30年以上前のモデルが達成した速さを、最新の軽自動車でも塗替えられない。ここでは、四輪独立懸架サスと4気筒エンジンでサーキット最速マシンとなった「スバル ヴィヴィオ」と、前面投影面積の小ささとミドシップレイアウトが最高速に有利すぎた「オートザム AZ-1」、そしてコーナリング性能は現代のタイヤとボディ設計で"最新が最良"を実現する「ホンダ S660」を紹介しよう。

文・山本晋也

目次
1992年生まれがすごい!
サーキット最速マシン「スバル ヴィヴィオ」
最速180km/h超え「オートザム(マツダ)AZ-1」
コーナリングが自慢「ホンダ S660」

1992年生まれがすごい!

軽自動車の進化はめざましい。日本のモータリゼーション黎明期には360ccだったエンジン排気量が、550ccになり、660ccになり、そしてボディが大きくなって現在に至るが、1998年から始まった現行規格においても、ここ数年でのレベルアップ幅は明らかに大きく、快適性は増している。 全体の傾向としてホイールベースが伸びたことで高速道路での安定感も増したし、変速比幅の広いCVTを使うことで街乗り加速と高速巡行のバランスも取っている。また、エンジン自体のパフォーマンスも上がっており、NA(自然吸気)エンジンであっても出力的に不満を感じないレベルになっている。 とくに、いまや国民車的存在のホンダN-BOXの進化幅は大きく、そうしたトップランナーが軽自動車全体のレベルを引き上げている。しかし、軽自動車の絶対的な速さという点においては、それほど進化を感じない。 むしろ、1998年以前の旧規格のほうが速かった記憶がある。とくに1990年代初頭は軽自動車のイメージリーダーとしてスポーツ性が求められた時代であり、いまも中古市場で人気の高い2シーターのABCトリオ(オートザム AZ-1、ホンダ ビート、スズキ カプチーノ)が登場したほどだった。ボディ幅が小さいためトレッドは狭いが、逆にコンパクトなボディは軽さという武器を得ることもできた。 結論を言えば、現代の軽自動車では1990年代前半に登場したスポーツモデルを速さで超えることはできていないのだ。

サーキット最速マシン「スバル ヴィヴィオ」

30年経っても超えられない?歴代最速軽自動車3選
(画像=『CarMe』より 引用)

車種名でいえば、前述したABCトリオ、ダイハツ ミラターボTR-XX、スズキ アルトワークスといったモデルが競っていた1990年代前半の軽スポーツマーケットにおいて、サーキット走行でのラップタイムをリードしていたのは1992年に誕生したスバル ヴィヴィオだった。

660ccながら4気筒DOHCエンジンに、インタークーラー付きスーパーチャージャーを組み合わせたエンジンは、カタログ値こそ自主規制の64馬力だったが、実際にはもっとパワーを絞り出していた。とくに後期型で登場したハイオク仕様のスーパーチャージャーエンジンはカタログ値の4割増しともいわれるほどパワフルなエンジンだった。

しかも、4輪ストラットサスペンションのシャシーと組み合わせていたのだから、エンジンだけでなくコーナリング性能も含めたトータルでの速さも持っていた。舗装路での速さはFFに分があったが、雪道など滑りやすい状況では4WDの安定性と速さも魅力となっていたモデルだ。

ノーマル状態で比べれば、3気筒ターボ、後輪リジッドサスペンションのアルトワークス、4気筒ターボで後輪セミトレーリング式サスペンションのミラターボといったライバルを蹴散らしたのが、ヴィヴィオだ。もっとも、スーパーチャージャーはチューニングの伸びしろが少なめで、お金をかけて改造したターボエンジンには歯が立たないという面もあったが…。