太陽は私たちにとってもっとも近い恒星であり、地球からでさえ、その熱を感じ、肉眼で直視するのが難しいほどの輝きを放っています。

NASAの探査機パーカーソーラープローブ(Parker Solar Probe)は、そんな太陽の大気圏であるコロナ内へ、人類の歴史上初めて突入し、観測を行うことに成功しました。

これは人類史上もっとも恒星に近づいた最初の観測です。

この観測からは、遠くから見ただけではわからない、太陽風など太陽が放つ粒子の流れを詳細に知ることができます。

詳細は、12月14日付で科学雑誌『Physical Review Letters』に掲載されています。

目次

  1. もっとも太陽に近づいた観測
  2. 太陽の嵐を間近で撮影する

もっとも太陽に近づいた観測

パーカーソーラープローブは、これまででもっとも太陽に近づいて観測を行うため2018年に打ち上げられました。

そこから3年(計画の構想段階から数えたら数十年)の歳月をかけ、とうとう探査機は太陽大気圏に到達したのです。

地球のような岩石惑星とは異なり、太陽には固体の表面がありません。

しかし、その周辺には加熱された大気があります。

コロナと呼ばれるこの大気は、重力と磁場によって太陽と結合した太陽物質であり、紛れもない太陽の一部です。

史上初めてNASA宇宙探査機が太陽コロナへ突入成功
(画像=1999年に撮影された皆既日食。太陽コロナと表面のプロミネンスが映し出されている。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

ではどこまでが太陽の一部で、どこからが宇宙とみなされるのでしょうか?

太陽の大気が熱と圧力によって上昇し太陽から遠ざかっていくと、太陽の重力と磁場では粒子をつなぎとめておけない臨界点が現れます。

ここが太陽大気圏と宇宙空間の境界であり、アルヴェーン臨界面と呼ばれます。

これより外側へ飛び出した太陽物質は、太陽の一部ではなく太陽風と呼ばれるようになり、地球を超えてはるか太陽系の外側まで太陽の磁場の影響を届ける自然現象の一部となります。

ただ、これまで研究者たちは、このアルヴェーン臨界面がどのあたりにあるのか正確に把握していませんでした。

離れた場所から観測した場合、この臨界面はぼやけてしまうため、太陽表面から10~20太陽半径(約690万km~1390万km)の範囲と推定されているだけだったのです。

パーカーソーラープローブは、太陽の周りを何度も周回しながら接近するフライバイを行っており、ちょうどこの20太陽半径の辺りを飛行していたため、アルヴェーン臨界面を超えて、太陽コロナへ突入する可能性がありました。

そのため、パーカーソーラープローブにまず期待されていたのは、太陽の大気圏であるコロナと宇宙の境界を見定めることでした。

史上初めてNASA宇宙探査機が太陽コロナへ突入成功
(画像=パーカーソーラープローブが計画しているフライバイの軌道。赤いラインは今後の予測軌道。 / Credit:Credit: NASA/Johns Hopkins APL、『ナゾロジー』より引用)

そして、2021年4月28日、パーカーソーラープローブは、8回目の太陽フライバイで、太陽表面から18.8太陽半径(約1300万km)の位置で、研究者がアルヴェーン臨界面と特定する条件に遭遇し、人類史上初めて探査機が太陽大気圏に入ったことが認められたのです。

プロジェクトの副最高技術責任者ジャスティン・カスパー(Justin Kasper)氏は、「遅かれ早かれコロナに突入することは期待していましたが、それがすでに達成されているとわかった瞬間は非常にエキサイティングでした」と語っています。

そして、パーカーソーラープローブは太陽のコロナを内部から撮影することに成功するのです。

太陽の嵐を間近で撮影する

史上初めてNASA宇宙探査機が太陽コロナへ突入成功
(画像=第9回の接近で撮影された擬似ストリーマーと呼ばれるコロナの構造。これは日食の際に地球から見ることができる。 / Credits: NASA/Johns Hopkins APL/Naval Research Laboratory、『ナゾロジー』より引用)

すでにパーカーソーラープローブは数回、太陽コロナへの突入を繰り返しています。

上の画像は、太陽表面から1050万kmまで接近した際に撮影された、コロナの疑似ストリームと呼ばれる構造の写真だといいます。

これは日食の際に、地球から見ることができる白く輝くコロナの構造の一部です。

太陽の磁場が作るこうした構造を、コロナ内部に入って間近で撮影することは、太陽に関するさまざまな理論の証明に役立つでしょう。

史上初めてNASA宇宙探査機が太陽コロナへ突入成功
(画像=パーカーソーラープローブの今後の太陽への接近と調査目標を示した画像。 / Credits: NASA’s Goddard Space Flight Center/Mary P. Hrybyk-Keith、『ナゾロジー』より引用)

パーカーソーラープローブは、今後も太陽の周りを周回しながら、さらに接近し最終的には太陽表面から8.86太陽半径(約616万km)にまで到達する予定です。

高熱を発する太陽にこれだけ近づけるというのは、パーカーソーラープローブの優れた熱シールドの有効性を証明するだけでなく、これまでわからなかった太陽のさまざまな謎の解明につながる快挙です。

今後も、パーカーソーラープローブは太陽について驚きの報告を続けてくれるでしょう。


参考文献

NASA Enters the Solar Atmosphere for the First Time, Bringing New Discoveries

元論文

Parker Solar Probe Enters the Magnetically Dominated Solar Corona


提供元・ナゾロジー

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