ファイザー製コロナウイルスワクチンの副作用に関する「Open Access Government」のサイトページ上で、コメント欄にある変わった報告が多く投稿されています。

それは、ワクチン接種後に非常に奇妙で鮮明なひどい夢を見た、というものです。

ワクチンの副作用で悪夢? と疑問に思う人もいるでしょう。

なんだか非科学的な話題にも思えるこの報告ですが、専門家はこれがファイザー製のワクチンに関わらず、ワクチン接種後にある程度起こりうる症状だと話します。

まだコロナワクチンの接種があまり進んでいない日本では、副作用について不安を感じている人も多いでしょうが、この不思議な症状は一体どういう意味があるのでしょうか?

目次

  1. 病気のとき、たくさん眠らなければいけない理由
  2. ワクチンが悪夢を見せる理由

病気のとき、たくさん眠らなければいけない理由

まず、結論から言ってしまうと、ファイザー製ワクチンを使用することで悪夢を見るという副作用はありません。

今後ワクチン接種を控えている人も、この点について心配する必要はありません。

では、ワクチン副作用に関して、奇妙な夢の報告があがるのはなんなのでしょうか?

この疑問に睡眠の専門家チーム「Tatch」の神経科学者チェルシー・ロールシャイブ博士は次のように答えています。

「ワクチン接種後の一般的な変化の1つとして、睡眠時間の増減や入眠や睡眠維持について変化があり、これは夢に変化をもたらす可能性があります」

つまり、一見おかなしな主張にも思える、ワクチン接種後に悪夢を見るという報告は、医学的な観点からすると驚くものではないというのです。

では、ワクチン接種後に睡眠が変化するというのは、どういうことなのでしょう?

これは私たちが病気になると、基本的にたくさん眠る必要があるという事実と関わりがあります。

新型コロナワクチン接種後に「奇妙で鮮明な夢を見る」という報告が続出
(画像=睡眠と免疫には重要な関係がある / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

睡眠は免疫システムの強化に役立っており、T細胞の効率的な作成を助けます。

T細胞とは白血球の1種であり、これが体中を循環して、細胞がウイルスに感染している兆候を探しています。

そして、T細胞は標的を発見すると粘着性タンパク質(インテグリン)を活性化させて、感染細胞に付着してウイルスもろとも感染細胞を破壊します。

このため、ワクチンに関する研究でも、ワクチン接種後によく眠った人は、眠らなかった人よりも強い抗体反応を示すということが報告されています。

また睡眠は、抗体生産とも関係しています。

抗体とは免疫システムが作るタンパク質のことで、ウイルスや細菌のタンパク質(抗原)を識別して結合します。

新型コロナワクチン接種後に「奇妙で鮮明な夢を見る」という報告が続出
(画像=抗体は体内に侵入した病原体(抗原)と結合する / Credit:MEDICAL & BIOLOGICAL LABORATORIES、『ナゾロジー』より引用)

抗体が抗原と結合すると、免疫システムは病原体への攻撃を開始します。

この抗体の生産も、やはり睡眠時間が減ると阻害されてしまい、病原体に対する反応性を低下させることがわかっています。

つまり睡眠不足だと、T細胞や抗体の活動や生産が低下してしまい、体内に侵入した病原体は細胞を攻撃しやすくなってしまうのです。

このため、人間の体は病気になると、より多くの睡眠時間を必要とするようになるのです。

このことが、ワクチン接種と睡眠の質を変化させることに結びついています。

ワクチンが悪夢を見せる理由

新型コロナワクチン接種後に「奇妙で鮮明な夢を見る」という報告が続出
(画像=ワクチン接種は体を病気と思い込ませる / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

ワクチン接種とは、無毒化させた病原体を体内に入れることで、敵の情報を安全に免疫システムに伝えることが目的です。

つまり、私たちの体をだまして病気だと思わせ、実際にウイルス感染した際の戦闘訓練を行っているわけです。

そのため、ワクチン摂取では、発熱や痛み、倦怠感などの副作用が発生する場合もあります。

ただ、これは1日も続かない場合が多く、実際の病気に比べてはるかに軽い症状となることがほとんどです。

ここで、体は自分が病気だと思いこんでいるため、免疫システムを有効に機能させるため睡眠を多くとろうとします。

そのため、ワクチン接種後は睡眠時間が一般的に増加するのです。

睡眠時間が増加すれば、それは私たちが夢を見る時間であるレム睡眠の量も全体的に増加することになります。

つまり夢を見る機会が増えるわけです。

またワクチンに反応して、微熱を発していると、ファンキーな夢を見る可能性はさらに高まります。

「体温の上昇は、睡眠、特にレム睡眠を制御する脳の能力の調節不全を引き起こす可能性があります」

ロールシャイブ博士はそのように説明しています。

レム睡眠に調節不全が起きると、私たちは激しい夢やストレスの多い夢を経験する可能性が高まるのです。

新型コロナワクチン接種後に「奇妙で鮮明な夢を見る」という報告が続出
(画像=ワクチン接種後は睡眠時間が増加したり、微熱が出たりする場合がある。いずれも睡眠の質を変化させ夢に影響を与える要因となる / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

また、奇妙な夢は心理的要因が引き金となって見る可能性が高いと考えられています。

ワクチン接種の副作用などに神経質になって、接種後にストレスを感じている場合は、それは夢に影響を与える可能性があるのです。

もし強いストレスを感じている場合、それは睡眠を困難にするか、逆に睡眠を多く取らせる要因となりえます。

どちらの場合も、レム睡眠の量に変化を与えるため、これも夢に影響を与える原因となります。

つまり、ワクチン接種によって奇妙で鮮明な夢を見る、悪夢を見るといった報告は、ワクチンの作用で睡眠量が増加したり、神経質になっていることが原因で起きているだけだと考えられるのです。

このため、これはCOVID-19ワクチン固有の問題ではなく、ましてやファイザー製ワクチンの抱える問題でもありません。

ワクチン接種という行為で起こる可能性のある、単なる体の自然な反応です。

ちょっと不安を感じさせる話題でしたが、もしワクチン接種後に変な夢を見ることがあっても、あまり気にする必要はないでしょう。


参考文献

YOUR POST-VACCINATION COVID-19 DREAMS AREN’T JUST IN YOUR HEAD


提供元・ナゾロジー

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