親友と呼べる人は多くても5人まで、大切な友達・仲間だと思えるのは15人ほど。
人間の交友関係は時代や文化、民族が違っても、概ね同じです。
政治家や陽キャのように顔が広い人でも、友達の上限は150人前後とされています。
同様の限界値は時代、文化、民族が違っても、概ね同じであるとされます。
しかし、このような数値を決めている要因は、いったい何なのでしょうか?
結論から言えば、それは人間の脳の機能的限界にあるようです。
30年前に提唱され、いまなお強く支持されている交友関係の限界を規定する「ダンバー数の法則」とはいったいどんなものなのでしょうか?
ダンバー数は1チームとして機能する最大数

今から30年前、ロビン・ダンバー氏は霊長類の社会性について調査するなかで、脳が大きい種ほど、より大きな群れを作ることに気が付きました。
脳の大きさを横軸、グループの大きさを縦軸にすると、相関を示す線が出現したからです。
次にダンバー氏は、線をそのまま延長し、人類の脳容積に対応する群れを調べました。
結果、150人という数に行き当たります。
ただこの時点では、サルから得られたデータを人間に当てはめただけでした。
そこでダンバー氏は、石器時代の村から現代の軍隊にいたるまで、人間が作るさまざまな組織の構成人数を調べ上げました。
すると、石器時代の村や古代の軍隊の構成単位など、お互いの状況を把握しているような緊密な人間関係があると考えられる組織の大きさを調べました。すると
・狩猟採集社会での部族の推定規模は150人
・新石器時代の農村の推定規模は150人
・アーミッシュ(ドイツ系移民の宗教組織)が共同体を分ける単位は150人
・フッター派(キリスト教の宗派)が村を分ける時の基準は150人
・古代ローマ軍の基本単位は160人(中隊:マニブルス)
・現代における中隊の適正な規模と考えられるのは150人(旧日本軍は136人)
・企業において1部門が効率よく仕事ができる人数は150人
となりました。
また集団が厳しい環境にあればあるほど、集団の構成人数は150人に近づいていきました。
構成人数が150人よりもずっと小さければ、集団としての力が発揮しきれない一方で、150人よりも大きくなれば、主に脳の機能的限界のために、お互いに対する情報を把握しきれなくなり、集団としての適切な判断ができなくなるとダンバー氏は述べています。
狩猟採集社会や共同体がマンパワーが減るにもかかわらず、150を単位にした分割を行っていたのも、脳の機能的限界に従っていた「生物学的な反応」と考えられます。
どうやら人類にとって「互いの情報を把握しつつ集団としての規模も維持する」という2つを両立させるには150人が最も都合のいい数(1チームとしての限界数)なのでしょう。
そうなると気になってくるのが、ダンバー数の法則は、最近になって登場し始めたSNSグループやネットでのコミュニケーションにも同じことが言えるのかどうかです。
Facebookにおける友達の限界数も150人前後だった

ダンバー数に対しては、発表から30年にわたり、様々な議論が続いてきました。
特に、人間が作る組織をサルの群れの延長線上と考えることに否定的な一部の人々や進化論を否定する人々、人間の脳機能は訓練でいくらでも伸ばせると考える人々にとって、ダンバー数は常に攻撃の的でした。
しかしここ10~20年、ダンバー数を支持する研究結果は増加の一途をたどっており、人材活用や組織運営の最適化を求める企業にとっても、ダンバー数を元にした人員配置はますます重要になっています。
また近年になって普及したソーシャルネットワークにおいても、ダンバー数の法則が当てはまることがわかってきました。
代表的な例が、Facebookの交際の経験人数と友達の数を示したグラフです。
このグラフは交際の経験人数ごとの友達の数を示したものです。
0人から6人程度までは、交際の経験人数が多い(よりモテる)ほど友達の数が増えていきます。
しかし、それ以上経験人数が増えても、友達の数は150人前後で頭打ちになってしまっています。
直感的には、魅力的なモテる人ほどドンドン友達の数が増えそうなものですが、決してそうはなりませんでした。
同様のダンバー数による友達の限界値は、SNSの各所でみられます。
ただ注意すべきは、ここで言う友達は何となく顔を覚えている人や何年も連絡をとっていない人は含めません。
現在、リアルタイムでお互いの近況を知り合っている「アクティブ」な関係にある人のことを意味します。
ダンバー氏はこれを「街で偶然会ったとき、気軽にお酒を飲みに誘える相手」と冗談交じりに説明しています。
友達は100人以上できるけれども親友は5人まで

ダンバー数を元にした社会関係は150人にかかわるものだけではありません。
ダンバー氏によるFacebookのデータをもとにした追加の調査によると、人間のグループサイズは階層構造になっているとされています。
友人には様々なレベルがありますが、親密度や接触回数が増えるごとに維持できる人数は減っていきます。
第0層 親友(3~5人) 人生の危機にお金を貸してくれるような人
第1層 友人・仲間(12~15人) 月に1回程度は連絡を取り合っている
第2層 遠い友人(40~50人)
第3層 友達の最大数(150人) ダンバー数
となっています。
親友を1人作るには、相手を深く知り自分も知ってもらうという、非常に大きなエネルギーコストがかかり、脳の負担も大きくなります。
そのため人間が作れる親友の最大数は最も小さくなります。
一方で、同じ共同体や同じチームのメンバーなどの最も外部の友人は、友人関係を維持するためのコストも脳の負担も少なくなるため、ダンバー数の限界まで持つことが可能になると考えられます。
ネットが普及し遠くの友人とも連絡を気軽にとれるようになったとしても、1人の人間の脳のキャパシティーは変らないようです。
(※なお150人という数は平均を示していますので、個人によって限界数は変ります。
その場合、変動幅はおおむね、100から250になると考えられています)
元論文
Neocortex size as a constraint on group size in primates
提供元・ナゾロジー
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