現代の食文化は、お菓子やファストフードで溢れかえっていますが、子どもたちはもはや、それらが何からできているのか、分からなくなりつつあるようです。
ファーマン大学(Furman University・米)の研究チームは、アメリカ南東部の都市圏に暮らす4〜7歳の子ども176人を対象に、食品アンケートを実施。
その結果、4割の子どもが「ホットドッグは野菜からできている」と信じていたことが判明しました。
さらに、半数近くが「フライドポテトは動物の肉である」と誤認していたようです。
研究は、10月9日付けで学術誌『Environmental Psychology』に掲載されています。
ハンバーガーは野菜、フライドポテトは肉?

本研究では、子どもたちに食品の画像を見せて、「動物性であるか、植物性であるか」を分類するよう求めました。
すると、41%の子どもが、チーズ・ベーコン・ソーセージ・ホットドッグ・チキンナゲット・エビ・ハンバーガーなどを、野菜や果物のような植物性であると答えたのです。
海の生き物であるエビでさえ、植物と考えているのは驚きでしょう。
最も誤認率が高いのは肉類でしたが、一方で、フライドポテトを動物性であると答える率も高かったようです。
これと別に研究チームは、「食べられる食品と食べられない食品」についても分類してもらいました。
対象とした食品は、日常的に食べている動物類(ウシ・ブタ・トリ・魚)、普通は食べない動物類(イヌ・ネコ・サル)、食用の植物(野菜や果物)、非食用の自然物(土や砂、雑草)です。
その結果、普通は食べない動物類や非食用の自然物は正しく分類できましたが、3分の2以上の子どもが、ウシ・ブタ・トリを食べてはいけないと回答したのです。
このように、現代の子どもでは「食に関する基本的な知識に広範な誤りがある」ことが明らかになりました。
一体、なぜでしょうか。
子どもへの食育が不十分
チームは、食品の材料についての知識が乏しい理由について、食育活動が不十分であることを指摘します。
アメリカでは現在、農業を営む人口が減っており、高齢化も進んでいるため、農場に住む子どもの数が減少しています。
また、学校では「何を食べ、何を食べるべきでないか」は教えていても、それぞれの食材がどのように生産され、どんな食品になるかは、あまり教えていません。
その結果として、過去の調査では、子どもたちの多くが、原材料とはまったく異なる見た目に加工された食品について、限られた範囲の知識しか持っていないことが指摘されています。
たとえば、2014年にイギリスで行われた大規模な調査では、5〜8歳の子どもの3分の1が、パンやチーズ、パスタがどのように作られているか、知らないことが分かりました。
親が食肉の真実を伏せたがる?
さらに、親が子どもに動物の屠殺(とさつ)について教えたがらないことも原因の一つでしょう。
研究チームは、次のように述べています。
「保護者の多くは、子どもの純真無垢を守るため、動物の屠殺に関する情報をわざと伏せている可能性があります。
食肉生産の実態を幼い子どもに教えるのは、あまりに残酷であると考えているのかもしれません。
2003年の調査で、幼稚園児にインタビューしたところ、多くの子が、普段食べている食肉が死んだ動物の肉であることを知らなかったことが分かっています。
また、知っている子でも、食肉は自然死した動物から採取されたものだと思っている子もいました」
これらの結果が驚くべきものである一方、本研究は、調査対象とした地域や年齢層、人数が狭いため、他の文化圏にも当てはまるとは限りません。
研究チームは「食品についての正しい知識は幼いうちから身につけるべきだ」との考えです。
果たして、日本の子どもたちは、マクドナルドのハンバーガーやポテトの原材料を正しく認識しているのでしょうか。
参考文献
A Surprising Number of Kids in The US Think Hot Dogs Are Actually This
40 Percent Of American Kids Think Hot Dogs And Bacon Are Plants
元論文
Children are unsuspecting meat eaters: An opportunity to address climate change
提供元・ナゾロジー
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