温暖化、核戦争、隕石の落下、パンデミック、生態系の崩壊…

人類が滅亡する可能性のあるシナリオはいくつも挙げられますが、そのどれがいつ現実となるかは予想できません。

過去、多くの人々が悲劇に遭遇したとき、自身の生きた証や、悲劇の教訓を後世へ残そうとしてきました。

しかし、人類全体が滅亡するような悲劇の記録は、どうやって残せば良いのでしょうか?

今、そんな人類最期の物語を語り伝えるためのある計画が、オーストラリアのタスマニア島で進行しています。

「Earth’s Black Box(地球のブラックボックス)」と呼ばれるこのプロジェクトでは、世界最後の瞬間に、地球の環境データ、最新の科学・政治情報を自動で記録する巨大モノリスを建造しています。

目次

  1. 「人類の最期」を語り継ぐために
  2. ブラックボックスを立てる「真の目的」とは

「人類の最期」を語り継ぐために

世界の終わりを記録して後世に伝える「モノリス」が、まもなく完成
(画像=2022年初頭に完成予定のブラックボックす / Credit: Earth Black Box – “Earth’s Black Box” to chronicle humanity’s descent into climate chaos(2021)、『ナゾロジー』より引用)

Earth’s Black Boxは、オーストラリアの企業・Clemenger BBDO、The Glue Society、およびタスマニア大学(University of Tasmania)の研究チームが共同で進めているプロジェクトです。

具体的には、オーストラリア南方にあるタスマニア島のどこか(詳細な位置は非公開)に巨大な鋼鉄製のモノリスを建て、そこで終末世界の様子をリアルタイムで記録・保存します。

もちろん、中に人はいません。

モノリスには、ソーラーパネルで駆動する膨大な数のハードディスクが搭載され、それぞれのHDが、終末世界の直面している環境変化、科学的・政治的な最新情報を自動的に収集します。

たとえば、気候変動、生物の絶滅、環境汚染、健康への影響といった情報がすべて記録され、いつの日か、知的生命体がやって来たときに、そのアーカイブをみれば、人類がいかに滅亡したかが詳細に分かるのです。

Earth’s Black Boxのウェブサイトには、以下のように述べられています。

「私たちが生活様式を劇的に変えない限り、気候変動やその他の人為的な危機によって、人類の文明はまもなく崩壊するでしょう。

Earth’s Black Boxは、この大惨事に向けて私たちが取るすべての行動を記録します。

地球の状態に関連する何百ものデータセット、測定値、相互作用が継続的に収集され、未来の世代のために安全に保存されます」

ブラックボックスは、2022年の初頭に完成予定で、すでにボックス内のシステムは部分的に作動しており、環境データをライブレコーディングしているという。

その一方で、同プロジェクトは、人類の存続をあきらめた悲観的な計画ではないといいます。

真の目的は、また別にあるのです。

ブラックボックスを立てる「真の目的」とは

Clemenger BBDOのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターであるジム・カーティス(Jim Curtis)氏は、オーストラリア放送協会(ABC)に対し、こう語ります。

「気候変動によって地球がクラッシュした場合、この破壊不可能な記録装置は、残された人々がそこから学ぶことができるというアイデアです。

それはまた、リーダーに責任を負わせるためのものでもあります」

チームは、プロジェクトの目的のひとつとして、「人類を破滅的なシナリオから遠ざけること」を挙げています。

ブラックボックスは、人類滅亡に関連するあらゆる情報を記録するため、世界各国が気候対策や環境保護の観点から、より進歩的で責任ある行動をとるようになるという。

世界の終わりを記録して後世に伝える「モノリス」が、まもなく完成
(画像=タスマニアで完成予定の「ブラックボックス 」 / Credit: Earth Black Box – “Earth’s Black Box” to chronicle humanity’s descent into climate chaos(2021)、『ナゾロジー』より引用)

The Glue Societyのジョナサン・ニーボーン(Jonathan Kneebone)氏は、次のように述べています。

「行動や発言が記録されることを知ると、各国のリーダーは自らの言動に責任を持たざるをえません。それが私たちの役割であり、ブラックボックスの真の目的でもあるのです」

Earth’s Black Boxを、真面目な科学的記録プロジェクトではなく、人々の注目を集めるためのPR活動だと揶揄する人もいるかもしれません。

それでも、世界がこの問題にもっと注目し、対策を練ることを緊急に必要としているのは間違い事実です。

前例のないレベルで温暖化が進み、氷床が不安定になって、温室効果ガスの排出量も増え続け、科学者が「地球上で6度目の大量絶滅に突入した」と指摘するほどの速さで生物が消えている今日の世界で、もはや目をそらしている場合ではありません。

プロジェクトチームは、最後にこう述べています。

「この装置の目的は、地球の滅亡につながる出来事を公平に説明し、未来の世代に説明責任を果たし、緊急の行動を促すことです。

人類の物語がどのように終わるかは、完全に私たち次第なのです」


参考文献

This Mysterious, Indestructible ‘Black Box’ Will Tell The Future What Happened to Us

“Earth’s Black Box” to chronicle humanity’s descent into climate chaos


提供元・ナゾロジー

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