岸田文雄首相は16日、観光支援事業「Go To トラベル」について、「観光業の皆さんから再開を期待する声は大きい」と話し、十分な感染拡大防止策を講じた上で、Go To トラベルを展開する意向を示しました。

具体的な再開時期はまだ決まっていませんが、コロナ禍で疲弊した旅行業界の起爆剤として、Go Toトラベル第二弾である、「Go To 2.0」の期待度は高まっています。

今回は岸田首相が最近Go To トラベルについて取り上げた「3つの発言」を分析し、Go Toトラベル2.0がどのような事業となるのか、まとめてみたいと思います。

目次

  1. Go To 2.0、今回は「中小業者」がテーマ?
  2. Go To 2.0は、需要の「平準化」を狙う?
  3. ワクチン接種証明・検査の有効活用
  4. まとめ

Go To 2.0、今回は「中小業者」がテーマ?

岸田首相は16日の囲み取材で、「(昨年のGo Toは)大手旅館や大型ホテルに利用が集中し、中小業者への利益が少なかったのではないか」と話し、Go Toトラベル2.0は幅広い業者にビジネスチャンスがあるものになる可能性を示唆しました。

この発言は、2020年7月~12月まで実施されたGo To 第一弾の反省を受けてのことなのでしょう。

確かに、Go To第一弾は、オンライン予約、キャッシュレス決済に対応する必要があり、大手に比べると資金力に劣る中小業者にとってはシステム体制の構築ができず、不利な側面がありました。

また、Go To事業者登録のためのルールが何度も変更されたため、書類提出が煩雑だったことも事実です。

昨年筆者が取材した、中小旅行代理店の代表は「(Go Toは)幅広い事業者のことを考えて仕組みを作っているのか、甚だ疑問だ」と話していました。

Go To事業者登録の手続きの複雑さもさることながら、スキームそのものが大手事業者にとって有利なものだった、という指摘もあります。

例えば、ホテル業界でも、高級ホテルや旅館にも高い割引率が適用されたため、「どうせなら普段は泊まれないところに泊まろう」という消費者心理が働き、結果的に中小のビジネスホテルなどの稼働率はGo To期間も低水準のままだった、という例もあるようです。

それでも、少なくとも2020年11月15日までに、約5,260万人がGo Toを利用して宿泊し、少なくとも約3,080億円の割引支援が実施されたという数字(観光庁・Go Toトラベル事業の利用実績について)から分かるよう、Go Toは一定の成果も出したことも事実です。

Go Toトラベル2.0では、提出書類の煩雑さや、大手事業者に結果的に利益が偏重してしまったスキームがどのように是正されるのか、注視しましょう。

Go To 2.0は、需要の「平準化」を狙う?

岸田首相はまた、「(Go To 第一弾は)旅行客が週末に集中してしまっていた。今後は平日は少しポイントを深堀りする、といったことも進めていきたい」と16日に話しました。

この「平日にポイントを深掘りする」という発言は、「需要の平準化」「分散型旅行の実現」という、Go Toトラベル事業が目指す新しい旅のスタイルに合致します。

新型コロナウイルス感染症対策分科会は2020年9月「小規模分散型旅行」を政府に提案しました。小規模分散型旅行とは、少人数による、混雑を避けるために時間や場所を分散する旅行のことを指します。

昨年実施されたGo Toトラベルでは、連休中多くの旅行客で観光地が混雑してしまい「密」ができてしまう現実がありました。分科会としては分散型旅行の実現により、感染者数の急増を抑えることができる、と考えての提言でした。

また、分散型旅行が新たな旅行の形として定着すれば旅行需要が休日に偏らなくなるので、必然的に平日の旅行客が増えることになります。

岸田首相の「平日ポイント深掘り発言」は、分散型旅行を実現させるためのインセンティブを考えていることの証左でしょう。

従来のGo Toトラベルには、平日、休日での割引率に違いはありませんでしたが、割引率に差をつけることを含めて今後どのような施策が取られるのか、注目が集まっています。

ワクチン接種証明・検査の有効活用

コロナ禍におけるGo To トラベルの最重要ポイントは、「旅行での消費喚起」と「感染拡大防止」をいかに両立させるか、という点にあるでしょう。

実際に、岸田首相は13日午前の衆院代表質問で、Go Toトラベルの事業再開は「ワクチン接種証明や検査の活用による安全・安心を前提とした仕組みに抜本的に見直す」と強調しています。

10月17日現在、日本国内のワクチン2回目接種完了者は、接種対象年齢に満たない子どもも含めて全人口の65.5%に及びます。更なる感染拡大に予断を許さない状況ではありますが、緊急事態宣言も9月末に全国で解除されるなど、行動規制の緩和の議論が高まりを見せています。

海外では、ワクチン接種を前提とした、規制緩和の取り組みが始まっています。アメリカ・ニューヨーク市では9月13日からレストランやスポーツジム、娯楽施設などを利用する際に、ワクチン接種証明の提示が義務化されています。

日本においても、36都道府県のホテルや旅館計108カ所で、ワクチン接種証明書や、検査の陰性証明を使う宿泊旅行の実証実験が始まりました。接種証明書を窓口で提示すると、割引や無料ドリンクのサービスが受けられるなどの取り組みもテストされています。

従来のGo Toトラベルでは、宿泊先など事業者に、利用客の毎朝の検温や本人確認等、厳しい感染防止対策が求められていましたが、今回の実証実験を受けて、規制が緩和されるのでしょうか。

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大により、昨年12月に全国一律で停止したGo Toトラベルですが、旅行需要の底上げに貢献した一方で、様々な課題も見えてきました。

今回まとめた岸田首相の「3つの発言」は、前回の改善を狙ってのことでしょう。

中小業者を含む幅広い事業者に利益がある仕組みづくり、「分散型旅行」実現を含めた新たな旅行文化の定着、ワクチン接種証明・検査の有効活用を、「Go To 2.0」に落とし込むことができれば、With コロナ時代の観光業の幕開けとなるかもしれません。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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