かつては郊外型紳士服専門店と呼ばれた4大紳士服チェーンだが、現在少子化・カジュアル化で苦境に喘いでいるが、それに加えて今回のコロナ禍で4社はすべて赤字転落している。各社の最新決算を見てみると(以下、1億円以下切り捨て):

  • 青山商事(21年3月期):売上高 1614億円(-25.9%)/営業利益 -144億円(前年8億円)/経常利益 ―114億円(前年15億円)/親会社帰属の純利益 -388億円(前年ー169億円)
  • AOKIホールディングス(21年3月期):売上高 1431億円(-20.6%)/営業利益 -57億円(前年66億円)/経常利益 -66億円(前年55億円)/親会社帰属の純利益-119億円(前年4億円)
  • コナカ(20年9月期):売上高 478億円(-21.2%)/営業利益 -49億円(前年7300万円)/経常利益 -66億円(前年4億円)/親会社帰属の純利益-129億円(前年-53億円)
  • はるやまホールディングス(21年3月期):売上高 382億円(-24.4%)/営業利益 -36億円(前年3億円)/経常利益 -30億円(前年6億円)/親会社帰属の純利益-48億円(前年4億円)

 このトップ4社の苦境を見ると、縮小する市場&コロナ禍の中では4社とも経営の舵取りを一つ間違えれば奈落の底に落ちることもありそうである。もっと言えば、上位2社はなんとか生き延びても、3位コナカ、4位はるやまホールディングスに関しては、上位2社による吸収・合併がいつあっても不思議ではない情勢だ。とくに、第1位青山商事と第2位のAOKIホールディングスの差がかなり詰まっており、逆転があるのではないかという感じがする。

 実際2006年には紳士服チェーン第7位だったフタタに対して、第2位のAOKIホールディングス、第4位のコナカの両社から完全子会社化案が提案されていたが、フタタはコナカとの完全子会社になるための株式交換を選択するという買収劇があり、コナカは第3位にランクアップしている。その後コナカはハンドバッグメーカーの上場企業でもあるサマンサタバサジャパンリミテッドを買収するなどM&A戦略を本格化させている。

そんな情勢下で第4位のはるやまHDにお家騒動が持ち上がっている。

 6月24日付の日経新聞によれば、昨年6月の株主総会で創業家(治山正史現社長の姉の岩渕典子氏や父であるはるやま創業者の治山正次氏など)や一部の投資家などから治山正史社長の取締役再任に反対票が投じられたが、51%対49%で辛くも再任可決となっていた。

そして今年6月29日の株主総会で再び治山正史社長の取締役再任反対の動議が行われることになっている。不正防止のため創業家側は岡山地方裁判所に総会の招集手続きや決議方法を調査する検査役を選任するように申し立てを行い、会社側は裁判所の指示に従い、岡山ひかり法律事務所の森智幸弁護士を検査役に選任した(6月23日)。創業家側は正史社長取締役再任反対の理由として「ワンマン経営が過ぎて社員の実力が発揮できないため」としている。

 治山正史社長側はAOKIホールディングス取締役副社長だった中村宏明氏(57歳、現在るやま商事代表取締役社長)をスカウトし、今回の株主総会で代表取締役社長に就任させ、治山正史社長は代表権のない取締役会長になる異動案を6月29日の株主総会で提案する予定だ。社長側はこれで幕引きを狙ったが、創業家側はこれには応じず治山正史氏の取締役解任を動議する予定だ。創業家側らは昨年と同じく正史氏の取締役罷免を要求するとともに新たな社長候補を提案するかもしれない。

 その決定は株主による投票ということになるが、創業家側は総株数の24%程度、社長側は20%程度を抑えていると見られており、その結果は約30%を占める一般株主の投票如何によると見られている。いわゆるプロクシーファイト(株主委任状争奪戦)になるが、昨年も少差で社長側が勝ったように接戦になりそうだ。なにやら大塚家具の父と娘の経営権争いを思い出させるような経営をめぐるお家騒動だ。

 気になるのは新社長候補として社長側が連れてきた中村宏明氏が業界2位AOKIホールディングス出身だということ。偶然ではあり得ないし、わざわざ同業からスカウトすることはないとも思うが、この両社には何か「密約」のようなものがあるのだろうか。このあたりもなかなか意味深ではある。いずれにしても大注目の6月29日のはるやまホールディングスの株主総会ではある。

文・三浦彰/提供元・SEVENTIE TWO

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