新型コロナウイルスの影響で、世界各国の航空会社では運休や減便が続いてきましたが、ワクチン接種の進展などを背景に、運航再開や増便、新規路線就航の動きが目立ち始めています。

IATA(国際航空運送協会)による2021年3月世界旅客輸送実績によれば、国際線と国内線の合計で、有償旅客の輸送距離を示すRPK(有償旅客キロ)はコロナ禍以前の2019年同月と比較して67.2%減に、座席供給量を示すASK(有効座席キロ)は56.8%減となり、ロードファクター(座席利用率、L/F)は19.7ポイント低下の62.3%でした。

またIATAとTourism Economicsは、世界の旅客数は2021年に、コロナ禍以前の水準である2019年の52%まで回復し、2022年には88%、2023年にはコロナ以前の水準を上回って105%になると予測しています。

さらにIATAは、航空のスムーズな再開に向けて、検査やワクチン接種の証明などの健康管理に対応するため、デジタル化が欠かせないと強調しています。

目次

  1. 【アジア】日本や香港で国際線再開、台湾でも新規路線就航
    1. 日本国内
    2. 韓国
    3. 香港
    4. 台湾
  2. 【東南アジア】7月からタイ・プーケットで観光客受入れ開始、国際線の再開や増便相次ぐ
    1. タイ
    2. シンガポール
    3. フィリピン
    4. ベトナム
    5. インド
  3. 【北・南米】コロナワクチン接種進展で運航拡大
    1. アメリカ
    2. ハワイ
    3. メキシコ
  4. 【オセアニア】オーストラリアの国際線再開時期は12月下旬の見込み
    1. オーストラリア
  5. 【ヨーロッパ】旅行再開に向けゆるやかな動き、EUで域外からの渡航制限緩和
    1. フランス
    2. ドイツ
    3. EU
  6. 【中東】カタール航空、ジェットブルー航空とのコードシェア拡大
    1. カタール

【アジア】日本や香港で国際線再開、台湾でも新規路線就航

日本では、2020年の利用実績は前年比大幅減となったものの、国際線の再開や増便の動きも出てきているほか、トラベルパスの導入など新たな取り組みも進められています。

香港や台湾などでも、国際線の再開や新規路線の就航などの動きがみられています。

日本国内

2020年実績は前年比大幅減

5月10日にANAが発表した2020年度通期の利用実績によると、国際線の旅客数は前年度比95.5%減の42万7,392人で、L/Fは53.3ポイント低下し19.6%に、国内線は旅客数が72.5%減の1,055万282人で、L/Fは24.2ポイント低下し43.1%となりました。

また、日本トランスオーシャン航空(JTA/NU)と琉球エアーコミューター(RAC)、日本航空(JAL/JL、9201)沖縄支店による、2020年度の輸送実績速報値によれば、JTAの旅客数は前年同期比58.9%減となる127万5,194人で、L/Fは29.3ポイント低下し46.6%となりました。

またJALが5月7日に発表した、2021年3月期通期連結決算は、最終損益が2,866億9,300万円の赤字となり、スターフライヤーの同決算も、純損益が100億6,700万円の赤字となりました。

JALやANA、スカイマークなど航空10社が5月6日に発表したゴールデンウィークの利用実績によれば、10社の発表値の合計で、旅客数は国際線が前年同期比2.63倍の2万757人、国内線は10.37倍の108万5,752人となりました。

コロナ禍以前の2019年同期と比較すると、旅客数は国際線が97.3%減、国内線は72.8%減となっています。

JALの2021年3月利用実績は、国際線の旅客数が前年同月と比べ81.8%減の4万662人で、L/Fは21.7ポイント低下し14.8%になるなど大幅な前年割れが続いています。

国内線は旅客数が21.0%減の117万4,457人で、L/Fは25.4ポイント上昇し63.7%となりました。

国際線の再開や増便の動きも

JALは成田発着の釜山と高雄の2路線を当面運休し、成田~シカゴ線などの開設を延期すると発表しました。

一方でANAは、成田発着のサンフランシスコ線とジャカルタ線を7月から再開するほか、ロサンゼルス線とシンガポール線を増便する予定で、5月から6月には、帰国需要向けの関西行き臨時便を、シカゴとサンフランシスコから運航します。

またZIPAIRは5月27日、運休中の成田~ホノルル線を7月21日から週1往復で再開すると発表しました。

ANAで新たな取り組み続々

5月7日、ANAは羽田空港の国内線保安検査場入り口に、フラッパー付き自動ゲートを導入し、11日から順次導入すると発表しました。

5月11日には、IATA(国際航空運送協会)が開発しているスマートフォン用デジタル証明書アプリ、「IATAトラベルパス」の実証実験を、5月24日から6月6日まで実施することも発表しました。

さらに5月20日には、ANAを傘下に持つANAホールディングスが、スマートフォンを使ってバーチャル空間での旅行や買い物などが楽しめるプラットフォーム「SKY WHALE(スカイホエール)」を開発し、2022年からサービスを始めると発表しました。

韓国

アシアナ航空は5月17日に1~3月期の連結決算を発表し、売上高は前年同期比30.6%減となる7,834億ウォン(約753億円)で、営業損失が112億ウォン、当期純損失が2,304億ウォンと前年同期より赤字規模は縮小しました。

同社は昨年の4~6月期から3四半期連続で黒字を計上していましたが、2021年1~3月期は貨物部門の閑散期により損失が生じたとみられます。

同社の関係者は今後について、新型コロナウイルスワクチン接種の拡大と入国規制緩和傾向により、旅行需要の回復を見込んでいるとしています。

香港

キャセイパシフィック航空は、5月21日からのドバイ線の再開をはじめ、世界各地へのフライトを再開しています。

中国本土の7都市のほか、北米5都市、アジア13都市、オセアニア4都市、ヨーロッパ3都市、中東2都市へ路線を展開します。

日本路線は、週2便ずつ、東京/成田・大阪/関西と香港を結ぶ2路線のみ運航を継続しており、6月1日以降は東京/成田〜香港線を週3便に増便するとみられます。

台湾

チャイナエアラインは、5月の成田/台北・桃園線を週3往復から週2往復に減便します。

新型コロナウイルス緊急事態宣言などに伴う対応とみられますが、他の日本3路線の5月・6月のスケジュールには変更はありません。

また、5月13日、「ブティック・エアライン」として上質なサービス提供を目指すスターラックス・エアラインズは、台北/ホーチミン線に就航しました。

水、木、土の週3便の運航で、使用機材はA321neoとなっています。

台北・台湾桃園国際空港を拠点して、2018年5月に設立された同社は、2020年1月23日に運航を開始し、コロナ禍でも徐々に就航路線を拡大しています。

【東南アジア】7月からタイ・プーケットで観光客受入れ開始、国際線の再開や増便相次ぐ

東南アジアでは、7月からタイのプーケットでワクチン接種済みの外国人観光客を隔離なしで受け入れが開始されるのに先立ち、国際線の航空券発売や路線再開の動きが出てきています。

その他にも、各国で新規路線の就航や国際線再開が発表されています。

タイ

タイ国際航空は、ヨーロッパ4都市からプーケット行きの航空券の販売を開始しました。

タイ南部のリゾート地であるプーケットで、7月からワクチン接種済みの外国人旅行者を隔離なしで受け入れることに先立つもので、パリ、フランクフルト、ロンドン、コペンハーゲンの4都市の予約受付が始まっています。

行きはプーケットへの直行便で、帰りはバンコク経由の三角運航となっています。

7月からは、ソウル~プーケット線のほか、台北~プーケット線の運航も予定されており、東京~プーケット線についても開設に向けたスケジュールが調整中とされています。

シンガポール

5月12日、シンガポール航空(SIA/SQ)は、成田経由のシンガポール~ロサンゼルス線を6月16日から再開すると発表しました。

貨物便としての利用増加も見込み、ボーイング777-300ER型機で週5往復で運航する予定です。

さらに同社は、ワクチン接種済みの外国人旅行者の隔離なしでの受け入れが始まる、タイのプーケットへの路線を、7月1日から大幅に増便し、週7便体制とします。

フィリピン

セブパシフィック航空は、3月から運休していた成田/マニラ線の運航を、6月2日から再開します。

また同社は5月にアドオン・サービス「CEBFlexi(セブフレキシ)」の強化を発表しており、日本~フィリピン間の場合、初回予約時に2,800円を支払うことで、出発の2時間前まで無料で予約をキャンセルすることができます。

キャンセルした航空券代金は、次回の旅行で使えるトラベル・ファンドに引き換えが可能となっています。

ベトナム

ベトナム航空は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う入国規制などをふまえ、6月までの日本路線について、ハノイ発成田行きの片道便のみ運航し、他の全便を運休継続します。 またベトナムの新興航空会社である、バンブーエアウェイズは、2021年9月1日から、ホーチミンのタンソンニャット空港発着で、ロサンゼルスとサンフランシスコへの直行便を運航する発着枠を取得したと発表しました。

現状ではベトナムとアメリカの間には直行便は無いため、就航が実現すれば、直行便を運航する唯一の航空会社になります。

インド

インドのタタ・グループとシンガポール航空が共同で設立した航空会社であるビスタラは、6月16日から羽田~デリー線に就航する計画を発表しました。

水曜にデリー発、木曜に羽田発の週1便の運航で、ボーイング787-9型機が使用され、日本発の往復価格は9万99円から設定されています。

ビスタラは日本航空やシンガポール航空とのコードシェアで、日本への乗り入れを行っていますが、自社運航便としてはこれが初めての就航となります。

【北・南米】コロナワクチン接種進展で運航拡大

アメリカでは新型コロナウイルスワクチン接種の進展を受けて、国内線・国際線の運航拡大が進められています。

さらにアメリカの空港ラウンジへのタッチレス入室の実証や、ハワイの空港でNECの水際対策システムが運用開始されるなど、新たな感染拡大防止対策も進んでいます。

アメリカ

アメリカ3大航空会社である、アメリカン航空とデルタ航空、ユナイテッド航空は、新型コロナワクチン接種の進展による航空需要の増加傾向を受け、サービスや運航便の拡大を進めています。

アメリカン航空では、5月初旬からアドミラルズクラブ・ラウンジを各地で再開し、ダラス・フォートワース国際空港ターミナルAのアドミラルズクラブでは、タッチレスで入室する実証を開始しました。

デルタ航空では、観光客にもワクチン接種を実施するニューヨーク発着便を拡大し、7月には1日300便運航にまで便数を回復させる予定です。

さらにユナイテッド航空は、7月には6月と比べて1日400便追加し、コロナ禍前の約80%のアメリカ国内線を運航する予定で、イタリアとスペインへの運航を7月から拡大するなど国際線も強化します。

ハワイ

5月20日、NEC(日本電気)が納入した、顔認証・映像分析技術とサーマルカメラを組み合わせた渡航者の体表温度スクリーニングシステムが、ハワイの5空港で運用開始されました。

体温が38度以上の人を検知すると、空港内の監視制御室にいる係員に通知が行われます。

新型コロナウイルス感染症の水際対策として、ホノルルのダニエル・K・イノウエ国際空港(オアフ島)のほか、エリソン・オニヅカ・コナ国際空港(ハワイ島)、ヒロ国際空港(ハワイ島)、カフルイ空港(マウイ島)、リフエ空港(カウアイ島)で導入されました。

またハワイアン航空では、特にマウイ島を中心に第1四半期に需要が回復していることに対応し、夏の繁忙期に向けて400人以上を採用します。

一方で同社は5月27日、2014年に設立したブランド「オハナ・バイ・ハワイアン」のサービスを終了すると発表しました。

小規模空港のモロカイ島、ラナイ島、マウイ島カパルアへの路線を開設し、エンパイア航空に運航を委託していましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で運航の終了や運休が続いていました。

メキシコ

アエロメヒコ航空は、成田〜メキシコシティ線を2021年8月まで運休します。

各国の入国制限や水際対策措置の継続に伴うもので、成田発は9月1日、メキシコシティ発は8月31日まで全便を運休し、9月以降の運航は状況に応じて判断されます。

【オセアニア】オーストラリアの国際線再開時期は12月下旬の見込み

オセアニアでは、オーストラリアの航空会社が、新型コロナウイルスワクチン接種のスケジュールの遅れを受けて、国際線再開時期を2021年12月下旬に後ろ倒ししました。

オーストラリア

カンタス・グループは5月12日、国際線の再開時期を2021年12月下旬としました。

オーストラリア連邦政府が、ワクチン接種の完了を2021年末、世界各国からの旅客受け入れを2022年半ばと修正したことを受けて、2021年10月末の予定から後倒ししたものです。

オーストラリアの航空会社では、ヴァージン・オーストラリア・グループも、インドネシアやフィジーなど短距離国際線の運航を2021年12月まで再開を先延ばしすると発表しました。

旅客便が再開される12月までは、国際線では移動が必要な旅客向けの運航と貨物便を運航するほか、国内線の旅行需要の回復に注力します。

【ヨーロッパ】旅行再開に向けゆるやかな動き、EUで域外からの渡航制限緩和

ヨーロッパでは旅行再開に向けた動きがゆるやかに進んでいます。

イタリアは、ヨーロッパとイスラエルからの旅行者に対し、PCR検査が陰性ならば入国後の隔離義務を解除するとしたほか、イギリスでは5月17日に、レジャー旅行を認める「グリーンリスト」国への最初のフライトが実現しました。

一方で今年の夏も、アメリカからの旅行者の回復は難しいとみられています。

またヨーロッパでは、気候変動など環境問題への対応策として、近距離の航空路線を縮小する動きが広がっています。

フランス政府は、2時間半圏内の国内線を禁止する法案を審議しており、可決される見通しとなっています。

フランス

フランスのエールフランスと、オランダのKLMオランダ航空の持株会社であるエールフランスKLMは、5月6日に2021年1~3月期決算を発表しました。

最終損益は14億8,100万ユーロ(約1,940億円)の赤字(前年同期は18億100万ユーロの赤字)となりました。

欧州における新型コロナウイルス感染の第3波による外出制限で、需要が低調となっており、ワクチン接種の進むアメリカでは国内需要中心に回復が見られるものの、主力の欧州では悪影響が続いています。

また1~3月の座席提供数は、2019年比48%という水準でしたが、4~6月に50%、7~9月に55~65%と、緩やかな回復の見通しを示しました。

ドイツ

ドイツでは、ルフトハンザ・ドイツ航空が、7月3日から名古屋/中部〜フランクフルト線の運航を再開します。

名古屋/中部発は火・木・日曜に、フランクフルト発は月・水・土曜の週3便で運航され、機材はエアバスA340-300型機が使用されます。

EU

5月3日、欧州委員会は、EU域外からの不要不急の渡航について、制限を緩和する方針を示しました。

渡航の少なくとも2週間以上前に、EUが承認する新型コロナウイルスワクチンを接種していることが条件とされています。

また欧州議会は、夏季休暇に向けデジタル・グリーン証明書の導入を可決しました。

【中東】カタール航空、ジェットブルー航空とのコードシェア拡大

中東では、カタール航空がジェットブルー航空とのコードシェアを拡大しています。

カタール

カタール航空は、ジェットブルー航空との戦略的パートナーシップを拡大しました。

カタール航空が運航する、アメリカとドーハを結ぶ9路線と、ドーハやアンマン、シンガポールなどを結ぶ路線でコードシェアを実施し、ジェットブルー航空の便名を付与するものです。

さらに当局の承認を条件として、ドーハとアディスアベバ、ナイロビ、キガリを結ぶ路線も追加し、2021年の後半には、相互のマイル獲得やマイル交換も可能となる見通しです。


文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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