地球に落下する隕石は、地上に激突してクレーターを作る場合よりも、空中爆発(エアバースト)を起こす方が桁違いに多いと推定されています。

これは現代の人口密集地で発生した場合、深刻な被害をもたらす可能性があります。

しかし、大規模なエアバーストの地質学的な記録は、発見することが難しくあまり研究が進んでいません。

3月31日に科学雑誌『Science Advances』に掲載された新しい研究は、そんな隕石によるエアバーストの痕跡を南極大陸の山の頂上で発見したことを報告しています。

この調査結果は、「エアバースト」の影響を特定し、将来の災害に備えるために役立つ可能性があります。

目次

  1. 南極大陸の山頂で見つかった奇妙な小石
  2. 43万年前、南極を襲った隕石の災害

南極大陸の山頂で見つかった奇妙な小石

南極大陸は乾燥した極寒の気候と、人類による活動がほぼないことで、隕石の残骸を調査するのに最適な環境です。

2017年から2018年にかけて行われたベルギー南極観測隊(BELAM)の遠征も、そんな南極氷原の隕石調査を行っていました。

今回の研究を発表した、現在はイギリスのケント大学で研究を行うマティアス・ヴァン・ギネケン博士の研究チームも、この遠征に同行していました。

そして、チームはアフリカの南に位置する南極クイーンモードランドのセールロンダーネ山地にあるワルスムフィエレ (Walnumfjellet)の頂上で、奇妙な鉱物粒子(凝縮球)を発見したのです。

43万年前、南極大陸では隕石により「巨大な火柱」が上がっていた
(画像=南極セールロンダーネ山地の位置。日本の昭和基地の東600kmの地点。 / Credit:google、『ナゾロジー』より引用)

粒子自体は直径が約100~300マイクロメートルで、非常に細かいチリに似ていましたが、顕微鏡で見ると半分以上がいくつかの小さな石が融合した状態になっていました。

そして分析の結果、粒子中には大量のニッケルが含まれていることが判明しました。ニッケルは地球の地殻にはあまり豊富に存在してはいません。

さらに粒子の組成は、C型コンドライトとして知られる小惑星の組成と一致していたのです。

これはこの粒子が地球上のものではないことを意味しています。

43万年前、南極大陸では隕石により「巨大な火柱」が上がっていた
(画像=発見された地球外微粒子の顕微鏡写真。 / Credit:Scott Peterson/University of Kent、『ナゾロジー』より引用)

この粒子の発見に、ヴァン・ギネケン博士は「ビンゴ! これは素晴らしい」と興奮したそうです。

そして、この地球外粒子が、なぜこのような状態になったのか? かつて南極のこの場所で何があったのか? を知るために、チームは粒子の徹底的な化学分析を行いました。

そして、類似する粒子の報告などを調査し、元あった小惑星の数値モデルを作成したのです。

43万年前、南極を襲った隕石の災害

分析の結果、この微粒子は典型的な小惑星の組成と比べて、非常に酸素が豊富であることがわかりました。

これは粒子(凝縮球)が、比較的地面に近い位置で形成されたことを示唆しています。

次にチームはこの粒子が形成された年代を推定しました。

同様の粒子の発見報告がないか調査したところ、同じものがかつて南極の氷床コア(氷のボーリング調査)から発見されていたことがわかりました。

その研究によると、これらの粒子は43万年前に形成された可能性が高いと考えられています。

これは発見の類似性から推定された年代であり、ワルスムフィエレ頂上での発見粒子の絶対年齢は不明なままです。より正確な年齢を突き止めるためには、さらなる分析が必要になるとヴァン・ギネケン博士はいいます。

さらに、チームは発見された粒子のサイズ、形状、密度を考慮して、非常に大まかに親小惑星のサイズを計算することができました。

粒子の融合は非常に密度が高く、これは地球に向かう途中で鉱物が衝突して互いに溶け合うことでできたと考えられます。

ここからチームは元の小惑星のサイズは、直径100~150メートルの間であった可能性が高いと考えています。

この分析から割り出されたサイズの小惑星は、基本的に地面に到達することはできません。

「こうした小惑星は、基本的に加熱されガス雲として気化してしまいます」と、ヴァン・ギネケン博士は説明しています。

これが毎秒数kmという速度で地表に到達した場合、非常に破壊的な出来事を起こしたと推定されます。

地表に直接衝突することがなかったとしても、それは南極の大地に巨大な火柱をあげる大爆発だったでしょう。

43万年前、南極大陸では隕石により「巨大な火柱」が上がっていた
(画像=南極大陸に落下した隕石による火柱のアーティストイメージ。 / Credit:Mark A. Garlick / University of Kent、『ナゾロジー』より引用)

これはエアバーストイベントと呼ばれる、隕石の空中爆発であり、クレーターを作る隕石衝突より、はるかに頻繁に発生する可能性があります。

たとえば、2013年にロシアのチェリャビンスクで起きた隕石落下も、エアバーストであったと考えられています。

また、ツングースカ大爆発として知られる、1908年にロシアのツングースカ近郊の森で起きた爆発現象も、エアバーストの可能性が高いと考えられています。

ツングースカのような出来事は、100年から1万年に1回と推定されますが、今回発見された南極のエアバーストは、この出来事よりはるかに巨大なエアバーストだったと考えられます。

もし都市部で、この南極を襲ったエアバーストが起こった場合、都市を破壊するだけでなく数百kmの範囲にわたって深刻な被害を与え、数百万人以上の死傷者を出した可能性が高いと研究者は考えています。

私たちは地面にクレーターを残すような巨大な小惑星の落下こそ恐ろしい隕石の災害と考えて警戒しています。

しかし実際はそれよりもはるかに地球を訪れる可能性が高い、数10~200メートル程度の小さな小惑星について、もっと警戒する必要があるだろう、とヴァン・ギネケン博士は語っています。

参考文献
New study discovers ancient meteoritic impact over Antarctica 430,000 years ago

元論文
A large meteoritic event over Antarctica ca. 430 ka ago inferred from chondritic spherules from the Sør Rondane Mountains

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功