者たちは日夜宇宙を監視し、危険な小惑星のリスクを計算し続けているのです。そして、もし本当にその危険が迫ったとき人類が取れる選択肢を広げる努力を進めています。

もしアポフィスが地球に衝突する危険が高まった場合は、かなり早い段階から警告を出すことができるでしょう。


参考文献

University of Hawaiʻi


提供元・ナゾロジー

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