目次

  1. 移植された肝臓は100歳を超える
  2. 臓器の寿命は様々
  3. 臓器の年齢は曖昧。モザイク現象が鍵となる
  4. 臓器はライフスタイルや他の臓器の影響を受ける
93歳の女性の肝臓が少女に移植され”100歳”を迎えた!? 「臓器の寿命は一体何歳なのか」
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

point

  • 93歳の肝臓が移植された19歳は健康に生き続け、肝臓は100歳を迎えた
  • 臓器はその種類によって寿命や受ける影響が異なる
  • 肝臓やすい臓には短命細胞と長寿細胞が混在していると判明。老化メカニズム解明の鍵となる

一部の臓器機能が失われてしまうなら、人は生きていけません。これはつまり、人の寿命が臓器の寿命に大きく影響されていることを示しています。

体全体が若くとも、病気によってある臓器が失われることがあります。これを解決するのは臓器移植です。上記の関係性を意識するため、比較的若い臓器が移植されることを望む人は多いでしょう。

しかし、ある19歳のトルコ人女性は93歳の臓器を移植されました。しかも彼女はその後健康に生き続けたのです。

この結果は「臓器の寿命」について様々な考察をもたらしました。

移植された肝臓は100歳を超える

93歳の女性の肝臓が少女に移植され”100歳”を迎えた!? 「臓器の寿命は一体何歳なのか」
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

肝疾患のある19歳のトルコ人女性は緊急な移植を必要としていました。肝臓不全が脳にダメージを与え始め、やがて彼女の肝臓は完全に機能停止したのです。

医師たちは彼女を救うために移植可能な臓器を探しました。その時唯一見つかったのが、他の病院によって既に拒否されていた肝臓でした。

その肝臓は寄生虫感染によって引き起こされた嚢胞(のうほう:分泌物が袋状に溜まったもの)があっただけでなく、最近亡くなった93歳の女性のものだったのです。

他の選択肢がないため、2008年、トルコのイノー大学肝移植研究所で93歳の肝臓は19歳に移植され、手術は無事成功しました。

その後、トルコ人女性は生き残り、6年後に健康な赤ちゃんを出産。娘の誕生日にこの女性は26歳になり、肝臓も100歳の誕生日を迎えたのです。

臓器の寿命は様々

93歳の女性の肝臓が少女に移植され”100歳”を迎えた!? 「臓器の寿命は一体何歳なのか」
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

トルコ人女性の移植結果は、体内のいくつかの臓器が私たちの年齢よりも長寿であることを示しています。

もちろん、ある臓器は長生きしますが、別の臓器は実年齢よりも速く老化してしまいます。臓器によって消耗のスピードが異なるので寿命もまた違ってくるのです。

例えば一般的には、古い臓器の移植は成功率が低い傾向にあります。しかし臓器の種類によっては差があり、一部の臓器は高齢でも持ちこたえます。

ドナーが40歳を過ぎると、心臓とすい臓の移植成功率は悪化しますが、肺の場合は、ドナーが65歳を超えるまで年齢に関する相違が見られないのです。

さらに角膜は「すべての臓器の中で最も耐性がある」と言われており、ドナーの年齢による影響はほとんどありません。

このように移植への影響という観点でも、臓器には個々の寿命があるように思えます。

臓器の年齢は曖昧。モザイク現象が鍵となる

93歳の女性の肝臓が少女に移植され”100歳”を迎えた!? 「臓器の寿命は一体何歳なのか」
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

しかし、細胞レベルで臓器を検査していくと、臓器の寿命や年齢はもっと曖昧なものだと分かります。

臓器を構成する個々の細胞は定期的に消耗し、交換を必要とします。多くの細胞は時間経過と共に完全に再生しますが、その速度は大きく異なります。

例えば赤血球は約4か月間静脈や動脈を循環しますが、活発な腸の細胞はもっと短命であり数日で入れ替わる必要があるのです。

これらに対し、生まれてから入れ替わりがほとんどない長寿細胞も存在します。脳細胞(ニューロン)がそれであり、基本的にはニューロンと私たちの年齢はほぼ同じです。

このように「ある臓器(肝臓など)は定期的に新しくなり、別の臓器(脳)は古いまま年齢を重ねていく」と考えられてきました。

しかし、米国ソーク生物学研究所のマーティン・ヘッツァー氏らの2019年の研究で、マウスの肝臓やすい臓には、ニューロンと同じくらい古い細胞が含まれていることを発見しました。

93歳の女性の肝臓が少女に移植され”100歳”を迎えた!? 「臓器の寿命は一体何歳なのか」
(画像=すい臓内の細胞年齢。古い細胞は黄色からピンク色であり、若い細胞は青から緑で示される/Credit:Salk Institute、『ナゾロジー』より引用)

健康な成体マウスの肝臓細胞には、マウスの年齢と同じくらい古い細胞が含まれており、「加齢モザイク現象(短命細胞と長寿細胞の混合)」を引き起こしていたのです。

長寿細胞は加齢によって劣化するため、これらが脳以外にも存在しているという事実は、臓器の老化メカニズム解明の手掛かりとなるでしょう。

臓器の寿命の個体差もこれらの要因が関係しているかもしれません。

臓器はライフスタイルや他の臓器の影響を受ける

さて、上記のように「臓器の寿命を延ばす=人の寿命を延ばす」研究は続けられており、新たな事実がいくつも見つかっています。

それらの中には、臓器に与える影響の解明も含まれるでしょう。

93歳の女性の肝臓が少女に移植され”100歳”を迎えた!? 「臓器の寿命は一体何歳なのか」
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

特定の臓器は他の臓器よりもライフスタイルの影響を受けやすいと判明しています。

例えば肺は特に影響を受けやすいとされています。

キングス・カレッジ・ロンドンの老化研究の所長であるリチャード・シオウ氏も「都市部や高汚染環境下で生活する肺は老化が進んでしまう」と述べています。

また彼によると、食べ物、食べ方、睡眠方法なども臓器の寿命に影響を与えてしまうようです。

さらに、臓器は他の臓器の影響も受けると考えられています。

英国リバプール大学の研究によると、「ある器官の血管系の加齢による変化は、別の器官の機能不全に寄与する」とのこと。

器官の相互関係については、シオウ氏も「関節に炎症がある場合、その炎症は脳と心臓にも影響を与えます」と述べています。

ですから臓器の寿命を延ばしたいなら、それぞれの臓器の違いを認めつつも、関連するすべての臓器をケアする必要があるでしょう。

移植され100歳になった肝臓は、臓器寿命の解明に進展をもたらすものとなりました。今後、個々の臓器寿命が更に延びる可能性はあり、人間の長寿化、さらには若返りへと繋がっていくかもしれません。

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功