空港ラウンジはカード会社が運営するラウンジの他に、航空会社ラウンジもある。より手厚いサービスを受けられるのがメリットだが、実はANAやJALが展開する航空会社ラウンジを利用できるクレジットカードは多くない。ここでは、航空会社ラウンジを利用できるクレジットカード4枚について詳しく見ていこう。

1,航空会社ラウンジとは?カード会社のラウンジとの2つの違い

一般的にゴールドランク以上のクレジットカードでは、国内主要空港(ハワイや韓国の空港が加わることもある)で空港ラウンジを無料で利用できるサービスが提供される。

そのサービスで利用できるラウンジは「カードラウンジ(クレジットカードラウンジ)」と呼ばれ、航空会社が運営するラウンジとは区別される。

まずは、2つの空港ラウンジの違いを説明しよう。

違い1,利用対象の違い

カードラウンジはゴールドカードなどの会員のほか、所定の料金を支払えばそれ以外の人でも利用できる。

一方で航空会社ラウンジは一部の例外を除き、ビジネスクラスやファーストクラス、プレミアムエコノミーを利用(JAL国際線の場合は割引適用のないエコノミー「Flex Y」でも可)するか、フライト利用が多い顧客に与えられる航空会社の上級会員資格がないと利用できない。

ANAカードやJALカードなどの航空系ゴールドカード・プラチナカードでも、その多くはカードラウンジしか利用できず、航空会社ラウンジを使えるカードはほんの一握りだ。

違い2,グレード・サービス内容の違い

端的に言えば、航空会社ラウンジはカードラウンジより内装などのグレードが高く、サービス内容も充実している。

飲食を例に挙げると、一般的にカードラウンジで無償提供されるのはソフトドリンクとスナックなどの軽食だが、国内線の航空会社ラウンジではアルコール飲料や本格的な軽食も無料であり、国際線の航空会社ラウンジでは一食として十分な内容の食事まで無料だ。

また国際線の航空会社ラウンジなどには、無料で利用できるシャワーが完備されているところもある。

――まとめると、カードラウンジはグレードやサービス内容がそれほどではない代わりに利用のハードルが低く、航空会社ラウンジはグレードやサービス内容が充実している代わりに利用のハードルが高く設定されている、と考えてよいだろう。

2,プライオリティ・パスで航空会社ラウンジは使えるのか?

プラチナランク以上のクレジットカードは、プライオリティ・パスに無料で登録できるものが少なくない。プライオリティ・パスとは世界148ヵ国、600を超える都市にある1,300ヵ所以上の空港ラウンジを対象としたサービスのことで、多くのプラチナカードではそれらのラウンジを無料で利用できる会員ランクが提供される。

プライオリティ・パスでは一部の航空会社ラウンジも利用できるが、JALやANAのラウンジは含まれない。参考までに、プライオリティ・パスで利用できる航空会社ラウンジの例を紹介しておこう。

空港名 ラウンジを利用できる
航空会社の例
成田国際空港 大韓航空
中部国際空港 大韓航空
福岡国際空港 大韓航空
上海浦東国際空港 中国東方航空
北京首都国際空港 エアチャイナ
ニューヨーク・ジョン・F・
ケネディ国際空港
エールフランス
ロサンゼルス国際空港 ヴァージンア
トランティック航空
サンフランシスコ国際空港 エールフランス
トロント・レスター・B・
ピアソン国際空港
エールフランス-
KLMオランダ航空
フランクフルト・アム・
マイン国際空港
エールフランス

3,航空会社ラウンジを使えるクレジットカードはあるか?

前述のとおり、航空系クレジットカードだからといって航空会社ラウンジを使えるとは限らない。ここではANAとJALについて説明しよう。

ANAの場合

ANAの「ANAラウンジ」に関しては、プラチナランクにあたる「ANAカードプレミアム」の会員は国内線ANAラウンジを利用できる。

「ANAスーパーフライヤーズカード」では国内線・国際線問わずANAラウンジを利用できるが、そもそもこのカードはANAマイレージクラブの上級会員(プレミアムメンバー)でないと作れないので、カードの有無はラウンジの利用可否に直結しない。

JALの場合

JALの「JALサクララウンジ」については、どのランクのJALカードを持っていても基本的には利用できない。しかし、レクサスカードなど「JALサクララウンジ」を利用できるクレジットカードは存在する。

それ意外の利用方法としてはJALの会員組織「JALグローバルクラブ」の入会に伴って作成するクレジットカード「JALグローバルグループカード」で、サクララウンジを利用できる。ただし、JALマイレージバンク上級会員(ステイタス会員)でなければ入会できないので、その時点でラウンジ利用資格を満たしていることになる。

付け加えておくと、例外的に羽田空港国内線の「ANAラウンジ」と「JALサクララウンジ」だけは、所定の料金を支払うと誰でもラウンジを利用できる。空港ラウンジがどういうものか体験してみたい人は、利用するとよいだろう。

4,航空会社ラウンジを使えるクレジットカード4選

ここからは、航空会社ラウンジを使えるクレジットカードを紹介しよう。

1,ANAカードプレミアム

プラチナランクのANAカード「ANAカードプレミアム」には、三井住友カード発行の「ANA VISAプラチナ プレミアムカード」のほか、JCB発行の「ANA JCB カードプレミアム」、三井住友トラストクラブ発行の「ANAダイナース プレミアムカード」、アメリカン・エキスプレス発行の「ANAアメリカン・エキスプレス・プレミアム・カード」がある。

ここでは「ANA VISAプラチナ プレミアムカード」を紹介しよう。

・基本スペック

年会費 8万8,000円(税込)
家族会員4,400円(税込)
国際ブランド VISA
通常マイル還元率 1.5%
ANA航空券購入時の
マイル還元率
3.5%
旅行傷害保険 海外最高1億円(自動付帯・家族特約付き)
国内最高1億円(自動付帯)
最高5,000万円の国内航空傷害保険(自動付帯)
渡航便遅延保険 4万円限度
(海外自動付帯・国内利用付帯)
その他の付帯保険 年間500万円限度の
ショッピング保険

・メリット
前述のとおり、「ANAカードプレミアム」では国内線のANAラウンジを利用できる。また、成田空港のアライバルラウンジ(到着した国際線から国内線へ乗り継ぎする乗客のためのラウンジ)も利用可能。このラウンジは、国内線ANAラウンジよりもドリンクや食事のグレードが高い。

さらに、三井住友カードが提供する国内空港ラウンジサービスとプライオリティ・パスも利用できる。海外・国内とも最高1億円の旅行傷害保険のほか、航空機搭乗時のケガなどを補償する最高5,000万円の国内航空傷害保険、4万円限度の渡航便遅延保険も付帯しており、旅行を強力にバックアップしてくれる。

・デメリット
年会費が8万8,000円(税込)と高額であり、ANAラウンジのためだけに取得するとなると割高感がある。これはデメリットと言えるだろう。

しかし「ANAダイナース プレミアムカード」(年会費税込17万500円)や「ANAアメリカン・エキスプレス・プレミアム・カード」(年会費税込16万5,000円)に比べると半額程度なので、特典やサービス内容が自分のニーズにマッチすればリーズナブルな1枚となるだろう。

・どんな人におすすめなのか?
国内では主にANAグループ便を使い、定期的に国際線も利用する人におすすめしたい。プラチナランクのカードに相応しくトラベル、レジャー、グルメ分野のサービスが充実しているので、ハイスペックでハイステータスなカードをリーズナブルな年会費で持ちたい人に向いているだろう。

2,レクサスカード

「レクサスカード」は、トヨタの高級車であるレクサスのオーナーだけが作れるクレジットカードだ。申し込める人が限られるカードだが、参考までに紹介しておこう。

・基本スペック

年会費 2万2,000円(税込)
家族会員無料
国際ブランド VISA
通常ポイント還元率 1~1.5%
マイル還元率 0.5%
旅行傷害保険 海外(自動付帯・補償金額非公開)
国内(自動付帯・補償金額非公開)
渡航便遅延保険
その他の付帯保険 ショッピング保険
(補償金額非公開)

・メリット
「JALサービスコース」(無料)に申し込むと、JALグループ便利用時に国内線・国際線ともそれぞれ年2回ずつ「JALサクララウンジ」を利用できる。JALカードの最上位「JALカード プラチナ」でも利用できないJALサクララウンジを、回数制限があるとはいえ利用できるのは大きなメリットといえるだろう。

その他、国内33空港・海外2空港(ハワイ・韓国)の空港ラウンジを利用できるサービスも提供。中部国際空港では、「レクサスカード」会員と「TS CUBIC CARDゴールド」会員専用の「QUALIA LOUNGE(クオリアラウンジ)」を利用できる。

・デメリット
レクサスオーナー限定のカードなので、持てる人が限られるのはデメリットといえる。

・どんな人におすすめなのか?
レクサスを買えるような人にとっては年会費が安く、ガソリン割引やクルマ周りの特典・サービス、VISAがプラチナカード向けに提供する優待なども充実している。レクサスオーナーであれば、持っていて損はないだろう。

3,デルタスカイマイル・アメックスゴールド

デルタ航空の空港ラウンジ「デルタ スカイクラブラウンジ」を利用できるカードはいくつかある。三井住友トラストクラブ発行の「デルタ スカイマイル TRUST CLUB ゴールドVISAカード」と「デルタ スカイマイル ダイナースクラブカード」では年3回(あるいは3名まで)、「デルタ スカイマイル TRUST CLUB プラチナVISAカード」では年6回(あるいは6名まで)のラウンジ利用が可能だ。

ここでは「デルタ スカイクラブラウンジ」を無制限で利用できる、アメリカン・エキスプレス発行の「デルタスカイマイル・アメックスゴールド(デルタ スカイマイル アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード)」を紹介しよう。

・基本スペック

年会費 2万8,600円(税込)
家族会員無料
国際ブランド アメリカン・エキスプレス
通常マイル還元率 1%
デルタ航空券購入時の
マイル還元率
3%
旅行傷害保険 海外最高1億円(自動付帯)
国内最高5,000万円(利用付帯)
渡航便遅延保険
その他の付帯保険 年間500万円限度のショッピング保険
年間10万円限度のキャンセル・プロテクション
(キャンセル補償)
年間15万円限度のリターン・プロテクション
(返金補償)

・メリット
「デルタスカイマイル・アメックスゴールド」の会員になるとデルタ航空の上級会員資格「ゴールドメダリオン」が提供され、「デルタ スカイクラブラウンジ」のほか航空連合「スカイチーム」加盟航空会社のラウンジも無制限で利用できる。

スカイチーム加盟航空会社はデルタ航空のほか、チャイナエアライン、中国東方航空、大韓航空、アエロフロート、アリタリア-イタリア航空、KLMオランダ航空、エールフランスなど。このうちエールフランスやチャイナエアライン、大韓航空など一部の航空会社便利用時は、デルタ航空のゴールドメダリオン資格によって羽田空港国際線の「JALサクララウンジ」も利用できる。これは大きなメリットといえるだろう。

・デメリット
国際ブランドとしてのアメリカン・エキスプレスはVISAやMastercardと比べると加盟店数が少なく、これ1枚で海外旅行に出かけるのは心もとない。この点はデメリットといえるだろう。

・どんな人におすすめなのか?
プライオリティ・パスの提供はないが、デルタ航空を含めスカイチーム加盟航空会社の利用が多い人であれば、空港ラウンジサービスの面ではこれ1枚で事足りるだろう。

4,MileagePlusセゾンプラチナカード

ユナイテッド航空提携クレジットカードである「MileagePlusセゾンプラチナカード」では、回数は限定されているものの同社空港ラウンジ「ユナイテッドクラブ」を利用できる。

・基本スペック

年会費 5万5,000円(税込)
家族会員無料9,900円(税込)
国際ブランド VISA
アメリカン・エキスプレス
通常マイル還元率 1.5%
旅行傷害保険 海外最高1億円(自動付帯)
国内最高1億円(利用付帯)
渡航便遅延保険
その他の付帯保険 年間500万円限度の
ショッピング保険

・メリット
ユナイテッド航空のラウンジ「ユナイテッドクラブ」の利用パスが、毎年2枚進呈される。「ユナイテッドクラブ」は世界45ヵ所以上に設置され、アルコール飲料を含むドリンク類や朝食、午後の軽食などが無料で提供される。

また同乗者を含め、ユナイテッド航空便への優先搭乗が可能だ。

・デメリット
プライオリティ・パスの提供がないため、年会費5万5,000円(税込)の航空系クレジットカードとしては、空の旅関連のサービスが少し物足りない印象がある。

・どんな人におすすめなのか?
ユナイテッド航空の利用が多い人におすすめできるカードだ。国際ブランドにアメリカン・エキスプレスを選ぶと、空港手荷物無料宅配サービスや高級ホテル優待などを利用できるので、自分のニーズに応じて検討するとよいだろう。

5,「JALサクララウンジ」を利用する2つの方法

「JALサクララウンジ」に関しては、以下の2つの方法でも利用可能だ。

方法1,JALカード+JAL CLUB ESTへの入会

20歳以上30歳未満のJALカード会員が申し込める「JAL CLUB EST」というサービスがある。

カード年会費とは別にサービス年会費として、普通カードとCLUB-Aカードでは5,500円(税込)、CLUB-Aゴールドカードとプラチナでは2,200円(税込)が必要になるが、これに入会するとJALグループ国内線利用時に年間5回まで、同行者1名を含めて「JALサクララウンジ」を利用できる。

方法2,dポイントクラブのプラチナクーポンへの応募

ドコモ回線を15年以上継続利用するか、6ヵ月間のdポイント獲得数が1万ポイント以上に達すると「dポイントクラブ」のプラチナステージとなり、「JALサクララウンジ」を利用できるクーポンの抽選に応募できる。あくまで抽選なので、確実に入手できるわけではない。

プラチナステージになるには短期間でdポイントを大量に獲得する必要があるため、ドコモのクレジットカード「dカード」や「dカードGOLD」の利用は欠かせないだろう。

6,カードを申し込む前の注意点

必須ではないが利用できるとありがたいのが空港ラウンジであり、それが航空会社ラウンジだとさらにありがたみは増す。

航空会社ラウンジを使えるクレジットカードは少ないが、ラウンジ以外のサービス内容と年会費も考慮して自分に合う1枚が見つかれば、空の旅をリッチにしてくれるだろう。

なお2021年1月現在、新型コロナウイルス感染防止の観点で休止している空港ラウンジは多く、今後は各カードにおける空港ラウンジサービスの仕組みも変わる可能性がある。ここで紹介したカードへの入会を考えている人は、申し込む際にあらためてカード会社や航空会社の公式サイトで最新情報を確認してほしい。

モリソウイチロウ
執筆・モリソウイチロウ
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカードに詳しく、専門サイトでの執筆も行っている。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカードに詳しく、専門サイトでの執筆も行っている。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

この筆者の記事を見る

【関連記事】
ポイント還元率の高いクレジットカード10選
ポイントがよく貯まるクレジットカード5選 効率的な貯め方も紹介
最大還元率2.2%「リクルートカード」の特徴を解説
ポイント還元率の高いSuica付帯のクレジットカード8選
陸マイラーが得する!マイルが貯まるクレジットカード10選
Visa、JCB、MasterCardの違い