よく赤ちゃんはお腹の中で外の音を聞いていると言われますが、生まれる前の胎児はどの程度外界の情報に反応しているのでしょうか?

オーストラリア・フリンダース大学(The Flinders University)の研究チームは、まだ卵の中にいる鳥の胎児の心拍数などを測定することで、彼らが親鳥の声に反応していることを発見。

鳥のヒナは生まれた段階ですでに親の鳴き声や鳴き方を理解しているようだと言われていましたが、その理由は卵の中ですでに学習が始まっていたためだと明らかになりました。

研究の詳細は、9月6日付で科学雑誌『Philosophical Transactions of the Royal Society B』に掲載されています。

目次

  1. 音の学習はいつ始まるのか?
  2. 卵の殻の中で親の声に反応していた鳥たち

音の学習はいつ始まるのか?

ヒナは親鳥の声を「卵の中から」学習していた
(画像=ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチ / Credit:D Colombelli-Négrel, Flinders University、『ナゾロジー』より 引用)

動物の中には、さまざまな発声が可能で、発声学習によって種族の発声パターン(歌や言語)を学んで発声するものと、もともと種族固有の音しか出せない発声非学習のものが存在します。

ヒトの言語や鳥の歌などは、親などの発声パターンを真似する発声学習によって後天的に獲得されたものです。

そしてこの、発声学習をする生き物は鳥類・哺乳類の中で、霊長類・鯨類・鰭脚類(ききゃくるい)・コウモリ・鳴禽類(めいきんるい)・オウム・ハチドリのわずか7つしかいません。

なお霊長類の中で、発声学習ができるのは人間だけです。

こうした生き物たちは自分の種族以外の音も真似して発することができるため、自分の種族の正しい音を早い段階で認識している必要があります。

特に鳥たちは生まれた瞬間から自分たちの親の声を理解している節があり、それ以外の騒音とは区別できているようです。

しかし、殻を破って外へ出た瞬間に、正しい種族のメロディーが聞こえてくるとは限りません。

ヒナは親鳥の声を「卵の中から」学習していた
(画像=ヒナはいつ親鳥の音を識別できるようになっているのか? / Credit:Dr Andrew Katsis、『ナゾロジー』より 引用)

近年の研究では、生まれたあとに繰り返し聞くことで種固有の音を学ぶという発声学習のこれまでの考え方は単純すぎるのではないか? という提言もされています。(Petkov et al.,2021)

また、歌の指導を受けなかった鳴鳥でも、自分の種の音と、異なる種の音には異なる神経反応を起こすことが示されています。

このことから、今回の研究者たちは、鳥たちが卵から孵化するかなり前の段階で脳内に「音声テンプレート」を取得しているのではないか? と考えました。

そこで、研究チームは2012年から2019年までの7年間で、5つの異なる種類の鳥たちの卵にさまざまな鳴き声を聞かせる実験を行いました。

調査された中の2種は、ウズラとペンギンで、これはどちらも発声非学習の鳥ですが、残りは発声学習を行う鳥でした。

卵の殻の中で親の声に反応していた鳥たち

ヒナは親鳥の声を「卵の中から」学習していた
(画像=研究に使用されたルリオーストラリアムシクイの卵 / Credit: A Katsis, Flinders University、『ナゾロジー』より 引用)

研究では、非侵襲的な方法によって卵の中の胚の状態のヒナの心拍数が測定されました。

ここから、どういった音に過敏に反応しているかを調査したのです。

すると、発声学習をする種は卵の段階で、自分たちの種の鳴き声に応答していることが示されたのです。

最近の研究では、キンカチョウが、卵のときに親鳥がどのように鳴いていたかが、成人期の行動に影響するということが示されており、これは予想されていた結果でした。

一方、発声非学習の鳥はそのような頭脳を持っているようには見えません。

では、彼らは卵の中で特になんの音も聞いていないのでしょうか?

そこで、研究はさらに発声非学習の鳥についても同じような実験をしてみました。

すると、この鳥たちも親鳥の声には注意を払っている測定結果が出たのです。

つまり、鳥たちは音を学習する種もそうでない種も関係なく、外の音を聞き、親の声に慣れるように訓練をしていたのです。

これまで発声学習をする種とそうでない種で、音の知覚をするしないははっきり分かれていると考えられていました。

しかし、実際はそんな明確な区別はなく、鳥たちは卵の中で音を聞き生まれたあとに外の音に慣れるための準備をしていた可能性があります。

たとえば、カモメは孵化する前の卵の状態でも、親鳥の発する警告の鳴き声に反応することがいくつかの研究で示されています。

さらにこうした経験を卵のうちに持っていたヒナは、生まれたあとも警告する鳴き声への反応が他のヒナより強くなる傾向があったといいます。

今回の研究は鳥に関するものですが、生物は生まれる前の段階から、既にさまざまな外の世界に対する学習が始まっていると考えられます。

これが成人期の行動にまで影響するかどうかはまだ不明ですが、生き物の学習行動は、想像されていたよりもずっと複雑で、その開始時期はとても早いものだったようです。

参考文献
Baby birds tune in from the egg
元論文
Prenatal auditory learning in avian vocal learners and non-learners
Baby Birds Start Learning Songs From Inside Their Snug Eggs, Study Reveals

提供元・ナゾロジー

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