新型コロナウイルスの影響で移動が制限されたことで、世界的にガソリン需要が縮小しているようだ。一方で価格は高騰しており、一向に下落の兆しを見せない。この記事では、ガソリン代の安い・高い都道府県を紹介しつつ、ガソリン価格決定のメカニズムに迫る。

レギュラーガソリン代が安い都道府県TOP5

経済産業省資源エネルギー庁が毎週発表している石油製品価格調査をもとに、レギュラーガソリン代が安い都道府県ランキングトップ5を調べてみた。なお、数値は2021年8月23日付のものを使用しており、全国平均は158.2円となっている。

<レギュラーガソリン代が安い都道府県TOP5>

順位 都道府県名 レギュラー価格
1位 埼玉県 151.6円
2位 宮城県 152.4円
3位 岩手県 153.4円
4位 青森県 153.6円
5位 秋田県 153.6円

1位は関東地方の埼玉県だったが、2~5位は東北勢が占める結果となった。埼玉県は1都6県で構成される関東地方の中では最安値の常連で、全国平均と比較すると6.6円安い。

レギュラーガソリン代が高い都道府県TOP5

同様に、レギュラーガソリン代が高い都道府県ランキングトップ5も調べてみた。

<レギュラーガソリン代が高い都道府県TOP5>

順位 都道府県名 レギュラー価格
1位 長崎県 167.5円
2位 鹿児島県 167.1円
3位 大分県 164.9円
4位 長野県 164.2円
5位 山形県 163.7円

九州3県がトップ3を占める結果となった。4位は中部地方の長野県、5位は東北地方の山形県と、各エリアの価格差には地理的な要因だけでは説明しきれない「何か」がありそうだ。

なぜガソリン価格に違いが出るのか?

ガソリン価格に地域差が生じる理由の一つは、ガソリンを精製する精油所からの距離だ。精油所から離れるほど輸送コストがかさむため、精油所に近いエリアは安く、遠いエリアは高くなる。

基本的に精油所は海岸近くに建設されるため、内陸に位置する長野県のガソリン価格が高いのもうなずける。

小売業などと同様に、ガソリンスタンドの立地が価格に影響することもあるだろう。人口密度の高い都市部では競合店が多いため、価格競争が起こりやすい。一方で地価が高いため、スタンドのランニングコストは地方に比べて高くなる。

ガソリンには、1リットルあたり53.8円の揮発油税などの税金が課せられている。おまけに消費税も課税されており、各スタンドは常にシビアな価格設定を強いられているといえるだろう。

消費者にとっては「たかが1円の差」かもしれないが、事業者にとって1円の差は非常に大きく、経営を左右する。そのため各スタンドは原油価格をもとに、ガソリン価格を細かく変えているのだ。

最近ガソリン価格が高騰している理由は?

日本はガソリンの原料となる原油を輸入に頼っており、価格は石油産出国の情勢に大きく左右される。石油輸出国機構(OEPC)加盟国の動向に加え、世界の経済状況や紛争などの懸念材料を勘案し、石油産出各国は減産や増産を行う。この調整によって、原油価格は大きく変動するのだ。

新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2020年春頃、石油産出各国は需要の縮小を理由に減産を進め、原油価格は一時大きく下落した。これを反映し、国内のガソリン平均価格は2020年2月の150円台から徐々に下落し、同年5月には120円台まで下げている。

その後数ヵ月は安定したが、同年の秋頃には再び原油価格が上昇に転じた。コロナは変わらず蔓延していたが、世界的に景気が回復基調にあると判断されたためだ。この動きに投機マネーが加わり、原油高を後押ししている可能性もある。

国内のガソリン価格もこれにともなって上昇し始め、2021年2月に140円台、同年3月には150円台を突破している。