コロナ禍によって人の流れが1年以上分断され、大きな打撃を受けているインバウンド関連業界。しかし世界ではワクチン接種が進んでいるエリアから徐々にゲートが開かれ、観光産業が再び息を吹き返そうとしています。

今でも世界の旅行好きの間では旅の情報収集を継続しており、コロナ禍での情報発信の重要性は一層高まっています。

とはいえ文化が違う相手に日本国内と同じPRのやり方では、その効果も限定的になってしまうかもしれません。

お隣の台湾は親日家が多く、もっとも訪日旅行を熱望する人がいる国の一つです。そんな台湾と日本とでは、広告のクリエイティブにどのような違いがあるのでしょうか。

今回は台湾現地に本社を持ち、広告・SNS運用を得意とするCAKEHASHI(カケハシ)corporation.の代表取締役社長の秋山光輔氏による、日本と台湾のバナー広告のクリエイティブの違いについて考察した記事を紹介します。

目次

  1. 本テーマの記事を見ることで身につく知識
  2. 1. 日本に近しい台湾も、PRや訴求点の違いがある理由
  3. 2. 「牛乳石鹸」のクリエイティブで比較
  4. 3. KIRIN淡麗グリーンラベルのクリエイティブで比較
  5. 4. 花王SofinaのPrimavistaのクリエイティブで比較
  6. 5. 感情訴求の日本と理性訴求の台湾
  7. 6. 未来の台湾でのWEB広告のクリエイティブ

本テーマの記事を見ることで身につく知識

  • コピー文の違いで日本と台湾のクリエイティブの特徴が理解できる
  • 「感情」と「理性」テーマや訴求角度の違いから日台の広告の違いが理解できる
  • 台湾でクリエイティブ&広告運用する際のポイントと注意点を知る事ができる

1. 日本に近しい台湾も、PRや訴求点の違いがある理由

台湾は日本と距離が近いこと、歴史的にも密接に関わってきたことなどから文化的に類似する点が多い国ですが、会社や商品のプロモーションとなるとその訴求点や切り口の違いがあり、十数年台湾でこの仕事に携わっているとその違いを明確に感じることがあります。

例えば、これは台湾に限らず中華圏全体での傾向になりますが、中華圏の方々はマスメディアの情報を信用しない傾向にあります。

理由としては様々ありますが、大きなものとしては生まれ育った環境的な要因だと考えます。

日本のマスメディアは政治的な理由があるとはいえ、情報は割と素直に扱う国ですが、中華圏は日本に比べるとフェイクニュースも多く、チャンネルによっては政治的理由から主張が真逆の場合もあります。

そんな環境的理由もありニュースを含むマスや生活の中で受けるすべての情報に対して、フェイクなのか真実かを見極める力が日本人より高く、情報をすぐに鵜呑みにしない習慣があります。

この違いから、「響く訴求点」が日本人とは違うことは当たり前に考えられることです。

いくつか実際に存在しているバナー広告のクリエイティブをピックアップして、台湾と日本のバナー広告(視覚デザイン・クリエイティブ)の違いについて考察してみることにします。

最後には台湾でクリエイティブ広告を運用する際のポイントや注意点をまとめてみましたので、ぜひご覧になってください。

2. 「牛乳石鹸」のクリエイティブで比較

日本の「牛乳石鹸」のクリエイティブの場合

コピー:校則で禁止されていない、香水。

同じ商品でここまで違う!日本と台湾の広告クリエイティブの違いを考察
(画像=▲日本の「牛乳石鹸」のクリエイティブ、『訪日ラボ』より引用)

台湾の牛乳石鹸のクリエイティブの場合

コピー:卒業シーズン、終わりなき青春を謳歌。皆さん、卒業おめでとう!(台湾)

同じ商品でここまで違う!日本と台湾の広告クリエイティブの違いを考察
(画像=▲台湾の「牛乳石鹸」のクリエイティブ、『訪日ラボ』より引用)

本商品のTAはティーン層向けで、クリエイティブのデザインテーマは両国同じで学校と黒板をメインビジュアルにしていますが、日本の方のクリエイティブは学生自身を主体として扱い、コピー文は横に小さく目立たない形で配置されています。

コピー文についても、学校の規則の範囲内で使えることを強調することで他商品との強い差別化とブランドイメージ保つことや消費者に与える印象についてのケアを強く感じることができます。

その反面台湾は割とストレートな表現で、商品を主体としたPRの方向性になっています。

重要な点は、「その国の消費者に応じたデザインや訴求軸になっている」という点で素晴らしい事例だと思います。

3. KIRIN淡麗グリーンラベルのクリエイティブで比較

日本のKIRIN淡麗のクリエイティブの場合

コピー:いいオフ、いい自分。(日本)

同じ商品でここまで違う!日本と台湾の広告クリエイティブの違いを考察
(画像=▲日本のKIRIN淡麗のクリエイティブ、『訪日ラボ』より引用)

台湾のKIRIN淡麗のクリエイティブの場合

コピー:(糖質を)減らすことでもっと良くなる(台湾)

同じ商品でここまで違う!日本と台湾の広告クリエイティブの違いを考察
(画像=▲台湾のKIRIN淡麗のクリエイティブ、『訪日ラボ』より引用)

日本と台湾のクリエイティブを見比べてみて、要素の優先度の違いがわかりますでしょうか。

日本では「いいオフ、いい自分」というテーマを自然の背景を含めた全体のシチュエーションでデザインされています。

その反面台湾の場合、タレントを最も目立つレイアウトに配置した上で、商品も目立つサイズで配置がされています。

全体でブランドイメージを作っている日本側のクリエイティブに対して、台湾はタレントと商品の露出の優先度が高く取られています。

もちろん商品の特徴や競合の状態、その商品の認知度など様々な条件によって広告戦略の方向性は変わってきます。

台湾のビール業界の場合「KIRINのグリーンラベルが低糖質ビールで唯一発売されているもの」であること、低糖質ビールが発売開始されたのがまだ2020年であるため1年ほどしか経っていないこと、そのため「低糖質という機能的な部分の発信、タレントによる印象付け」が台湾では必要な段階であること。

などの理由もあるかと思います。また、台湾ではタレントの写真のそばにサインと名前をクリエイティブ上に掲載するのも広告の信頼度を上げるための王道の手法です。

日本のようなイメージ重視の広告とは違い、台湾ではタレントの知名度や印象、商品の機能性などの要素を強く露出する場合が多く、PR色が強くなる傾向があります。

4. 花王SofinaのPrimavistaのクリエイティブで比較

日本の花王SofinaのPrimavistaのクリエイティブの場合

コピー:夕方までベタつかない。つや肌ずっと続く(日本)

同じ商品でここまで違う!日本と台湾の広告クリエイティブの違いを考察
(画像=▲日本の花王SofinaのPrimavistaのクリエイティブ、『訪日ラボ』より引用)

台湾の花王SofinaのPrimavistaのクリエイティブの場合

コピー:かけがえのない自信のある透明肌(台湾)

同じ商品でここまで違う!日本と台湾の広告クリエイティブの違いを考察
(画像=▲台湾の花王SofinaのPrimavistaのクリエイティブ、『訪日ラボ』より引用)

台湾では日本と同じように消費者による美容商品の比較評価サイトがあります。

そしてその評価は消費者の購入傾向に大きな影響を与えています。

そのため、台湾のクリエイティブではその商品の実績(受賞歴など)の掲載のプライオリティが高いです。

特にWEB広告の場合はその傾向が顕著に出ており、売り上げに強く影響を受けます。

(このバナー上には、商品画像の横にその商品の実績(受賞歴など)のこの商品のターゲットにとって馴染みのあるロゴが掲載されています。)

5. 感情訴求の日本と理性訴求の台湾

台湾政治大学の論文<台湾と日本でそれぞれ受賞されたテレビCMの分析>で、両国の広告の訴求ポイントについて日本と台湾で違いが判明しました。

日本は「感情訴求」の表現は多く使い、台湾は「理性訴求」を重要視しているようです。

そしてテーマ別に見ると、日本は心が暖まるテーマ選定が多く、その反面台湾はシリアスな雰囲気のテーマが利用されることが多いようです。

6. 未来の台湾でのWEB広告のクリエイティブ

しかし上記はテレビCM業界での話で、昨今Webのバナー広告ではそうとは限らないようです。

広告施策によりその目的が違うかと思いますが、ブランディングをKPIとしたテレビCMに対して、「売り上げ・受注アップ」を最終KPIとしたEコマース向けのWEB広告の場合は「感情訴求」ではなく「理性訴求」が選ばれることも両国ともに多くあります。

他にはプライス重視で商品価格を全面に打ち出す広告もよく見かけます。

さて、このように日本と台湾とでクリエイティブを比較し台湾での傾向などをお伝えしましたが、結局の所はその商品の「特徴」や「ターゲット」「ブランドの方向性」などにより訴求軸は変わりますし、ブランディングをKPIとしたTVCMの活用なのか、売上アップをKPIとしたEコマースでの利用なのか、新規顧客獲得をKPIとした新規キャンペーンのクリエイティブなのか、その「目的」により手法は様々ですので一概には言えません。

しかし国が違えばコトバひとつで与える印象や、イメージなども日本のそれとは確かな誤差が出ます。

例えば、わかりやすい例として日本のラーメン店などの飲食店の海外進出でよくあるケースが「そのままの商品(味)を、日本と同じやり方で」海外展開され、その結果撤退されるケースも少なくありません。

そのままのやり方で上手く行く可能性もありますが、上記のように大手企業であればあるほど、この「国別のローカライズの重要性」を理解されて行動(効果検証)されています。

※記事提供:媒迪亞維博有限公司 CAKEHASHI(カケハシ) corporation. 総経理(代表取締役社長)秋山光輔

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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